シトロエンC4 Coupe 2.0i 16V/C4 Saloon 1.6i 16V【海外試乗記】
どことなく、スローライフ 2005.01.25 試乗記 シトロエンC4 Coupe 2.0i 16V/C4 Saloon 1.6i 16V 「クサラ」の後継にあたるコンパクトハッチ「シトロエンC4」は、往年のシトロエンを彷彿とさせる、斬新なデザインや独特の乗り味をもつという。フランスで開かれた国際試乗会で、自動車ジャーナリストの河村康彦が乗った。
拡大
|
拡大
|
あまりに前衛的
実用車系はアルファベット「C」と数字の組み合わせ、派生スペシャル・モデルには固有の愛称が与えられる、というきまりで車名が表される最新世代のシトロエン。そうしたフォーマットからすると、このモデルは「C3」と「C5」の狭間を埋めるベーシックモデル、ということになる。
だが、実際はご覧通り。最新モデルの「C4」は、単なる“実用車”と受け取るには、あまりに前衛的なプロポーションの持ち主だ。
シトロエンラインナップにおけるポジショニングは、「クサラ」の後継にあたるコンパクトハッチである。しかし、クサラとの関連性は、すくなくともルックスからはまるで感じられない。むしろ巷では、スタイリングを評して「往年のシトロエンらしさが帰ってきた」との声をよく耳にする。
そんなC4に、スペインとの国境にほど近いフランスの西海岸リゾート、ビアリッツで乗った。
もはやコンパクトではない
C4のボディ形状は、3ドアと5ドアハッチバック。シトロエンでは、それぞれ「クーペ」「セダン」と呼称する。“C3のお兄さん”であることを思わせる、丸いテールの持ち主のセダン。それに比べて、スパッと垂直近くに切り落としたボディエンドに、かつての「ホンダCR-X」ばり(?)のスクープウィンドウをはめ込むクーペは、よりダイナミックでシャープな佇まいだ。
リアセクションで大きく形状を変えてはいるものの、「居住スペースはまったく同一」というのが、C4の売り物のひとつ。ただし、クーペのドアは前後長が極端に長く、左右がタイトな場所では開くのが困難だ。1770mmの全幅も含め、もはや“コンパクトカー”のイメージは当てはまらない。それにしても、このところの欧州車はどうしてかくも、拡幅に次ぐ拡幅に熱心になっているのだろう……。
母国フランスはもちろん、このところのヨーロッパ市場での人気を反映するかのように、国際試乗会に用意されたモデルの多くは、日本に導入見込みのないディーゼル仕様。そのなかから、「2005年の半ば頃までには日本でリリース予定」という、1.6と2リッターのガソリン仕様を探し出し、生憎の雨降りのなかをテストドライブへ連れ出した。
濃い“シトロエン度”
エクステリアデザインの“シトロエン度”が高いことは前述した通りだが、インテリアも個性的で、外観とバランスが取れている。センターメーターは今や珍しくもないが、左右が尖った横長の小型宇宙船(?)型のメータークラスターをダッシュ上部にポンと置いた造形はかなりユニーク。デジタル表示部は極めて薄型で、昼間は外光をバックライトに用いる手法も、今まで出会ったことのないアイディアだ。ステアリングのセンターパッド部は回転しない構造で、そこに配されたスイッチの操作性を向上させた。さらに、万一のエアバッグ展開時に、“末広がり”という乗員保護に最適な形状で膨らませる効果があるという。
動力性能は、シリーズ最高峰を誇る180psエンジン搭載の2リッターモデルをもってしても、期待したレベルにはちょっと届かない。静粛性が高いのでアクセルペダルを深く踏み込むには抵抗がないし、実用上では文句ナシの水準にあるものの、想像していたほど余力はなかった。試乗車はMT仕様車のみだったが、それでも1.6リッターの110ps仕様は、ときにややカッタルイ印象が否めない。日本に導入されるAT仕様は、機敏性がちょっとばかり心配だ。
シトロエン独特の“脚”
一方、乗り心地や足まわりは好印象。16インチシューズを履く1.6リッター、17インチを履く2リッター共に、その乗り味には独特の“ふんわり感”が認められた。ことさらソフトな足まわりではないが、路面の凹凸に対して、文字通り“ワンクッション”置いてくれるような、シトロエン独特の“路面との隔絶感”が新鮮だ。ハイドロニューマチックサスペンションは採用されず、コンベンショナルなコイルスプリングながら、「やっぱりシトロエンの脚は違うナ」という印象を、多くの人に与えることになりそうだ。大判サイズでたっぷりしたクッション性能を持つシートも、そうした乗り味の演出に一役買っている。
今流行りの“スローライフ”という言葉がどこか似合う。そんなシトロエンのニューモデルが、C4シリーズだ。
(文=河村康彦/写真=シトロエンジャポン/2005年1月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】
2025.12.6試乗記マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。


































