アルファ・ロメオ・スパイダー2.2JTS(FF/6MT)/3.2 V6 Q4(4WD/6MT)【海外試乗記(後編)】
自由に向かって走れ(後編) 2006.08.12 試乗記 アルファ・ロメオ・スパイダー2.2JTS(FF/6MT)/3.2 V6 Q4(4WD/6MT) かつての提携相手、GMとの間に生まれた「159」「ブレラ」そして「スパイダー」。陽光燦々とふりそそぐシチリア島でステアリングを握り、感じたこととは……。走りっぷりはブレラに近い
(前編からのつづき) モーターサイクルに比べればずっとマシだが、オープンカーの印象が、気候の善し悪しに大きく左右されることはもちろんだ。
その点、今回試乗会が催されたのはシチリア島。オープンカーならではの開放感に、地中海の太陽と潮の香りというオプションまで加わってしまったのだから、その爽快さたるや文句のつけようがないほど素晴らしいものだった。
言い忘れたが「スパイダー」のメカニカルトレインは「ブレラ」に準じている。
つまりエンジンは60度のバンク角を持つ3.2リッターV6JTS(260ps/6200rpm、32.8kgm/4500rpm)と2.2リッター直4JTS(185ps/6500rpm、23.4kgm/4500rpm)の2種類。ともにチェーン駆動のツインカム4バルブヘッドと可変バルブタイミングシステムを持つ直噴ユニットだ。
前者にはトルセンデフを用いたフルタイム4WDシステムが、後者にはコンベンショナルなFWDの駆動系が与えられることも変わりない。
ギアボックスはブレラとともに今後アイシンAW製6ATが加わる予定だが(発表会ではセレスピードの追加も示唆された)、試乗車はすべて左ハンドル+6MTの組み合わせだったことをまず最初に断っておく。
だから当然といえばあまりに当然なのだが、その走りっぷりはブレラに非常に近い。スタイリッシュかつスポーティなこの新世代クーペの実現した世界観を、そのままオープンボディに移植した印象が支配的なのだ。
シリアスなドライビングの求道者には勧めない
とはいっても目を凝らして細かく観察すれば、もちろん違いはいくつかある。
たとえば読者にとってもっとも気になるはずのボディ剛性の低下は、はっきりと指摘せざるを得ない。路面コンディションが良ければ落ち着いたマナーに終始するが、不整路や大きめの目地段差を乗り越える際にはフロアから細かなバイブレーションが伝わるし、撮影のためUターンに迫られ未舗装路を走った時には、軽いスカットルシェイクを意識させられる場面もあった。
だからだろう、ジオメトリーは不変のまま、細部のチューンを変更したというダブルウィッシュボーン/マルチリンクのサスペンションがもたらす乗り心地は、エンジン/駆動方式を問わず相対的に若干しなやかに感じられる。
むろんだからといってソフトすぎるようなことはなく、スポーティカーに相応しい節度感を保っているから悲観することはない。
3.2V6がそのパワーと重量に見合った確実な4輪の接地感を、2.2JTSがそれとは対照的な軽快感をもたらすこともブレラと同じである。そう、普段はビシッと着こなすスタイリッシュなウェアを、基本的にタイトなシルエットはそのままに、少しだけルーズに着崩したような心地よさが味わえる、といったら、ブレラとスパイダーの性格の差がわかってもらえるだろうか?
別に皮肉をこめて言うわけではないのだが、だからこそフラットトルクで扱いやすいが、とても官能的とは言いがたい両エンジンの欠点が、逆に気にならなくなってくる。ソフトトップを開け放ち、シチリアの強い陽の光りを全身に浴びながら底々のペースで走っていると、バランスの良いシャシー性能にも助けられ、精神が自由に向かって開放されていく快感に満たされるのだ。
シリアスなドライビングの求道者には勧めない。しかし日常生活で溜まった心の澱を解きほぐす付加価値を、このアルファ・スパイダーが粋なボディの下に秘めていることは保証できる。
(文=CG加藤哲也/写真=フィアット・オート・ジャパン/『Car Graphic』2006年8月号)
・アルファ・ロメオ・スパイダー2.2JTS(FF/6MT)/3.2 V6 Q4(4WD/6MT)【海外試乗記(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018496.html

加藤 哲也
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