第337回:「三菱ギャラン・フォルティス」試乗
もしやコレは“涙の10年目の結婚指輪”かも?
2007.10.12
小沢コージの勢いまかせ!
第337回:「三菱ギャラン・フォルティス」試乗もしやコレは“涙の10年目の結婚指輪”かも?
セダンなんか作ってる場合なの?
つくづくこのクルマには深ーい愛を感じましたね。それも“作り手”の深ーい愛というより、“根強い三菱ファン”の深ーい愛を。ハッキリ言って泣けます……。
というわけでこの「ギャラン・フォルティス」。乗る前はいったいどういうクルマかなぁと思っていたわけですよ。
マニア的には「ランエボX」のベース車ってことで、正直、焦点からはちとズレてるクルマでしょ。さらに三菱自動車の益子社長が発表会で言ってた「これからはセダンの復権!」ってセリフも個人的にはあまり響かない。キモチはわかるけど、今後の日本はますますもって“軽自動車とミニバンの国”ですよ、ハッキリ言って。日本の道路行政、交通事情が根本的に改善されない限り変わりようがない。
だから、今後の復活を期する三菱自動車さんが出す新車としてコレはどーなのよ! とも思ってたわけです。
軽の「i」や「eKワゴン」、コンパクトカーの「コルト」やミニバンの「グランディス」を出してきて、次はセダンの順番なのかもしれないけど、いまどきあまり売れないだろうジャンルのクルマをそんなに真剣になって出す必要があるんだろうかと。もっとほかに注力すべきことがあるんじゃないか、と思ったわけです。ぶっちゃけ、セダンに力使ってるヨユーなんかないじゃん! とね。
31万人の愛を受けて
……と思ったら全然違ってたんだなぁ。不肖・小沢コージ、勉強不足でした! もーしわけありませんでした!!
これは今のセダン不況の時代に無理くり出したクルマなんかじゃない。これは三菱自動車による、しぶとい……じゃなかった根強い三菱ファンに贈る、愛の結婚指輪。それも最初の結婚じゃなくって長年アイソを尽かさずついてきてくれた糟糠の妻に贈る“10年目の結婚指輪”みたいなものだったんですよ。いや、カンドーです!
というのも試乗会で聞いてわかったんだけど、現在日本にいる潜在三菱セダンユーザー数って“31万人”(!)もいるんだって。正確にいえば、今登録されてる三菱セダンはランサーが12万台、ギャランが10万台、懐かしのディアマンテが9万台! も残っている。この計31万台が今も車検を切らさず、ナンバーが付けられ、税金が支払われているわけです。ほとんど車庫に眠っているのかもしれないけど、ともかく生きている。
つまり、最低31万人ぐらいは古き三菱セダンを今も愛し続けているわけ。2002年に生産中止しちゃったギャランでも最低5年は経ってるわけだし、中にはもっと古い三菱セダンに乗っている人もいるし、まさになにがあってもアイソを尽かさずついてきてくれた人なわけですよ。
そういう人は、酷で一方的なマスコミの報道にもめげず、ほかにはない三菱セダンならではの力強いデザイン、強固なボディ剛性、しっかりしたステアリングフィールを愛し続けていたんでしょう。実際、今回のギャラン・フォルティスは見事そんなテイストになっていて、昔となんら変わってないのです。お客さんを裏切ってないのです。
感謝を込めて贈ったクルマ
たまたまミニバンのデリカD:5とプラットフォームを共用した恩恵でもあるんだけど、とても普通の2リッターセダンとは思えないボディ剛性とステアリング剛性を持ち、デザインも見事に三菱らしさを保ったまま進化。パッケージングも実直で、リアシートも居心地良く、特にファンでもない俺からみても、実に三菱っぽいなぁ〜ってデキになってます。
で、ソレもコレも三菱は新規開拓っていうより、今まで三菱セダンを愛好してくれた人に贈る、昔と変わらない三菱らしいセダンとして作ったからそうなったんだよね。ヘンに奇をてらってない素朴なデキで、見事、贈り手のキモチと、受け手のキモチがシンクロしてます。
そう考えると海外ではランサーで売ってても、国内ではギャランと名をつけた気持ちもわかるし、ようするに久々にマジメに作った完成度の高い三菱セダンだから、ギャランはもちろん、ディアマンテを乗り続けてくれた人にも買ってほしかったのよね。だから格下のランサーではなく、ギャランの名前を付けたわけで、実際それくらい力を入れてクルマを作ったのだと。
たぶん開発陣はできれば3リッターV6なども積みたかっただろうし、超本格本革仕様も作りたかったはず(コンビレザー仕様はあるみたいだけど)。でもそんな余裕はなくて、とにかく一生懸命、できる範囲でがんばって作ったものだからエンジンは2リッター直4一本! ホントは10カラットぐらい贈りたかったけど、5カラットダイヤで勘弁して! と、そういうデキになっているわけです。
つくづくクルマって人と人が作り、贈って受け止めるもんなんだよね。久々に実感しました。がんばるしかありませんね、三菱さん!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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