プジョー207Cielo レザー(FF/4AT)【ブリーフテスト】
プジョー207Cielo レザー(FF/4AT) 2007.06.21 試乗記 ……279.0万円総合評価……★★★★
日本では1999年に登場し、一躍プジョーの知名度を高めた「206」。その後継となる「207」のベーシックモデルに試乗。自慢の猫足はどんな走りをみせるのか。
“猫”は進化する
プジョーに限らず、洋物のハッチバックというと、ついスポーティなモデルばかりに目がいってしまうし、私自身も嫌いじゃない。でも、もし実際に付き合うとしたら、ちょっと控えめなモデルのほうがバランスがいいぶん、オススメだったりする。
「プジョー207」でいえば、“素”の「207」や「207Cielo」がこれにあたる。乗ってみると、エンジンパワーに不満はないし、乗り心地はスポーツグレードの「207GT」以上、ハンドリングもなかなか機敏と、その仕上がりのよさは期待を上まわる。そのうえ、207や207Cieloでもボディカラーは豊富に揃っているし、安全面や主要装備も上級グレードに引けを取らないだけに、ベーシックグレードでも積極的に選べるというものだ。そんな207の“控えめモデル”に、ぜひ注目してほしい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2007年3月20日にデビューした「207」は、世界的な大ヒットを記録した「206」の後継車。5ドアのベーシック版「207」(239.0万円)と上級「207Cielo」(264.0万円)、そして3ドアの5MTスポーティバージョン「207GT」(264.0万円)の3本立て。
パワーユニットは、1.6リッターガソリンエンジンが2種類。「207」と「207Cielo」は、120psと16.3kgmを発生するNAユニットを搭載。4段ATを組み合わせる。一方、5MTのみのスポーティバージョンである「207GT」にはターボチャージャーを与え、150ps、24.5kgmとアウトプットを上げた。
2007年6月18日には、高性能なスポーティモデル「207GTi」とオープンモデルの「207CC」が追加発売された。
(グレード概要)
ベーシック版の上級モデル「207Cielo」は、「207」にくらべ、固定式ディレクショナル・ヘッドランプやバックソナー、パフューム・ディフューザー、ドアステップガード、アルミペダルなどが標準装備される。さらにテスト車は、受注生産のレザーシート仕様となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
「206」から「207」に進化するにあたり、フロントマスクが“猫顔”になって新しさをアピールしているが、それに負けないくらい変貌を遂げたのがインテリアだ。ダッシュボードは、シンプルなフォルムに好感が持てるうえに、質感の向上が著しく、またアクセントとなるカーボン調のパネルも見栄えがよくて、ただただ驚くばかりだった。
さらに「207Cielo」には「パノラミックガラスルーフ」が標準装着されていて、これがもたらす明るいキャビンと開放感がこのクルマの魅力を後押しする。
メーターは、回転計、速度計、そして燃料&水温計が独立したシンプルなデザイン。オンボードコンピューターの情報は、こことは別のダッシュボード中央部のディスプレイに表示される。その下には5人分のシートベルト警告灯があるので、乗員の安全確認に便利だ。
(前席)……★★★★
通常の207Cieloでは、センターがファブリック、サイドがレザーのハーフレザーシートが標準だが、受注生産でフルレザーシートを選ぶこともできる。試乗車はこのタイプで、シートのほか、ドアトリムの一部にもレザーが施されていて、ちょっとリッチな気分が味わえる。
シートは座り心地がやや硬め。サイドサポートは小さくないが窮屈さはなく、乗り降りにも困らなかった。うれしいのは、フルレザーシート付きのモデルはもちろん、素の207でも革巻ステアリングが標準になること。ステアリングコラムに付くチルトとテレスコピック調節が、最適なシートポジションを得るのに一役買っている。
(後席)……★★★
コンパクトとはいうものの、4030mmもの全長を持つ207だけに、後席のレッグスペースには十分な余裕がある。しかも座面の高さが適度で、自然に膝が曲がる姿勢が取れるので、長時間座らされても辛くない。アイポイントが高いため、前方の眺めは良好。さらにパノラミックガラスルーフにより上方の視界が開けるのがいい。身長168cmの私ならヘッドルームにも余裕がある。
シートの座り心地はやや硬め。しかし、しなやかな足が自慢の207だけに、乗り心地は後席でも快適である。
(荷室)……★★★
206に比べて全長が195mmも延びたわりに、さほど大きくならなかったのがトランクスペースだ。それでも後席を使っている状態で70cm弱の奥行が確保されるからベビーカーならラクに入る。また、いざというときにはダブルフォールド式の後席を畳むことで、ほぼフラットなフロアが現れるなど、使い勝手は悪くない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
207Cieloの1.6リッターユニットはBMWと共同で開発したもので、「MINIクーパー」と同じ自然吸気エンジンが搭載される。吸気側に採用する連続可変バルブタイミング&リフト機構がいわゆる“バルブトロニック”であることはいうまでもない。
最高出力120ps、最大トルク16.3kgmを誇るこのエンジン、アクセルペダルを心持ち多めに踏むようにすると、発進から十分な力強さを示す。3000rpm以下の常用域ではレスポンス良好。組み合わされる4ATは、瞬く間にトップギアに入るタイプではなく、日本車や最近のドイツ車に慣れた身にはシフトアップがもどかしく思えることもあるが、逆に街なかでちょっと加速したい場面などではシフトダウンしなくてすむぶん、ギクシャクした動きに悩まされない。
エンジンのトルクは4000rpmを超えたあたりでピークに達し、そこからは徐々に勢いを落としていく印象。レッドゾーンは6500rpmからだが、マニュアルモードを選んで引っ張ってみても6000rpm手前で自動的にシフトアップしてしまう。
山道の登りではもう少し高回転まで伸びて、もうひとまわり余裕があればいいなぁ思ったけれど、ふだん使うには申し分ない実力の持ち主であることはたしかだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ダンパーの内製にこだわるほど、足まわりには気を遣うプジョーは、この207でも自慢の“猫足”を披露してくれた。ひどく荒れた路面でこそ不快な上下動をキャビンに伝えてくるが、それを除けばしなやかに動くサスペンションがキャビンをフラットに保ち、前席、後席を問わず、快適な移動を約束する。スピードが上がるとさらに安定感が増し、高速の目地段差を軽くやり過ごす余裕も見せた。
ワインディングロードでは、コーナリング時のロールは決して小さくはない。けれどもロールスピードが適切に保たれるとともに、軽快にノーズが向きを変えていく気持ちよさが、スポーツモデルに劣らぬ楽しさを与えてくれる。快適な乗り心地と俊敏なハンドリングを両立することは容易ではないが、この207Cieloは見事にそれをやってのけたのだ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年5月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:2998km
タイヤ:(前)195/55R16(後)同じ(いずれも、コンチネンタル Contact2)
オプション装備:--
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:448.1km
使用燃料:43.37リッター
参考燃費:10.33km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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