マツダスピード・アクセラ(FF/6MT)【試乗記】
走りに対するまじめな姿勢 2006.07.29 試乗記 マツダスピード・アクセラ(FF/6MT) 2006年のジュネーブショーで「Mazda3 MPS」としてお披露目されたスポーツモデルが、日本名を「マツダスピード・アクセラ」として登場した。2.3リッター直噴ターボを積む久々のホットハッチに試乗した。ブランド名に疑問
モデルライフ半ばで実施された「アクセラ」シリーズのマイナーチェンジ。それとタイミングをともにして投入された“プレゼント”が「マツダスピード・アクセラ」だ。
「マツダスピード」といえば、かつてはルマン24時間レースへの参戦、そして優勝などで名を馳せた、マツダのレーシング部門を受け持つ関連会社。が、1999年に“本体”のマツダに吸収・統合されてからは、「モータースポーツ用を含むパーツ、及びアクセサリーの1ブランド」という、ちょっとマイナーな(?)扱いをされてきたブランドになっていた。
それだけに、正真正銘マツダが気合いを込めて開発したこのモデルが、“後付けパーツ”で仕立て上げられたかのような印象を持たせかねないネーミングとされた点に、ちょっと疑問を覚える。わかりやすく“アクセラ・ターボ”、もしくは兄貴分である「マツダスピード・アテンザ」の海外名にならった“アクセラMPS”といった名称とした場合、何か不都合があったのだろうか……。
羊の皮を被った狼!?
搭載するのは、最高出力264psを発生する2.3リッターのターボ付き4気筒エンジン。もっとわかりやすく言えば、それは前出の兄貴分であるマツダスピード・アテンザに搭載された、直噴ヘッド付きDOHCユニットを、「主に排気系の違いにより最高出力が8psほどダウンしたものの」、ほぼそのまま移植したものだ。
決して量販が見込めるモデルではないにもかかわらず、エンジン直上にレイアウトされるインタークーラーに、冷却エアを導くための通路を確保すべくフードの厚みを増したり、シリーズ唯一の18インチ・シューズをクリアするためにフロントフェンダーをわずかにワイド化したりと、大物パネルの金型変更というコストのかかる作業まで施した。
そのルックスは、専用デザインの前後バンパーや各種エアロパーツ類の採用もあって、“標準車”にはない逞しさが演じられてはいるものの、それでも遠目にはうっかり見落としかねない程度の、いわゆる「羊の皮を被った狼」に属するものと言っていいだろう。
インテリアでは“セミバケット”と称するフロントシートや本革巻きステアリングホイール、アルミペダルなどが専用装備。だが、全体のカラーリングがブラック基調ということもあり、こちらも「特別な」という顕示性はさほどのものではない。
軽やかで快適な走り
アクセル開度が小さく、エンジン回転数の低い領域でも「ターボ付きエンジンの割には随分軽やかに走ってくれる」という第一印象は、このクルマもマツダスピード・アテンザも同様だった。
いや、比べればよりコンパクトな上に後輪駆動系を持たないこちらは170kgも軽く、最終減速比もより動力性能重視の設定(=ローギアード)なのだから、多少最高出力値が小さくてもそんな印象となるのは当然なのだ。
そこからアクセルペダルを深く踏み込み、排気のエネルギーが高まってターボが本格的に威力を発揮し始めると、乾いた排気サウンドとともにググッと高まる太いトルク感がさすがに印象的だ。
そんなシーンでも、だらしなくトラクションコントロールの世話になったりしないフロント接地力の高さは褒めるべき部分。それゆえに、コーナーリング時でもパワーONとともに、アンダーステアが急増するような危ういシーンには遭遇しなかった。
決して「ソフト」と言える足まわりのセッティングではないが、それでも街なかで不快な硬さを感じないし、高速ではダンピングの効いたフラットな乗り味がなかなか快適だったのは、フロントカウル部分や床下を中心に、専用のボディ補強が入れられた効果も大きかったはず。
一方、リラックスした走りを妨げる要因となったのが、轍路面で発生するワンダリング現象だった。さらに中立位置からのステアリング切り始めの部分にやや不自然に反力が高まるわずかな“壁感”が認められ、上記2点が解消されれば「どこまでも走っていきたくなる」という快感が大きく高まりそうなのだが……。
それにしても感心したのは、このモデルもアテンザ同様、スタビリティ・コントロール(DSC)を標準装備としたこと。この点だけをとっても、このクルマの走りに対する真摯な取り組みの姿勢が理解できるというものだ。
(文=河村康彦/写真=郡大二郎/2006年7月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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