ホンダ・ストリーム 1.8RSZ(FF/5AT)【ブリーフテスト】
ホンダ・ストリーム 1.8RSZ(FF/5AT) 2006.10.31 試乗記 ……240万4500円 総合評価……★★★ ホンダが得意とする低床化に着手し、スタイリングにこだわって進化した「ストリーム」。足まわりも重視したという新型だが、ライバル車に対抗するにはまだ大きな課題があるようだ。
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リベンジの武器は低床設計
5ナンバー枠内で7人を、それが2000年10月にデビューした「シビック」ベースの小型ミニバン「ストリーム」のテーマであり、成功の要因でもあった。その狙いとスポーティで個性的なスタイリングが「所帯じみていないけれど、それでも家族で使えそうなクルマ」のイメージを確保してヒット作となった。ところが約2年後、思わぬ強敵の挑戦を受けることになる。完全に同じ市場を狙って急遽開発された「トヨタ・ウィッシュ」がそれであり、寸分違わぬ外寸が象徴するように、このストリームを徹底的にマークして作られたウィッシュによって、パイオニアが自ら作った市場を荒らされた。
今回デビューした2代目は、そのウィッシュに対する報復を目的に再構成されている。そのための最大の武器がホンダお得意の低床設計であり、これによって普通の乗用車並みの扱いやすさを確保するとともに2列め、3列めのシート空間をより広げている。その低い重心高を利用して高いハンドリング能力を狙うなど、ホンダ製ミニバン戦列の中では、もっともスポーティなイメージが売り物である。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
小型車の枠内で、7座を確保するとともに、スタイルや走行性能にも独自のイメージを出して、新しいユーザーを取り込もうという姿勢がより強められたシビックサイズのミニバン。お得意の低床レイアウトを活用することで、室内スペースは従来以上に確保しつつも全高を45mm下げ、1545mmとタワーパーキングに入るサイズにまで落としたのが特徴。この低いスタイリングを、メーカーでは「モーションフォルム」、それによる全体の空間構成を「モーションパッケージ」と呼んでいる。エンジンラインナップは1.8と2リッターで、双方にスポーティ仕様のRSZバージョンも設けられた。また全モデルに、FFと4WDが用意される。
(グレード概要)
今回取り上げたのは小さいほうの1.8リッターで、17インチホイール、専用サスペンション、パドルシフト付き5段ATなどを備えた「RSZ」のFF仕様。なお2リッターは7段のマニュアルモードを持ったCVTとなる。ボディは全モデル共通の5ドア3列7座。車間制御機能をもったインテリジェントハイウェイクルーズコントロール(IHCC)、HDDインターナビシステムなどは全モデルでオプション。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
黒とアルミ風シルバーで統一された室内は、価格も価格だから特に仕上げの質感は高くない。若い市場を前提にした造形がやや鼻につくが、基本的には機能を優先したレイアウトである。スイッチ類やメーターの位置などは、ホンダ流に合理的に統一されている。RSZはステアリングコラムにパドルシフトのスイッチが配されるが、これを操作した瞬間にマニュアルモードが選択されるのは、この種のATの利点でもある。オデッセイでは視界を妨げるAピラーが批判されたものだが、その教訓を活かしてか、このクルマではピラー位置と断面形状が綿密に考えられ、通常のポジションを取っている限り、視野にピラーは入ってこないのがいい。
(前席)……★★
表面がざっくりした材質を持ち、黒一色でまとめられたフロントシートは、一見スポーティで機能的だし、結構洒落ているが、実際に座るとあまりコストをかけていないことが感じられる。クッションは平板で底付きがするし、バックレストのサポートも良くない。サイズは適度に大きく、前後上下とも調整域は広いが、どのポジションを選択していても、長時間では腰が疲れる。
(2列目シート)……★★
ストリームの最大の美点はフラットフロア。これは特に2列め、3列めに乗ると実感できる。ともに寸法的には充分に広いわけではないが、フラットな足下は物理的にも心理的にも余裕を感じさせる。同時にこの床の低さが効いて、低められた全高にもかかわらずヘッドルームも充分に確保される。ただし2列目は3人乗るとすると幅がミニマムだし、特にクッション前後方向が短く、見た目ほど快適ではないばかりか、サポートが悪いので、荒れた路面などでは落ち着けない。
(3列目シート)……★★★★
ここのポイントが高いのは、ともかくもこのサイズの中で7人乗りを実現していることを、まず評価したからだ。そして特に先代やライバルに比べるなら、3列目のシートスペースは格段に広くなって実用性を増した。ヘッドルームも十分に確保されているし、2列めシート背後の巧みな造形も手伝って、足もとは予想外に広々している。これなら大人二人も短時間の移動なら、それほど苦痛にならないだろう。またこれらを折り畳んだり起こしたりするという作業も、より簡単かつ力を要求されずにできる。こういうところも、やはり長年ミニバンを作ってきた経験が活かされている。ただし、一応スペースは確保しているかといって、すべてのシートが本当に快適かというなら、やはり無理はある。2列めシートと同様にクッション長が短いし、前席よりははるかに乗り心地は落ちる。これには後述するクルマ自体の乗り心地の悪さも大きく影響している。
(荷室)……★★★
あたりまえのことだが、荷室の使い勝手や広さは乗員の数に反比例する。特に3列目を使っているときには、積める荷物はとても限られる。でもメーカーはそれなりに努力しており、いくつかのアイディアを出している。荷室床は左右分割式で、それを操作することでより深い荷室にしたり、荷物がとりやすいように浅くしたりできるのに加え、リッド裏面は撥水加工されており、汚れたものを収納するときには、裏返してその面を使えるようになっている。結局この種のクルマは、こういう細かいアイディアが大事なのだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
1.8リッターのi-VTECは、ストリームとしては小さいほうのユニットだが、日常の使用では140psで充分である。それほどスポーティなユニットではないし、エンジンそのものの魅力で訴えるクルマでもないが、低回転域のトルクがうまく引き出されるから、燃費のために比較的ハイギアードでありながらも、通常の使用ではまったく問題ない。5ATのパドルは本来ならコラムにあって場所が固定されているほうが使いやすいが、いずれにしてもこれを駆使するまでもなく、レスポンスは良好だ。でも個人的には2リッターとCVTの組み合わせのほうが扱いやすいと思う。
(乗り心地+ハンドリング)……★
ストリームでもっとも失望したのはこの項目だった。ウィッシュに対抗するには、ここがもっとも大切だし、特に新型は足まわりを重視して設計されたと聞いていたからだ。比較的大きな騒音、低速でも高速でも硬く、突き上げるような乗り心地、感触が悪く路面に影響されるステアリングなど、いい面をほとんど発見できなかったのだが、これはRSZゆえかも知れない。つまり205/55-17と一回り大きく薄いタイヤに大きく影響されているものと思う。それにしてもサスペンションはホイールストロークが絶対的に不足していることを感じたし、ステアリングは一昔前の電動パワステのようなフィールだった。つまり切り始めはまったく手応えがなく、ある舵角から急に重くなる。また高速道路では妙に路面にとられやすいのだが、この直進部分の不感帯がその情報を拾いにくいこともあって、クルマ自体がちょろちょろする。ドライバーは直進しようと思っているのに、時々インテリジェントなカーナビに「クルマがふらついています!」と叱られたほどである。タイヤには「ヨコハマDNA dB」を履いているわりには、騒音遮断と乗り心地の両立も、予想外に悪かった。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:大川悠
テスト日:2006年9月6日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:3455km
タイヤ:(前)205/55R17(後)同じ(いずれもヨコハマDNA dB decibel E70)
オプション装備:HondaHDDインターナビシステム(リアカメラ付き)7インチワイドディスプレイTV/AM/FMチューナー付き(26万2500円)/VSA(7万3500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:334.5km
使用燃料:38.5リッター
参考燃費:8.69km/リッター

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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