シボレー・クルーズX(4WD/4AT)& LT(FF/4AT)【試乗記】
『力強い援軍』 2001.11.07 試乗記 シボレー・クルーズX(4WD/4AT)& LT(FF/4AT) ……149.8/165.3万円 第35回東京モーターショーで、お披露目されたGMとスズキの共同開発モデル、シボレー・クルーズ。1.5リッターモデルは「GMオートワールド」ネットワークで、1.3リッター車はスズキ「アリーナ」店にて、いずれも“シボレー”ブランドで販売される。山梨県は河口湖で開催されたプレス向け試乗会に、webCG記者が赴いた。■GMの伝統を活かしたニューモデル
2001年10月24日、第35回東京モーターショープレスデイの記者会見で、GMアジアパシフィックジャパンの佐藤満会長は、シボレーの大阪でのノックダウン生産が1927年に始まったことにふれ、日本とシボレーの関係が長いことに言及した。GMとスズキによって初めて本格的に共同開発された「シボレー・クルーズ」は、可能な限り“フォード流”を守るブルーオーバルと比して、できるだけ現地の風習、好みに合わせようというゼネラルモーターズの伝統を活かしたクルマといえる。
英語の「cruise」から名を取ったクルーズ(cruze)は、1999年、世の中が自動車メーカーの合従連衡に沸くなか、GMとスズキ初の共同開発開発車としてブチ上げられたプロジェクト名「YGM-1」の具現化モデルだ。ベースとなったのは、スズキの1.5リッターモデル「スイフト」。プラットフォームとドライブトレインはスズキ、デザインと足まわりのセッティングはGMが担当した。ボディパネルで共通なのは、ドアとルーフ、フロントガラスだという。一方、意匠が変わったヘッドライトと、ボウタイマーク輝く“シェビー”流の太いクロスバーが横切るグリルで「シボレー」をアピール。サイドはドアのキャラクターラインを前後で上手に処理、ふくらんだフェンダーでタフさを演出した。仕上げは、リアの丸ランプ。もちろん、コーベットからの引用である。
■1.3と1.5リッターの印象
まず乗ったのは、スズキで売られる1.3リッター“シボレー”クルーズ「X」(4WD)。CHEVROLETのロゴとボウタイマークが入ったバックレストをもつ「大型専用フロントシート」が立派だ。視点が高い。やはり蝶ネクタイをかたどったマークの入ったステアリングホイールを握って走りはじめると、あらま、ハンドルの軽いこと。クルーズの電動パワステは、「最大アシスト量は同じながら、アシストが出る方向にセッティングし直しました」とは、試乗後にお話をうかがったスズキのエンジニア氏。なるほど。
せっかちな記者に応えようと、VVT(可変バルブタイミング)付き1.3リッター“オールアルミ”ユニット(88ps、12.0kgm)はビーンと元気よく回る。けなげな加速。「スズキ色が強い」というのが第一印象だ。
続いてドライブした1.5リッターモデル「LT」(FF)はだいぶ印象が違った。ホイールを15インチにアップ。フロントのサスペンションアームを変えてトレッドを拡大、スプリングにオフセットコイルを採用してフリクションを低減し、かつアンチロールバーを強化した。リアにおいてはアクスル(車軸)を延長してやはりトレッドを拡げた……といったリファインが説得力をもつ乗り心地のよさがある。1.3リッターモデルと車重は変わらないし(駆動方式が同じ場合)、足まわりのセッティングも違いはないというから、VVT付き1.5リッター(110ps、14.6kgm)搭載モデルの方がバランスがいい、というよりは、初期ロット特有の個体差ではないかと思う。いずれ良好な方向に収束するだろう。
■GMグループの一員
「足まわりの見直しは、具体的にどのように進めたのですか?」とスズキのエンジニアの方にうかがうと、スイフトをオーストラリアに持ち込んで、現地のGM系メーカー「ホールデン」の技術者が開発したという。もちろん、ホールデン側技術陣が来日して、わが国の交通状況下での確認も行った。
スズキ・スイフトとの棲み分けを広報担当の人にうかがうと、「スイフトはどちらかというと女性のお客様に、クルーズは男性の方にオススメしたい」とのこと。
「アリーナ店の人は、いきなりシボレーを販売するように言われて、とまどいはないのでしょうか?」との質問には、「いや、ウチの販売店さんは、古くからおつきあいいただいているところが多いですから、意外に“シボレー”に馴染みがある。『オッ、スズキのクルマがシボレーになったのか!』と喜ばれる方もいらっしゃいます」とのこと。ホントは違うんですけどね、と広報担当者の微苦笑が続いた。
ちなみに、アリーナ店用1.3リッターモデルにのみ、リアに四角い、青地に白の「GM」プレートが付く。「GMグループの一員であることをもっと強調したい」という鈴木修社長の意向が反映されたものだという。クルーズは、スイフトと同じ浜松は湖西工場で生産される。販売伸び悩む姉妹モデルの、力強い援軍にもなろう。販売台数は、「GM」「スズキ」両チャンネルあわせて2万台が予定される。
(文=webCGアオキ/写真=郡大二郎/2001年11月)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2025.10.20 「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
NEW
開幕まで1週間! ジャパンモビリティショー2025の歩き方
2025.10.22デイリーコラム「ジャパンモビリティショー2025」の開幕が間近に迫っている。広大な会場にたくさんの展示物が並んでいるため、「見逃しがあったら……」と、今から夜も眠れない日々をお過ごしの方もおられるに違いない。ずばりショーの見どころをお伝えしよう。 -
NEW
レクサスLM500h“エグゼクティブ”(4WD/6AT)【試乗記】
2025.10.22試乗記レクサスの高級ミニバン「LM」が2代目への代替わりから2年を待たずしてマイナーチェンジを敢行。メニューの数自体は控えめながら、その乗り味には着実な進化の跡が感じられる。4人乗り仕様“エグゼクティブ”の仕上がりを報告する。 -
NEW
第88回:「ホンダ・プレリュード」を再考する(前編) ―スペシャリティークーペのホントの価値ってなんだ?―
2025.10.22カーデザイン曼荼羅いよいよ販売が開始されたホンダのスペシャリティークーペ「プレリュード」。コンセプトモデルの頃から反転したようにも思える世間の評価の理由とは? クルマ好きはスペシャリティークーペになにを求めているのか? カーデザインの専門家と考えた。 -
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。