ホンダ・シビック タイプR(FF/6MT)【試乗記】
レースカーに紙一重 2007.04.13 試乗記 ホンダ・シビック タイプR(FF/6MT)……283万5000円
3代目となった「ホンダ・シビック・タイプR」。セダンボディの“R”はどうなのか? 鈴鹿サーキットで走らせた!
4ドアの理由
「ホンダ・シビック・タイプR」のプレス試乗会が、鈴鹿サーキットをフルコース使って行われた。シビック・セダンに、リッター100ps超の225ps(!)を発生する2リッターエンジンを与え、6段MTと組み合わせ、スポーティに硬めた足もとに18インチを装着した、ホンダ自慢のタイムアタッカーである。
ヨーロッパで一足先に発売された彼の地の「シビック・タイプR」は、「ホンダ・ジャズ(邦名フィット)」由来の3ドアモデルだが、ご存知の通り、新しい日本の「タイプR」は4ドアセダンとなった。「シビックといえばハッチバックだろう」という声がホンダ社内からも出たという。それでも3代目となるスペシャル・シビックが3ボックスになった理由として、次の2点が挙げられた。
・「3ドアではやはり不便」という市場の要望があった。裏返せば、ハッチバックのあまりな不人気ぶり。
・シビックセダンが、市販車として非常に高いボディ剛性をもっていた。タイプRのベース車として最適である。
加えて、英国から輸入した2代目シビック“ハッチバック”タイプRが、いかな特殊なモデルとはいえ、いささか販売がふるわなかったことも、“タイプRセダン化”の伏線としてあったことだろう。
実際、ハッチゲートによる広い開口部をもたないシビックセダンは、「サブフレーム取り付け部」「リアスタビライザー取り付け部」といった要所の板厚を増すといった最小限の補強を施すことで、2代目「インテグラ・タイプR」と比較して約50%アップのボディ剛性を獲得したという。
一方、「フロントバンパーのアルミビーム採用」「リアガラス薄板化」など13.4kg相当の軽量化を果たした。シビック・タイプRの車重は、「シビック2.0GL」より10kg軽い1270kgである。
エンジンとギア
「専用ボンネット」「フロントスポイラー」「リアディフューザー」、なにより大きな「リアウィング」が、シビック・タイプRを精悍に引き立てる。4540mmの全長はノーマルセダンと同じだが、全幅は1770mmと20mm広がり、車高は10mm低い1430mmとなった。
車内には専用バケットシートが奢られ、ステアリングホイール右の赤いスターターが気分を盛り上げる。ペダル類はスポーティなメタル製。
“インテR”ですでに220psを得ていた2リッター「K20A」DOHC i-VTECは、インテークマニフォルドを直線化、エグゾーストをデュアルかつ可能な限りストレートにすることで排圧を低減。ピストン頂をわずかに盛り増すことで圧縮比を11.7と、さらに0.2上げた。もともとのハイチューンユニットからさらにインテR比「+5psと0.9kgm」を絞り出す。最高出力は225ps/8000rpm、最大トルクは21.9kgm/6100rpmとなる。パワーをほとばしらせながらクライマックスに向かって吹け上がる、まことに胸のすくパワーユニットである。粗野なフィールは皆無。いかにも精緻なエンジンだ。
今回のタイプRには、2階建てになったメーターナセル上段に、新たに「i-VTEC/REVインジケーター」が設置された。デジタルの速度計の左隣に6つの小さなランプが並び、VTECがハイカムに切り替わる5800rpm付近から点灯、回転が上がるに従って次々と点いて、ランプが黄色から赤に変わるREV5が、ピークパワー発生ポイントの8000rpm。
視界のすみでランプをとらえながら6MTをアップしていくと、6000、6200、6800と、ハイカム側の回転域にタコメーターの針が落ちてゆき、加速が途切れることがない。インテグラと比較して、1-3速を約4%落とし、4-6速を約1%高め、「鋭い加速」と「爽快な伸びを実現」したという。それでも「100km/h-トップギア」で3000rpm強だから、まだまだ全体にロウギアードである。
283万5000円
先代の「シビック・タイプR」もシートのよさが印象的だったが、3代目の専用シートも−−今回は短時間のサーキット走行だけだが−−やんわり体にあたり、いざとなるとしっかりホールドしてくれる頼もしいものだった。
レースコースでのシビック・タイプRは、まさに水を得た魚。レースカーと紙一重。ステアリングやスロットル操作に機敏に反応して身軽に走り、けれどもオシリはしっかり安定している。ドライバーの操作に対してピーキーな動きをしないので、ステアリングホイールを握っていて安心感が高い。
タイプRのサスペンションは、もちろんハードにチューンされる。スプリング、ダンパーはいずれも強化され、アンチロールバーも太い。コーナリング中は外輪をしっかり接地させ、内輪の伸びを早めてこちらの接地もできるだけ確保。リアの安定に大いに寄与する。
コーナーの出口では、ヘリカル式のLSDが、スロットル開度に合わせてグイグイ前に引っ張っていってくれる。タイヤには、専用のブリヂストン・ポテンザRE070(225/40R18 88Y)が開発された。
ブレーキは、フロントが320mm、リアが282mm。ブレンボ社と共同開発した4ポッドキャリパー(前)がじんわり確実に速度を殺す。新しいタイプRは、フロントバンパーのダクトからキャリーパー前の導風板にエアを送るシステムが新たに採用された。20分程度のサーキット走行では、音を上げる予兆もない。
4ドアセダンとなったシビック・タイプR。283万5000円。
“ノーマル”タイプRで飽き足らない人のためには、2008年からインテグラにかわって、シビック・タイプRのワンメイクレースが始まる。レース車両は、150万円前後で用意される予定だ。
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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