第16回:イタ車ファンなら一家に一基!? ジウジアーロの家庭用「エレベーター」は250万円ナリ!
2007.11.10 マッキナ あらモーダ!第16回:イタ車ファンなら一家に一基!? ジウジアーロの家庭用「エレベーター」は250万円ナリ!
巨匠、こんなこともやってます
巨匠ジョルジェット・ジウジアーロといえば、イタリアを代表するカースタイリストのひとりである。彼が会長を務めるイタルデザイン-ジウジアーロは1968年の創立以来200車種以上のデザインに関与し、台数にすると4千万台が世界の道を走っているという。
代表作に初代「フィアット・パンダ」、最新作に「アルファ・ブレラ」などがあるのは、『webCG』読者には説明する必要はなかろう。
そのジウジアーロによる「エレベーター」が、イタリアで販売されている。名前は「ドムスリフト・ジウジアーロ・デザイン」だ。昨年発表された。デザインを担当したのはイタルデザインの関連会社で、建築部門を担当するジウジアーロ・アルキテットゥーラ社である。実際に製造しているのは、ミラノを本拠とするエレベーターメーカーIGV社だ。
外観は1970〜80年代のイタルショーカーに通じるシンプルな佇まいである。インテリアでは、モダーンなタッチ式操作パネルの下に「GIUGIARO DESIGN」のサインが走る。いっぽうクールなエクステリアとは対照的に、天井にはカラーイルミネーションという“遊び”が施されている。
拡大
|
家庭用電源でOK
個人的に「アウディ80」「フィアット・ウーノ」「ランチア・デルタ」と、イタル作品を3台も乗り継いだジウジアーロファンである。これは聞き捨てならぬ話と、さっそく知り合いでエレベーター販売・管理会社を経営しているマリオ社長のところに赴いた。
ところがマリオ社長いわく、いきなり「『ドムスリフト・ジウジアーロ』はエレベーターではないッ!」と言うではないか。といっても、「こんなもの、エレベーターなんて呼んじゃあいけねえヨ」と怒っているわけではなかった。
イタリアの法律上、アッシェンソーレ(エレベーター)ではなく、ピアッタフォルマ(プラットフォーム)というカテゴリーに分類されるものという意味だった。
「ピアッタフォルマは法律上、家庭用を前提としているものなんだよ」
そして、こう教えてくれた。
「使う人は安全上、乗っている間ボタンを押し続けていなければ動かない仕組みになっているんだ」
使用者に絶えず注意させることによって、事故を少なくする狙いだ。
マリオ社長は続ける。
「いっぽうで、建築許可申請のときに提出する書類が大幅に少ないんだよ」。
どんな許可がおりるにもスローなお役所仕事大国イタリアで、これは大きなメリットだ。
さらに驚いたことに、家庭用電源(イタリアの場合230V)でOKという。日本では乾電池で速度記録車を走らせるテレビCMがあるが、それに匹敵する驚きだ。
土台工事さえきちんとすれば、設置が数日で済むのも普通のエレベーターと違う大きな長所である。
|
木製エレベーターの時代から
ちなみにイタリアの建物と小型エレベーターのご縁は深い。
イタリア歴史都市の中心部において、一軒家は稀であり、多くがアパルタメントと呼ばれる集合住宅である。そうした建築物は、何百年も前に建築されたものが多い。
共用部分に設置された階段は、吹き抜け部分が狭い。そのため、既存のエレベーターを設置しようとしても、入らない場合が多い。そこで、ときにはオーダーメイドに近い作業で、かご(ゴンドラ)を作って設置する。
こうした工事が盛んに行なわれたのは、ミラーコロ(奇跡)と呼ばれた戦後経済成長期らしい。そのため、今でも古い木製扉や内装のかごにでくわすことがよくある。
いっぽうマリオ社長によれば、近年は郊外の一戸建て住宅で、今回のお題であるピアッタフォルマを据え付ける家庭が少しずつ増えているという。背景には、ヨーロッパ一進んでいる高齢化がある。お年寄りの階段の上り下りを少しでも楽に、というわけだ。
「アルファ147」にしますか、それとも……
さて、「ドムスリフト・ジウジアーロ」の気になるお値段は?
古今東西この手の商品は、設置場所のコンディション等によって見積もりが大きく変動するので、価格が明記されていないのが常だ。
マリオ社長の会社は、「ジウジアーロ」自体はまだ納入したことはなかったが、IGV社の代理店であるため、同様のピアッタフォルマを据え付けた経験は多数あった。
社長と一緒に仕事をしているロザンナ夫人は、「搬入・設置工事込みで約1万5000〜1万6000ユーロ」と教えてくれた。円にして250〜265万円といったところである。「アルファ147」のベースモデル1.6TSの日本における価格と似たようなもんだ。けっして不当に高くはないと思う。
自宅に設置すれば、クルマ好きに結構自慢できる。そして客や女房を乗せ、用がなくても「上にまいりまぁす」「お足元お気をつけくださいませ」などと1日中エレベーターごっこも可能だ。
まあボクの場合、今月滞納している2DKアパートの家賃を、ちゃんと払うのが先であるが。ご利用は計画的に。
(文=大矢アキオAkio Lorenzo OYA/写真=大矢アキオ/IGV spa)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く 2026.3.5 2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。
-
第950回:小林彰太郎氏の霊言アゲイン あの世から業界を憂う 2026.2.25 かつて『SUPER CG』の編集者だった大矢アキオが、『CAR GRAPHIC』初代編集長である小林彰太郎との交霊に挑戦! 日本の自動車ジャーナリズムの草分けでもある天国の上司に、昨今の日本の、世界の自動車業界事情を報告する。
-
第949回:「戦場のスパゲッティ」は実在するのか? イタリア陸軍ショップで聞いた 2026.2.19 世界屈指の美食の国、イタリア。かの国の陸軍は、戦場でもスパゲッティを食べるのか? 30℃でも溶けにくいチョコレートに、イタリア伝統のコース構成にのっとったレーション(戦闘糧食)などなど、エゼルチト(イタリア陸軍)のミリメシ事情に大矢アキオが迫る。
-
第948回:変わる時代と変わらぬ風情 「レトロモビル2026」探訪記 2026.2.12 フランス・パリで開催されるヒストリックカーの祭典「レトロモビル」。客層も会場も、出展内容も変わりつつあるこのイベントで、それでも変わらぬ風情とはなにか? 長年にわたりレトロモビルに通い続ける、イタリア在住の大矢アキオがリポートする。
-
第947回:秒殺で当確? 新型「ルノー・クリオ」が販売店にやってきた! 2026.2.5 欧州で圧巻の人気を誇る「ルノー・クリオ(日本名:ルーテシア)」がついにフルモデルチェンジ! 待望の新型は市場でどう受け止められているのか? イタリア在住の大矢アキオが、地元のディーラーにやってきた一台をつぶさにチェック。その印象を語った。
-
NEW
実力検証! SUV向けプレミアムタイヤ「ブリヂストンALENZA LX200」を試す
2026.3.62026 Spring webCGタイヤセレクション<AD>目指したのは、人気車種となっているSUVとのベストマッチ。ブリヂストンが開発した新プレミアムタイヤ「ALENZA(アレンザ)LX200」は、どんな乗り味をもたらすのか? モータージャーナリスト石井昌道が試乗を通して確かめた。 -
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。