クライスラー・クロスファイア(6MT/5AT)【海外試乗記】
説得力あるクルマ 2003.04.16 試乗記 クライスラー・クロスファイア(6MT/5AT) ドイツはカルマン社で製造されるジャーマンアメリカンたる「クライスラー・クロスファイア」。「メルセデスベンツSLK」のコンポーネンツを活用した2シータークーペに、自動車ジャーナリストの笹目二朗が乗った。カッコいいデザイン
「クライスラー・クロスファイア」は、2001年デトロイト・ショ−の白眉だった。クライスラ−・デザインは「PTクルーザー」の大成功で、今まさに春爛漫といわんばかりの勢いに乗っている。大胆で派手な、アメリカンデザインの神髄ともいえる造形は、1960年代の古きよき時代の香りを奔放に放つ。
しかし“特定の何かには似ていない”のが特徴で、ニュ−ビ−トルやMINIの回顧趣味とも少々異なる。あるクルマのエッセンスを抽出して、現代風にアレンジし直すのではない。時の流れにどっぷりと漬かりながら、しっかりと当時の延長上にあるデザイン。正常進化的な思考に沿った、かつ最新の手法を用いて再生されたカタチといえる。それゆえに見る者に違和感を与えず、古さも感じさせない。端的にいって、誰もが欲しくなるカッコいいデザインの典型である。
前後のオ−バ−ハングを切り詰めた、軽快な動きを感じさせるボディは、一見FF(前輪駆動)車のようにも見えるが、中身は回帰してFR(後輪駆動)方式を採る。エンジンをはじめとして、パワ−トレインやサスペンション関係は、「メルセデスSLK」から失敬してきており、信頼性を含め、開発期間の短縮が図られた。
ざっとおさらいすると、エンジンは90度V6の3.2リッタ−3バルブSOHC、218psと31.6kgmを発生する。ギアボックスは、6段MTと5段ATが用意される。サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボ−ン、リアがマルチリンクの4輪独立懸架。タイヤは前225/40ZR18、後255/35ZR19と、デザイナ−好みの大径を使う。
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これがベスト
2ドア・ハッチバックのボディは、短期間に開発されたとは思えないほど、カチっと精緻に造られている。走り出すと、剛性感も高く、しっかりした感覚が伝わってくる。
インテリアは、日本をはじめとして、右ハンドル車を想定したシンメトリカルな配置で、外観から予想するよりシンプル。よくいえば、スッキリ、サッパリしている。個人的にはもうすこし、ここにも60年代の調味料をふりかけて欲しかったと思う。
2シータークーペとしての室内空間は十分な広さであるが、意外というか、シ−トスライド量はそれほどでもない。ステアリングホイールから離れようとシートバックを倒すと、すぐにリアのバルクヘッドに当たってしまう。ストレートアームのポジションはギリギリだ。
フルロック3回転弱のステアリングはRB(ボ−ル循環式)で、旧「Cクラス」からの贈り物。スポーツカーならラック&ピニオンと願いたいところだが、これはこれでヤムナシとも思う。最近の、安定性に優れたFFシャシ−に慣れてしまった国民にとって、久々にFRに回帰するにあたり、あのクイックなレシオやレスポンスを与えてしまうと、スピン続出(!?)で、イメ−ジ悪化につながる。とりえずはこの程度ではじめ、後輪駆動が市民権を回復したころあいを見はからって、より高性能なモデルやマニアックな仕様を加えていく、という方針のように思われる。
もちろん、アンチスピンデバイスたるESPやトラクションコントロ−ルの備えは完璧で、破綻を招く要素はない。とはいえ、訴訟好きな国民性を鑑みるに、転ばぬ先の杖を周到に準備する気持ちも理解されるところだ。
しかしながら、18/19インチの大径タイヤによるレスポンスや、オーバーハングを切り詰めて、ヨ−慣性を小さく抑えたボディなどの現代的なチュ−ンにより、絶対的には“不足ない回頭性”と“旋回の楽しさ”が約束される。そのうえで、よりしっとりとした上品な身のこなしが求められる。となると、現状のダイムラークライスラーの持ち駒からパ−ツを選ぶとすると、これがベストと思われる。
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スタイリングに魅せられて
3.2リッターV6エンジンはクランクのオフセットにより、90度バンクでも等間隔爆発が行われ、スム−ズで綺麗な回転バランスを見せる。排気音もうまく調律されており、やかましくない範囲で耳に心地よい快音を届けてくれる。
特に4000-6000rpmあたりの盛り上がり方は気持ちがいい。ギアボックスは、6段MTの方が繊細な感覚で運転できるが、たぶん日本仕様はATのみとなろう。発進時のスロットル踏み込みに対するレスポンスなどに、やや雑な運転感覚もあるが、効率的で信頼感のある自動シフトは、さすがに出所の由緒を思わせる。
メルセデスというブランドにアレルギ−を感じる人も、スタイリングに魅せられて買ってしまうだけの説得力があるクルマだ。ちなみにクロスファイアの生産国はドイツ。オズナブルックのカルマン社が製造にあたる。
(文=笹目二朗/写真=ダイムラークライスラー日本/2003年4月)

笹目 二朗
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