ミツオカ・オロチ(MR/5AT)【試乗記】
花より団子 2007.07.05 試乗記 ミツオカ・オロチ(MR/5AT)……1100.0万円
6年近い胎動期間を経て、ついにオロチが公道に躍り出た。「ふつうに乗れるスーパーカー」とは、いったいどんなクルマなのか? 『webCG』のコンドーと関が試乗した。
全力投球してる
コンドー(以下「コ」):う〜ん……(しばし黙りこむ)。こら、どこから見ても“スーパーカー”や。
関(以下「せ」):公道に居ちゃいけないオーラが出ています。
コ:跳ね馬も猛牛も震えるわ。間違いない。それに、実際見るとデカいなぁ。
せ:幅が2m越えてますから。お手本にしたという「フェラーリ512TR」が4480×1976×1135mm。スリーサイズは全部上まわってるんです。ホイールベースも50mm長い。
コ:へぇ、そうなんや。テスタロッサよりデカいんや。45mmも高いんや!
せ:ヘンなところに感心しますね。デビューしたのは、2001年の東京モーターショー。市販化に向けて徐々にデザインがモディファイされたけど、6年たってもインパクトが薄れないなんて、大したモンです。
コ:好き嫌いはあるやろけど、デザイナーが全力投球した気合は感じる。とにかくディテールには、こだわってんで。ランプまわりやサイドのキャラクターライン、ボンネットのエアスクープと。あっさりしたとこが全然ない。
せ:実際、それらに穴は空いてないんです。意匠は凝るけど、機能面はそれほどには凝ってない。
コ:FRPだからと違うん? こんだけ穴だらけになったら、ベコベコになってまうやん。
せ:ホントの理由は雨対策。クルマを作るにあたって、水の処理は想像以上に苦労したようです。
コ:このヘッドランプもカッコ優先したんやろけど、「蛇やから目は大事やろ」ってのはサスガ。手ぬいてない。
せ:瞳は、ガラスの内側から手作業でペイントしてるそうですよ。車検に通るとはいえ、白壁にライト当てると、影が見られるそうで。
コ:ちゃんと大蛇に見える。あとは舌がチロチロってしてたらカンペキや!
ムードは大事
コ:内装も、暑苦しいなぁ! せやけど、それがまた似合ってる。
せ:蛇の腹の中にいるようで、不思議と落ち着く赤内装。このクルマ、フツーのひとでも赤を選ぶんじゃないですか。
コ:「選ぶ」って、選べんの?
せ:内装のレザーは、25色のなかから選べます。本革シートはオプションで、ノーマルだと合皮。パーツごとに細かい指定ができるそうですよ。
コ:天井まで革張りやんか。ここまでくると、樹脂のボタン類にも革張っといてほしい。
せ:クリスタル製のスイッチなんてどうですか。オロチはガラス材が似合う稀有なクルマだと思うんですけど。
コ:内装は、色や素材はええのに、カタチがあまりにフツーやなぁ。
せ:既存のクルマのパーツを流用しているから……トヨタ系が一番目につきますが、シートは広島のメーカーによる専用品だそうです。
コ:平凡すぎて淋しくなるステアリングホイールとシフトノブだけは、すぐ変更したい。「蛇革8本スネークステアリング」と「破邪クリスタルシフトノブ」。そんなんにして!
せ:ステアリング含め、各種オプションの設定も考えられているそうですよ。シート裏の荷物置きスペースに付けるバッグとか。
コ:その、荷室はどうなん? 広いの? あんまり期待はしてへんけど。
せ:フロントは大型ラジエターがあるだけで、荷物用のスペースなし。リアのエンジンより後ろに若干のスペースがあります。縦30の横90cm、深さは25cmか……これじゃ、お正月の新巻鮭もギリギリですよ。
コ:オロチの故郷は富山やから、ブリちゃうか? 氷見のブリ、旨いねん。入らへんかったらハマチにしといて。
せ:エンジンの熱がこもるから、生モノ入れちゃダメだそうです。
コ:じゃぁ、そろそろ走ってみよか!
そこかしこに「スーパーカー」
コ:まず、乗り込みが一仕事。スーパーカー風味がきいてる。
せ:サイドシルの幅、35cmもありますから。革張りだから汚したくないな……。
コ:乗ってしまえば、フツーのクルマ。とはいえ、低い目線は“気分”やね。
せ:ただし、そこからシートハイトは変えられず。ステアリングホイールはチルト(上下)のみで、テレスコピック(前後)はナシ。ポジションの自由度は低いです。
コ:一番上にしてもまだ低過ぎやで。もうちょい上げて欲しいわ。
せ:自分(163cm)だと、ステアリングがスピードメーターと重なってしまいます。上のほう、80〜140km/hは見えません。
コ:左ひざが固いとこに当たるのも気になるな。インパネ全体が低すぎるんや。
せ:世界一寝ているというフロントウィンドウが、すべてを圧迫しますね。
コ:左右は見切り悪過ぎる。Aピラー太いしサイドミラーが窓についてるから、何も見えへん。「ふつうに乗れる」までには、ちょっと慣れが必要。
せ:後方視界も厳しいですね。リアウィンドウの天地は7cmほど。もっとも、バックモニター標準装備ですが。
コ:肝心の乗り心地は、意外にソフトやね。想像どおりというか、予想以上というか。
せ:「スペースフレーム」と謳われるボディの剛性感の高さは印象的です。取り付けられるサスは、前後ともダブルウィッシュボーン。ダンパーは6本もある!
コ:リアが左右2本ずつか。ひとむかし前のスーパーカーみたいやん。何かしらんけどうれしい。
せ:でも、当初は加速するたびにスクワットしちゃって大変だったそうです。元マツダのテストドライバーを招いて見直しを始めたのが、2005年の暮れ。溶接でボディ剛性をあげる一方、硬すぎたリアサスに仕事をさせるようにしたら直ったと。
コ:コーナーでのロールは微小。ええ感じに安定してる。ダルなステアリングフィールは故意や言うてはったな。ただ、ブレーキの甘さだけは気になる。★2つ。
スーパーな「クルーザー」
せ:パフォーマンスは、必要十分程度でしかない。輸出用のトヨタ・クルーガー(ハイランダー)に詰まれる3.3リッターV6が心臓ですから。
コ:あえてパワーは求めへんけど、もっとキャラクターは欲しいね。
せ:NSXのエンジンを望んだそうですが、時期的に適わず。このクルーガー用も実は打ち切りで、オロチの販売台数が制限される(400台)理由のひとつとか。他にツテがあれば、継続生産もありえるそうです。
コ:次は、ちょっと勇ましい感じの日産VQエンジンがいいんと違うか? ハイブリッドでキャラもたせるのも手かな。燃費いいし、速いし!
せ:スバルの水平対向6気筒に独自の排気系でドロドロ……がイメージ。ディーゼルのトルキーな心臓も、街なか向きですよ。
コ:いずれにしても、スーパースポーツ級のパフォーマンスは望まれへんし、望まへんわけや。
せ:それこそ、際限のない“開発の底なし沼”にハマっちゃう。あえて低い次元でバランスさせたのは正解でしょう。
コ:「スーパーカーは、スポーツカーのスゴイやつとは限らへんねんで!」ってオロチに教えられたみたいや。
せ:使いきれないパワーより、いつも眼で楽しめるデザイン。実際の道路じゃ、それが「花より団子」ってことですよ。欲を言えば、「跳ね上げドア」と「6本出しマフラー」もあわせて検討して欲しいものです。
コ:そのときは、グリルからチロチロって舌出すのんも忘れんといてね。
(文=webCG近藤俊&関顕也/写真=峰昌宏)

近藤 俊

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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