フォルクスワーゲン・ゴルフ TSI DSG(FF/2ペダル7MT)【海外試乗記】
最新TSI+7段DSG=ベースグレード(!?) 2008.02.08 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフ TSI DSG(FF/2ペダル7MT)フォルクスワーゲン・ゴルフに、最新TSIエンジンと新型7段DSGを組み合わせたモデルが登場。日本発売を前に最新モデルをスペインで試乗した。
1.6リッターFSIに代わるモデル
昨2007年2月に登場して以来、搭載車種を拡大してますます勢いを増しているフォルクスワーゲンの最新パワーユニット「TSI」の最新版は、またも注目の内容を誇っている。
まずエンジンは、排気量1.4リッターの直噴ターボ。ツインチャージャーではない。そしてトランスミッションは、何と7段のギアを持った新しいDSGが組み合わされる。いよいよ発表されたこのパワートレインを載せた「ゴルフ」を、スペインはバルセロナ近郊でじっくりテストしてきたので報告したい。
最高出力170psを発生する1.4リッターツインチャージャーTSIが、従来の2.3リッターV5と、そして140ps仕様のTSIが2.0リッターFSIと、それぞれ置き換えられたように、最高出力122psを発生する新しいTSIは現行の1.6リッターFSI(116ps)に代わる存在と位置づけられている。
1.4リッターのエンジン本体はツインチャージャーTSIとベースを同じくするもの。ただし、大型ターボチャージャーの装着による低回転域のトルクを補う目的で採用されていたスーパーチャージャーは取り外されており、その代わりターボチャージャーは小径のものが用いられている。
違いはそれだけには留まらない。新たにインテークマニホールド一体型の水冷式インタークーラーが採用されたほか、吸気抵抗となるタンブルフラップなしに燃焼室内に有効なタンブル流をつくり出すよう吸気ポートの形状を改め、インジェクターも最新のものを搭載、さらに各部の軽量化を施すなど、広範囲に手が入れられている。
その結果、スペックは最高出力122ps/5000rpm、最大トルク20.4kgm/1500〜4000rpmをマーク。1.6リッターFSIに対して最高出力は6ps、最大トルクは実に4.6kgmも向上しているのだ。
段数の進化だけじゃない
そして注目の7段DSGは、ギア段数はもちろん中身も大幅に進化している。最大の違いは従来の湿式に対して乾式のクラッチを採用していること。これはクラッチ板の冷却にオイルを用いる湿式に対して構造が簡単で、冷却用オイルが要らないため重量も軽く、油圧をつくり出すためのエネルギーも不要になるといったメリットを持つ。一方で許容トルク量は小さくなるため、当面はガソリン仕様ではこの122ps仕様のTSIとのみ組み合わされることになる。
肝心の走りっぷりは、十分期待に応えるものだった。エンジン自体、自然吸気の1.6リッターFSIと較べて低速域のトルクが段違いに太いのに加えて、1速ギアを低めに設定していることから発進は滑らかそのもの。これには、トルクの立ち上がりに唐突さがないこと、そしてDSGの制御がますます精密さを増したことも効いている。「ゴルフGT TSI」あたりでは若干気になっていたギクシャク感は、もはや皆無と言ってもいい。
その後のマナーも完璧だ。市街地を流すような状況では、60km/hを超えたあたりですでに7速に入っているが、変速はいつ行なわれたかわからないほどスムーズ。100km/h巡航時のエンジン回転数は2000rpmをちょっと上回る程度という低さ。それでも右足に軽く力を入れればトルクの余裕でじわりと速度を上げてくれるし、もっと加速したい時には、アクセルを踏み込めば必要なら何段か飛ばしてシフトダウンを行ない、力を引き出してくれる。
日本導入はこの夏
今回の試乗では、バルセロナの街なかから、それなりのペースで流れる彼の地の高速道路、そしてタイトなワインディングロードまでさまざまな舞台で試すことができたが、その走りに不満らしい不満を覚えることは、ついぞなかった。もちろん絶対的な速さはそれなりとはいえ、少なくとも日本の交通環境で乗る分には、140ps仕様のTSIとの差は決定的ではない。そう言い切れる。言うまでもなく、これは柔軟性に富んだTSIのエンジン特性と、7段のギアを得たDSGの相乗効果によるものである。
この新しいTSIとDSGの組み合わせは、当然日本にも導入される。まずは現行の「ゴルフE」に置き換わるかたちで、夏頃には試すことができるようになるだろう。ベースグレードがこれほどのパフォーマンスを得てしまうと、上位グレードの売れ行きに響かないのかと要らぬ心配も頭をもたげてくるが、我々ユーザーにとっては、それはもちろん大歓迎というものだ。
(文=島下泰久/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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