アウディTTロードスター2.0TFSI(FF/2ペダル6MT)【海外試乗記】
軽くて、骨太 2006.12.23 試乗記 アウディTTロードスター2.0TFSI(FF/2ペダル6MT)2代目に進化したアウディ「TTクーペ」に引き続き、オープンモデル「TTロードスター」が登場。日本導入を前にソフトトップの新型モデルにフランスで試乗した。
軽く仕上げました
アウディのお家芸ともいえるアルミ・スペースフレーム技術「ASF」が惜しみなく投入されて、2代目へと進化した「TTクーペ」。ASFがもたらす軽さが、TTクーペの魅力を押し上げただけに、そのオープンモデルである「TTロードスター」にも私の関心は高まっていた。果たして期待どおりか? 温暖なコート・ダジュールのリゾート地・ニースで、その仕上がりのほどを確かめた。
すでにクーペがラインナップされているから当然なのかもしれないが、TTロードスターはメタルトップのいわゆる“クーペ・カブリオレ”ではなく、ソフトトップを備えたオーソドックスなオープンカーである。そのうえキャビンは2シーターと、いまどき潔いクルマなのだ。おかげで、幌を上げても降ろしても間延びした感じはなく、端正なスタイルがスポーティな走りを予感させた。
もちろん、ソフトトップの採用はデザインのためだけではない。スポーティな走りを目指した新型TTロードスターにとって、軽量化は最優先事項だった。
大きな開口部を持つオープンカーでは、高いボディ剛性を確保するために、重量増を伴うボディの補強が必要なのはいうまでもないが、TTロードスターの場合は、たとえば、アルミ押し出し材を使ったサイドシルをクーペとは異なる断面形状にするとともに肉厚を増したり、Aピラーまわりを補強するなどして旧型に比べて2倍以上のボディ剛性を確保している。にもかかわらず、クーペに対する重量の増加は手動式トップの場合で35kg、電動油圧式でも67kgに過ぎない。当然、ソフトトップの採用もこの数字に貢献しているというわけだ。
日本は2リッターTFSI+Sトロニックの1モデル
TTロードスターは、TTクーペ同様、2リッター直噴ターボTFSIと3.2リッターV6の2種類のエンジンが用意され、それぞれに6MTまたは2ペダル6MT「Sトロニック」が組み合わせられる。駆動方式もクーペ同様、2リッターがFF、3.2リッターがフルタイム4WDの「クワトロ」だ。このうち、日本に導入されるのは2リッターTFSIとSトロニックということなので、今回はこのモデルを中心に試乗を進めた。
2リッターではオプションになる電動油圧式トップが備えられた試乗車に乗り込み、まずはソフトトップを降ろす。この際、ウインドウフレームのキャッチなどを操作する必要はなく、センターコンソールのスイッチを押し続けるだけで、ソフトトップが開けられるのはうれしい進化だ。所要時間は約12秒。Z型に折りたたむ構造なので、トノカバーの類は不要。50km/h以下なら、走行中の開閉も可能である。
ソフトトップの開閉スイッチのそばにもうひとつボタンあるが、これはキャビンへの風の巻き込みを防ぐウインドディフレクターを上下させるためのもの。これも、2リッターTFSIではオプション装備のひとつだが、簡単に収納できる電動式はとても便利で画期的である。
冬の柔らかな日差しに包まれたTTロードスターのキャビンは、TTを特徴づけるエアベントのリングが光り輝いている。初代ではアルミが使われていたが、新型では亜鉛ダイキャストに変わり、輝きにアルミ特有の渋さが失われたのが個人的には残念だ。それでもなお美しいコクピットは、アウディの面目躍如というところだろう。
こう見えてかなりの骨太
さっそく試乗コースに向けて、ホテルの取付道路を進み始めるが、そんなわずかな距離でも、TTロードスターの高いボディ剛性が手に取るようにわかる。石畳の道はオープンカーの弱点をさらけ出す危険性をはらんでいたが、そんな心配をよそに、TTロードスターのボディはミシリともしなかったのだ。海を見下ろす道路に出て、スピードを上げても、ボディが捩れる感じはしない。私がふだん日本で乗る現行型ボクスターよりも、ボディ剛性は確実に高い。
それでいてボディの重さを感じないのが、新型TTロードスターの優れる点だ。はじめてTTクーペに乗ったときに感じたボディの軽快さは、このロードスターにも受け継がれていて、たとえば荒れた路面でボディが揺さぶられるような場面でも、ダンパーが無理やり動きを抑え込む感じはなく、ボディの上下動はいとも簡単に収まってしまう。
コーナーでは、ステアリングを切り込んだときのノーズの動きこそとりたててシャープとはいえないものの、ロールを感じさせないまま、思い描いたラインを辿っていく。
試乗車にはオプションの電子制御ダンパー「アウディ・マグネティックライド」が装着されていて、ノーマルとスポーツのふたつのモードを試してみたが、あえてスポーツを選ばなくても身のこなしは軽快だった。
18インチタイヤが装着された試乗車は、やや硬めの乗り心地を示すが、クーペほどの硬さはなく、十分快適なレベルだ。すでにTTクーペをはじめ、「ゴルフGTI」などでも採用されている2リッターTFSIは、相変わらずターボらしからぬ自然なレスポンスと、豊かな低回転域からのトルクを持ち、そして、高回転域まで力強く吹け上がるのが印象的だ。そして、このTTロードスターでは、排気系を含めたサウンドチューニングが施されたということで、アクセルペダルを踏み込んだときの勇ましいサウンドが、聴覚からドライバーを刺激してくれる。
TTクーペの2リッターTFSI同様、とくに低いギアで上り勾配を駆け上がるような場面で、フロントのトラクションが失われ、トルクステアの傾向が見られるのが気になったが、それを除けば気持ちのいいオープンエアモータリングを妨げるものはない。
快適さと便利さも手に入れた
キャビンの快適さもハイレベルだ。両サイドのウインドウとウインドディフレクターを上げてしまえば、100km/h程度でも風の巻き込みは少ない。もちろん全身で風を受け止めたくなったらそれらを下げればいいだけの話だ。3段階調整が可能なシートヒーターも強力で、冬のドライブも苦にならないだろう。
驚いたのはトランクルームの広さだ。開口部は狭いが、シート後方まで奥行きがあるTTロードスターの荷室は、“RIMOWA”のXLサイズのスーツケースをいとも簡単に呑み込んでしまったのだ。ソフトトップの開閉にかかわらず、ラゲッジスペースか変わらないのもうれしい点である。
スポーティな走りとオープンエアモータリングの気持ちよさ、そして、期待以上の機能性が備わる新型TTロードスター。日本への導入は2007年夏頃になりそうだが、それまで待つだけの価値は十分にあるクルマだと思う。
(文=生方聡/写真=アウディ・ジャパン/2006年12月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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