MINIクーパーSクラブマン(FF/6MT)【海外試乗記】
デフォルメMINI 2007.11.22 試乗記 MINIクーパーSクラブマン(FF/6MT)2007年9月のフランクフルトショーで発表された「MINI」のストレッチバージョン「MINIクラブマン」。右側に観音開きのドアを備える新型にスペインで試乗した。
ボディの理由
「MINI」は確かにカワイイけれど、もうちょい荷物が積めたらナ――そんな要求から生まれたステーションワゴン型のMINIが、ここに紹介の「クラブマン」なるニューモデル……というわけでは実はナイ。その証拠にこのクルマ、後席使用時のラゲッジスペース容量はわずかに260リッター。すなわち、「クラブマン」パッケージングは、決して“積めるワゴン”を狙ったものなどではないということだ。
それでは、ハッチバックモデルに対しホイールベースで80mm、全長では160mmストレッチされたボディは何を目指したものなのか、といえば、ひとつには「総勢4名が、これまでになくゆったりとした居住空間」であり、そしてもうひとつは「『MINI』というブランドによりふさわしい、ユニークなスタイリングの演出」と評してよさそうだ。
前出のホイールベース延長分は、実はそっくりそのまま後席足元空間の拡大に充てられている。すなわち、後席居住性はこれまでのハッチバックモデルと較べて大きく向上。“クラシックMINI”の時代を含め、まずは史上初めて「大人4人がくつろげる室内」を実現させたのがこのモデルでもある。
相変わらず……
そして、そんなストレッチボディに対し、いかにもMINIらしい装備として加えられたのが観音開き式のドア。「クラブドア」と呼ばれる右側面と、「スプリットドア」と名付けられたテールエンドの2か所の観音開きドアは、世界広しといえどもまさに唯一無二の存在。前者は後席への乗降性を助け、後者は小さな荷物を出し入れする際の利便性を高め……という大義名分は語れるものの、実際には個性の強さこそが売り物であるMINIというブランドにふさわしい話題性を提供するユニークなアイテムとしての効果のほうが大きそうだ。
こうして、「積むためのスペースはあまり広がらなかったものの、乗るための空間はグンと広がった」MINIクラブマンの走りは、相変わらず“ゴーカートフィーリング”を自ら提唱するとおり。ボディのストレッチと2か所の観音開き式ドアの採用で重量が75kgほど増加しても、引き続き俊敏で活発な走りのテイストを追求している。
スペインはマドリッドを舞台に開催された国際試乗会の場に用意されたテスト車が、すべてターボ付きエンジンを搭載した「クーパーS」グレードの、しかもMT仕様に限定されていたことからもそれは明らかだ。
残念な右ハンドル
実際のところ、前述の重量増にもかかわらず加速は十二分にパワフル。トラクション能力に優れる一方で低いギアでのフル加速時にはトルクステアを感じさせられたのは、テスト車両にオプションのLSDが組み込まれていた影響もあるかもしれない。
注目のハンドリング感覚で正直なところわずかながらもシャープさが減じた印象を受けたのは、ピッチングモーションが確実に小さくなったこととバーターの“ホイールベース延長効果”が大きそう。ただしそうは言っても、いまだハンドリングのダイレクト感は十分高く、「MINIならではの俊敏さ」をしっかりキープする。加えれば、かくもピッチング方向の動きが小さくなったとはいえ、相変わらずランフラットタイヤを履くこともあり乗り心地はまだまだ硬質だ。
……と、そんなこんなで従来からのハッチバックモデルをちょっとばかり“延長デフォルメ”したようなルックスのMINIクラブマン――右ハンドル仕様になっても「クラブドアは右側のまま」というのがちょっと惜しいけれど――きっとまたまた世界で人気者となりそうだ。
(文=河村康彦/写真=BMWジャパン)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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