アウディA3 1.6(5MT)/2.0FSI(6MT)【海外試乗記】
大人のテイスト 2003.06.17 試乗記 アウディA3 1.6(5MT)/2.0FSI(6MT) プレミアムコンパクトを謳うアウディ「A3」がフルモデルチェンジした。新開発のプラットフォームに、一まわり大きくなったボディを載せた2代目「A3」の国際試乗会は、イタリアはサルディーニャ島で開催された。自動車ジャーナリスト河村康彦が報告する。ボディ拡大のワケ
世界の自動車デザイナーに衝撃を与えた「TT」、ポルシェ911も真っ青のスピード性能の持ち主である「RS6」、さらには元祖“フルアルミ構造”をさらに進化させた、先進のボディを採用した「新型A8」…… 。このところ、何かとエキセントリックなモデルが話題になるアウディ車。が、そうはいっても、台数的に主役となるのは、やはりA3やA4といった、ベーシックなモデルたちだ。そんなアウディの重要な軸足の一台であるA3が、誕生以来初めてのフルモデルチェンジを受けて、ヨーロッパで発売された。
新型A3のエクステリアは、ご覧のように明らかに“キープコンセプト”。フルモデルチェンジを行いながら、従来型とここまで近いイメージを採用するということは、アウディが初代モデルのルックスに、それだけ強い自信を抱いている証だ。
けれどもその実、ボディのサイズは、従来型よりひとまわり以上大きくなった。その目的は「主に後席の居住スペースの拡大」というのが、アウディの公式コメント。一方で全高の数値が縮小しているのは、「アウディらしいエレガントなたたずまいを演出するため」という。
ちなみにこのクルマの基本骨格は、この秋デビューの次期「フォルクスワーゲン・ゴルフ」と共用される。前述のボディの大型化は、そんな“ゴルフV”がらみの事情が、微妙に影響を与えているわけだ。
2BOXカーは卒業
インテリアは、やはり最新のアウディ流。つまり上質さがウリだ。ダッシュボードまわりのデザインに、センターパネル部分を中心に、「TT」のそれと共通するモチーフがちりばめられたのが特徴のひとつ。
さて、注目の後席の、特に足元まわりのスペースは、たしかに従来型から大きく拡大された。ただし、そんな恩恵により浸れるのは、追加設定が予定される5ドアモデルの方だろう。後席の使いやすさが、グッと増すはずだ。
イタリアで開催された国際試乗会に用意されたガソリンモデルは、「日本にはこの2003年秋から導入の予定」(アウディジャパン)の、2リッター直噴の新開発エンジン搭載車と、「導入は未定」(同)という、ベーシックな1.6リッターエンジン搭載車。残念ながら「切れ目のない加速が特長の2ペダルMT」である“DSG”に、3.2リッター241psのV6エンジンを組み合わせた「3.2 V6」は用意されなかった。
また、カタログ上では、アイシンAWが開発した6段AT仕様の設定もあるものの、今回の試乗車はすべてMT仕様。図らずも、ヨーロッパのこのクラスでは、まだまだMTが主流であることを教えられることになった。
走りのテイストは、「ひとまわり大人になった」印象が強い。前出の居住空間の拡大に加え、静粛性の向上や路面凹凸を拾った際のショックのマイルド化が、その感触につながったと思う。一方で、従来型にあった軽快で機敏な動きは、やや後退した。いずれにしてもその走りの雰囲気は、もはや「コンパクトな2BOXカー」のそれからは、明らかに卒業したものになった。
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イメージリーダーが待ち遠しい
アウディの最新エンジンである2リッター直4は、率直なところ低回転域でのトルク感がやや細い。ガソリン直噴エンジンにありがちなウィークポイントを、感じることになった。またダウンシフトの際に、“回転合わせ”をしようとアクセルペダルをあおってみても、レスポンスはシャープとはいえない。このあたりを勘案すると、あるいは今回はテストドライブのかなわなかった、AT仕様とのマッチングに優れるのが、この心臓かもしれない。日本仕様でのテストドライブが楽しみだ。
1.6リッターモデルも、静粛性や路面当たりのマイルド感は、2リッターモデル同様の“大人のテイスト”。ただしこちらのエンジンは、大型化で重量を増したボディに、「AT+エアコン」という日本必須の仕様になった場合、やや荷が重いかも知れない。
いずれにしても、新型A3でスポーティな走りを求めるのであれば、やはりイメージリーダーモデルである、「3.2リッターエンジン+“DSG”」の仕様に目を向けたいところ。もちろん、さらに頂点を極めたいというのであれば、いずれ現れるであろう新型「S3」の動向からも目が離せないだろう。
(文=河村康彦/写真=アウディジャパン/2003年6月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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