ダイハツ・タントXリミテッド(FF/CVT)/タントカスタムRS(FF/CVT)【試乗記】
実用車のカガミ 2008.01.30 試乗記 ダイハツ・タントXリミテッド(FF/CVT)/タントカスタムRS(FF/CVT)……139万6500円/183万7500円
広さを追求したスクエア軽ワゴンの「タント」が、使いやすさにもこだわって2代目に進化。気になる居住性と、乗り心地を確かめる。
唯一の課題はシートアレンジ
びっくりした。これが100万円台前半で買える軽自動車だなんて。
2007年末に2代目に進化した「ダイハツ・タント」は、驚くほど広い開口部と室内を持つだけでなく、質感や乗り心地などあらゆる性能を高次元で融合させた、実用車のカガミといいたくなる存在だった。
最大のウリが、センターピラーレスの助手席側電動スライドドアにあることはいうまでもない。直角まで開くフロントドアもろとも開けると、間口は1480mmにもなる。通勤電車のドア(平均1300mm)より広いのだ。スライドドアだけでも開口幅は580mmもあるので、真横からスムーズに乗り込める。
車内に入ると、今度は後席の広さに驚く。身長170cmの自分がドライビングポジションをとった後ろで、260mmのシートスライドを最後方にセットすると、足が組めるどころか、前に伸ばすことさえできるのだ。
ただし座り心地はイマイチ。シートを畳むことを重視しすぎたようで、座面の傾きがなく、背もたれは短い。レバーで背もたれを前に倒したあと座面下のストラップでロックを解除し、背もたれ裏のストラップを引いてレッグスペースに格納するという、3段階の操作が必要になる折り畳み操作も気になる。これらの課題を克服したら、1台でリムジンからライトバンまでこなせるスーパー軽になったことだろう。
ムダのない伝達をするCVT
前席も開放的。高めの着座位置に対してインパネは低く、とにかく窓が大きい。明るいベージュ系のコーディネイトも効いている。シートは大きさや形状に不満はなく快適。インパネは見やすく使いやすいだけでなく、質感の高さも印象的だ。たとえばシフトレバーの各ポジションのクリック感は“上質”とさえいえる。広さだけでなく、仕上げでも軽自動車の枠を超越しているのだ。
しかしそのボディウェイトは900kg台前半に達する。エンジンは、タントでは自然吸気直列3気筒のみ。でも「ちゃんと走るの?」という不安は杞憂に終わった。動き出しの瞬間こそおっとりしているし、上り坂ではアクセル全開になるけれど、それ以外は遅いとは感じない。しかもなめらかで静かだ。
これは、FF車の上級グレードに新採用されたCVTが、パワーやトルクをムダなくスムーズに伝えてくれることが大きく影響しているのだろう。今のCVTには、かつて存在した発進停止時のギクシャクもない。比較のためトルコン式4段AT搭載の「X」グレードに乗ると、加速は遜色なかったものの、変速のたびにエンジン回転数が大きく上下に変動することが気になった。
旧型タントの乗り心地は、背の高さを考えれば異例にソフトだった。新型はこのよさを受け継いでいる。フロアの剛性感が他の部分に比べて不足気味であるものの、ピラーの有無やドアの違いによる左右の剛性差などは感じないレベルであった。山道を走ったわけではないので断定はできないが、ハンドリングも左コーナーと右コーナーで異なるという感触は受けない。
ステアリングは切りはじめをもう少しカチッとしてほしいけれど、その後はなめらかな感触。ロールはするものの一気にグラッとは行かず、ペースを上げるとフロントが外にふくらみがちになるが、リアのグリップは安定している。タントのキャラクターにふさわしい走りだった。
予想以上の大ヒットなるか
「タント・カスタム」にも試乗した。クロームメッキを多用したゴージャスな出で立ちは旧型時代から人気だそうだが、僕は媚びすぎない愛らしさを背の高い箱にちりばめた“素”タントのほうが好きだ。
ブラック基調のインテリアは、MOMO製ステアリング、回転計や燃料計を加えたメーターなどでスポーティな雰囲気。広大な窓のおかげでブラックインテリアにありがちな閉鎖感はない。
乗ったのは唯一のターボエンジンを積む「RS」で、3000rpmあたりでおだやかにトルクを立ち上げる。CVTがその領域まで回転を上げてから発進に移るので、ターボラグのないリニアな加速が手に入る。ただ自然吸気エンジンに較べて圧倒的に速いという感じは受けなかった。
フロントサスペンションにスタビライザーを装着し、ホイール/タイヤを14インチから15インチに拡大したカスタムRSの乗り心地はやや硬めだが、ゴツゴツ感はなし。コーナーではノーズの動きが軽快になった。もっともその後、フロントが外にふくらむ気配は先に試乗したタントより強めで、性能に見合った安定感をプラスした感じ。
走りでもカスタムよりは、ノーマルのタントに良い印象を持った。
価格は同等グレードの「ムーヴ」よりは高いが、差は10万円以内。でも広さや使いやすさでは大差をつけ、加速や乗り心地も満足のいくレベルにある。これはひょっとすると、予想以上の大ヒットになるかもしれない。
(文=森口将之/写真=郡大二郎)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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