第345回:久々「ホンダ・フィット」試乗!
オレは無いものねだりなんだろうか……
2007.12.21
小沢コージの勢いまかせ!
第345回:久々「ホンダ・フィット」試乗! オレは無いものねだりなんだろうか……
人気のフィット、俺には薄味…
先日、撮影のために久々「ホンダ・フィット」を借りて乗ってみました! うーん、いいクルマなんだけどなぁ……。
よさは山ほどある。乗ってすぐさま気付くのは車内が圧倒的に広くなった! ってことだ。全長が55mmも長くなってるから当たり前なんだけど、特にリアシートの広さったらヘタなミディアムセダン顔負けだし、それでいて全体のボディ剛性は以前にも増して高く、静粛性まで含めて向上してる。
特に劇的なのは、硬すぎてツラかった乗り心地が格段に改善されてることだ。ホント、前のは世間的には問題にならなかったけど、前のは業界スジ的には大問題だったもんねぇ。それでも圧倒的に売れ続けたわけだけどさ。
しかし微妙なところも多い。たとえば、インテリアなんかは樹脂の質感こそ向上してるようだけど、デザインも含めると個人的には「言うほどカッコいいかなぁ……懲りすぎてない?」って感じ。燃費にしても、乗ったのは1.3リッターエンジンの「L」グレードなんだけど、満タン計測方法で測ってみると、首都高をぶっ飛ばしたとはいえ12、13km/リッターと特別良くもないけど悪くもない。もっとゆっくり走れば劇的に向上するんだろうけど。
カッコにしても初代のデザインを活かしつつ、ほどよく前のめりにスポーティになってるのはわかるけど、ややガキっぽいような。個人的には初代のが好きだなぁ。ま、これは好きずきだし、新型の方がアグレッシブで一般的にはウケるんでしょうけど、でもねぇ……。
簡単にいうと味がないのよね。具体的にはステアリングインフォメーションがなさすぎ。もちろん切ったとおりに曲がるし、正確なんだけど、手ごたえがほとんどない。初代に比べて軽く、ラクという言い方もあるけど……。
もちろんフィットはFF車なんで、FRやミドシップほど手応えを出しづらいわけだけど、それにしても味が薄いような気がする。
特にライバルである「デミオ」があれだけスポーティで、同じホンダの「ステップワゴン」や「オデッセイ」がFFベースであれだけキモチいいステアリングフィールを実現してるだけに余計ツライ。実はフィットの後、ホンダさんに借りて「ストリーム」にも乗ったんだけど、こちらの方が確実によい。ま、値段も全然違うんだけどさ。
未完成な部分がおもしろかったのに……
正直、理由はよくわからない。俺の場合、どこにお金をかければハンドリングやフィーリングがよくなるかなんてのは、正確に言い当てられない。ただ、一つ言えるのは「ホンダも変わったなぁ」ってことだ。
フィットはハッキリいってすべてにスキがない商品だ。スタイリング、パッケージング、燃費性能、安全性能、実用性、コストパフォーマンス、すべてに亘って欠点らしい欠点がない。だからこそ前代未聞の売れ方をしてるわけだし、この日本の新車不況の時代に発売2週間で約2万台もの受注が入るんだとは思うけど、やはりそのぶんなにか捨てちゃってるものがある気がする。あえていえば遊び心だ。
昔のホンダ車はある意味、未完成な部分な部分が多く、それだけに面白かった。たとえば俺が最初に買ったクルマである、「シビック」3代目のワンダーシビック25i。今でも憶えてるけど、低速でアクセルをベタ踏みすると、むちゃくちゃハンドルが取られた。まさしく絵に描いたようなトルクステアが出たんだけど、ハッキリいって、“だから”楽しかったのだ。
そのほか初代「シティ」はノンパワステだったから、あんなにボディは軽く小さいのに、ステアリングがめちゃくちゃ重かった。でもすごく運転してる気になった。
自分でもなにを言ってるのかと思う。フィットはすごくいいクルマで、安くて便利で使い勝手がよくって、買ったヒトが幸せになれるんだとは思う。おそらく俺はないものねだりをしてるんでしょう。
でもね。とにかく自分にはほとんど響かないクルマなんですよ。実際。
これだったら間違いなくデミオ買っちゃいますね。間違いなく。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
NEW
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。 -
ロータス・エメヤR(後編)
2025.9.4あの多田哲哉の自動車放談長年にわたりトヨタで車両開発に取り組んできた多田哲哉さんをして「あまりにも衝撃的な一台」といわしめる「ロータス・エメヤR」。その存在意義について、ベテランエンジニアが熱く語る。