第259回:果報は寝て待て!! 「ベンツ SLRマクラーレン」ちょい乗り
2006.04.10 小沢コージの勢いまかせ!第259回:果報は寝て待て!! 「ベンツ SLRマクラーレン」ちょい乗り
■ラッキー! 超希少車に乗った
いんやー、果報は寝て待てっつうか、幸せは忘れた頃にやってくるというか、とにかくラッキーは突然やってくるもんです。って突然だからラッキーなのか!?それはともかく今、中期海外出張中なんだけど、予想外にも「メルセデス・ベンツ SLRマクラーレン」に乗れちゃいました。日本円でお値段、約6000万円(カタログでは5985万円)の超スーパースポーツ!5分程度のちょい乗りでしたけど。
今出張のハイライトは後で報告するけど、新型AMGラインナップの試乗&6月のサッカーワールドカップに合わせて、ドイツのシュトゥットガルトでオープンする『メルセデス・ベンツ・ミュージアム』のプレ取材。ただし、その間若干ヒマあるから「もしやスーパー大ゴージャス“ベンツSL系”試乗会ができるかも?」って話だったのだ。そしたら本当に実現しちゃいました。俺、日頃の行いがイイからかなぁ……ってホント!?!?!
当然、みなさんの大注目はSLRマクラーレン! 『NAVI』の高平編集長やらレーシングドライバーの方やら、並みいるモータージャーナリストが集まるなか、乗った経験があるのはドイツ在住の木村好宏センセーのみっつう超希少試乗会。ま、久々、青森・大間産一本釣りの本マグロを頂きます、って感じかな。ごっくん!
果たして、俺の率直な感想は○×△◇!?? ヒジョーに複雑で興味深いものでした。というのもまず気になったのは例のカーボンモノコックのお味。
■注目のカーボンモノコック
F1 やルマンカーなど一部のレースカーを除いて、ここまでフルでカーボンモノコックボディを採用したクルマって、実はすくないのだ。ライバルと言える「ポルシェ・カレラGT」ですら、エンジン回りは独特の鳥カゴ構造になっている。SLRみたいにボディ形状ほぼそのままがカーボンになっている例は珍しい。
たしかに626馬力を発生する5.5リッターV8ツインスーパーチャージャーエンジンにも注目だけど、パワートレインは5段ATも含め、ベンツの「CLK55 AMG」と基本共通だし、注目はやっぱフルカーボンのお味……でしょう。いまやプラットフォームがクルマの走り味を決定付けるのは常識。はたしてボディ丸ごとカーボンってどうなのか? たとえると“トロを一匹ぶん丸ごと食ったらどうなる?”って感じかな。……だいぶ違うけど(笑)。
率直な結論は、やたらボディが硬い(足じゃない)ってこと。当たり前の感想ですけど。でもまあとにかく、路面のデコボコを越える時に衝撃が「ボッ」っていうか、「ドッ」っていうか、とにかく短い時間で入って終わる。「ボコッ!」とか「ドン!」ではない。ボディの振動が伝わってる感じが全然ないのだ。一部、カーボン素材は振動減衰性が高いから衝撃すら伝わらない!? って仮説があったけど、そんなことはありません。内装が超高周波数でビリビリ震えるって話もあったけど、ソイツもなかった。
■“史上最強の直線番長”
それよっか衝撃的だったのが、エンジンがあまり快楽主義的でないこと。考えてみれば当たり前なんだけどね。ツインスーパーチャージャーで最大トルク 79.6kgmをシロモノだから、よく回るっていうより、もはやトルクの塊。アクセル踏んだ瞬間から、スーパーチャージャー独特の「ミョーン」って音とともに、爆発的かつ素直に加速する。まわせば回すほど天井知らずに伸びていく! って感じではないのだ。
ただし速さはハンパじゃなくて、その爆発的加速が延々と続く。木村センセー曰く「俺はアウトバーンで340km/h出したよ!」っていうから相当なもんです。
もうひとつの驚きは、ハンドリングが鷹揚だったこと。これまた考えてみれば当たり前で、626馬力のFRなんだから、そんなに極端にシャープな味付けはできない。もともとSLRマクラーレンは“ウルトラスポーツ”というより“スーパーグランドツアラー”に近い、ってこともあるしね。
ステアリングフィール自体はソリッドかつダイレクトだけど、かなり重めで安定指向だし、ノーズがやたら長いからちょっと「シボレー・コルベット」とか、昔の「マーコス・マンチュラクーペ」かなんかを運転しているようでもある。
だから思ったな、SLRマクラーレン。コイツは“史上最強の直線番長”じゃないかって。もちろん上手い人が乗れば、もっとコーナーで楽しく飛ばせるのかもしれないけど、俺レベルではまっすぐでドカンと踏むだけだし、そうでなくても超ハイパワー。こういう味付けがふさわしいといえるでしょう。
これに対抗するには、1001馬力でオーバー400km/h! お値段が1億6300万円の「ブガッティ・ヴェイロン」を買うしかない!(最近値上げしたってウワサもありますが……)。そんな感じのスゴイ奴でした。あー、面白かった〜!
(文と写真=小沢コージ/2006年4月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。
