シトロエン・クサラピカソ(4AT)【試乗記】
ミニバンの命題をかなえるクルマ 2004.05.23 試乗記 シトロエン・クサラピカソ(4AT) ……299万2500円 モノフォルムボディに、2列5座のレイアウトを内包した「シトロエン・クサラピカソ」。昨2003年、本国でようやくAT仕様が登場し、2004年6月1日から日本での販売が開始される。『webCG』本諏訪裕幸が試乗した。モノスペースセダン
「ふーん、クサラピカソってけっこういるんだなぁ」。2002年、まだ私がドイツに住んでいるとき、パリに買い物にでかけた週末に思ったのはそんなことだった。ミニバンをあまり見かけないドイツの町から花の都に赴き、いきなり目にとびこんできた、「シトロエン・クサラピカソ」。なかなか売れているんだなぁ、と思った。そして街並みのせいか、そのクルマはよく見るミニバンとは違い、おしゃれに見えた。
2004年6月1日から、日本での販売が開始されるクサラピカソは、2000年1月に本国で発売されたモノフォルムカー。デビュー当初にラインナップされた1.8リッター(1.6リッターもあり)+5段MTというスペックは、日本のパパママドライバーの需要にはミスマッチ。2003年1月に2リッター+4段ATモデルが追加され、さらに2004年3月のエクステリア/インテリアデザイン変更を待ち、今回の“ちょっと遅い”新型デビューとなった。
日本でのラインナップは、2リッター(137ps、19.8kgm)エンジンに4段ATを組みあわせたモノグレード。右ハンドル。オプションはレザーシートのみとシンプルな展開だ。
全長4280×全幅1755×全高1640mmは、ステーションワゴンの「クサラブレーク」よりも90mm短く、45mm広く、220mm高い。ホイールベースは220mmも長い2760mm、2列5人乗りのシートレイアウトと相まって、見た目の丸さとはうらはらに(?)、車内空間はかなり広い。
シトロエンではクサラピカソを「モノスペースセダン」と呼ぶそうだ。まあスペックにはまったく関係ないのだが、車検証の登録区分も「ステーションワゴン」ではなく「箱形」。「ミニバン」という言葉からの脱却か? 名称はともかく、無理矢理3列シートを詰め込むのではなく、広いスペースを2列で使う姿勢には賛同する。
カボチャの馬車か
内装には、「ブルー」と「ベージュ」の2種類が用意される。試乗車は後者で、ベージュと茶色のおしゃれな色遣いが、フランスの香りを感じさせる。オプションでレザーシートが用意されるが、標準のベロアシートの方が似合っていると思う。収納が至れり尽くせりの国産ミニバンには劣るが、座面下のシートアンダートレイや、センターコンソールにある大きめのポケットも使い勝手がよい。センターメーターの左右ダッシュボード上に配置されるトレーは、携帯電話を置くなど重宝するだろう。
シートに座るとクッションは厚く、さわり心地、座り心地ともに良好。座面の高さに加え、大きな三角窓が快適な視界を提供する。さらに標準装備となる、天井2個所が大きく開く「スカイルーフ」が上方からの光を集めてくれる。
フラットな床となるウォークスルーを抜け、後席に移動する。3席用意されたリアシートは同一サイズで、すべてに3点式シートベルトが付く。ISO-FIX対応のチャイルドシートマウントがあるあたりも、ファミリーユーザーには大切なことだ。
張り出しがすくなく低床、フラットな荷室はトノカバー下だけでも550リッターの容量。後席は3座が独立していて、それぞれの背もたれを前に倒せるのはもちろん、さらにシートごと90度前方へ倒すことも可能だ。取り外しも可能で、3席を取り除いた場合、ラゲッジスペースは最大2128リッターにもなるという。もっとも、えてして外したシートの置き場に困るので、外さないものであるが……。
荷室右側に取り付けられるのが「モジュボックス」と呼ばれる、車輪付きで取り外し可能な入れ物である。日本でクサラピカソを買うような人が、このプラスチッキーで無骨なカートを持ち運ぶとは思えないが、ラゲッジルーム内で使う分には活躍しそうだ。
巨匠「ピカソ」の名を冠するこのクルマ、デザインがウリとのこと。ふむふむ、横から見ると5本のピラーが中央に集中するようなグラフィックがかわっている。まるでタマネギかカボチャの馬車か。フロントマスクはクサラよりも丸く、リアもまるまる。ピカソの名に反して(?)カワイイじゃないか。12色のボディカラーラインナップを全色並べてみたくなる。
ひたすらソフト
走り始めると、137psのエンジンは1360kg+大人2名+撮影機材でもよく走る。室内に入るエンジン音はすくないが、試乗した山道では、たびたび下のギアを使うことになり、それはそれでうるさくなる。ただし、高速道路でのクルージングでは、車内に響くCDの音楽を妨げることもないだろう。試乗車はトランスミッション付近からノイズが出ていたが、これは馴染んでくれば消えるということを祈ろう。
前マクファーソンストラット/後トレーリングアーム式のサスペンションは、「クサラ」と同型。フランス車らしくオーソドックスな形式ながらも乗り心地は古くさくない。走行時のショックの吸収は、サスペンションとシートでダブルクッション。不快な突き上げなどは感じられず、乗り心地はひたすらソフトである。重心高が高いのは否めないが、コーナリング時のロールによる恐怖感はあまり感じない。そして長いホイールベースのおかげか、ピッチングもすくない。
ステアリングホイールは大きくて細いが、この手のクルマにしてはフィールが重い。これは運転していて安心感があるし、路面のインフォメーションもつかまえやすい。
ボディの大きさは、運転しているとあまり感じず、コンパクトカーから乗り換えたママさんでもすぐに慣れるはずだ。しかし気になるのは回転半径の大きさ。車庫入れやUターン時に、思っていたより切れなかった。
シトロエンジャポンでは、日本でのシトロエン車販売台数の2割をピカソで占めたいという。日本市場では「デザイン」をウリに切り込んでいき、「C3」に次ぐ主力車種に育てる考えだ。
日本で見るクサラピカソもなかなかおしゃれである。そのうえ、ラブリーなデザインだけでなく、快適な乗り心地もピカソの魅力。乗り心地のよさは「複数人を快適に移動させる」というミニバンの命題を、かなえてくれるに違いない。
(文=webCG本諏訪裕幸/写真=峰昌宏/2004年5月)

本諏訪 裕幸
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。 -
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。