メルセデス・ベンツ SLK280(7AT)【ブリーフテスト】
メルセデス・ベンツ SLK280(7AT) 2005.10.12 試乗記 総合評価……★★★★ ……609万円 新型SLKに追加されたエントリーグレード「SLK280」。日本ではもっとも小さい3リッターV6を搭載するモデルは、もっともスポーツマインドに溢れたグレードだという。そのワケは?高まったスポーツマインド
旧型、つまり初代SLKは、お世辞にもメルセデス・ベンツらしい完成度を持っていたとはいえなかった。日本のメディアはそれを正直に伝えきれなかったようだが(自分には旧型の試乗記の依頼はまわってこなかった)、自慢のバリオルーフを開けた瞬間、ハンドリングが激変してしまう特性は、スリーポインテッドスターのプロダクトらしくなかった。一方のパワートレインはいかにもメルセデス的で、事務的な印象に終始した。これはスポーツカーなのではなく、オープンにもなる2シーターの乗用車なんだと、自分は結論づけていた。
メルセデスもこのあたりのことは感じていたのだろう。2代目はまぎれもないメルセデス、まぎれもないスポーツカーになっていた。もうルーフの開け閉めでハンドリングが変わることはない。スーパーチャージャー付き直列4気筒エンジンをやめ、新開発されたV型6気筒はそれまでのシングルカム18バルブからツインカム24バルブにスイッチしたことで、加速は圧倒的に気持ちのいいものに変貌した。
とくに今回乗ったSLK280(3リッター)は、さきに登場していたSLK350(3.5リッター)に比べて排気量が小さい。ボア×ストロークが92.9×86.0mmから88.0×82.1mmと小径ボア&ショートストローク。吹け上がりはきめ細かく軽快になり、アクセルペダルを深く踏む機会が増えたことで、スポーツマインドがさらにアップしているような気がした。また、CクラスやEクラスに感じられる7段AT「7G-トロニック」のシフトショックや、ステアリングを切るときと戻すときの操舵力の違いもない。これらも、ドライビングの気持ち良さをアップさせてくれている。
約600万円という価格は、同じエンジンを積むC280アヴァンギャルドとほとんど差がなかったりする。いずれも自分には手が届かない数字ではあるけれど、どちらをとるかといわれたら、旧型とは逆に、CクラスよりもSLKを選ぶような気がする。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年にデビューした「SLK」は、「Cクラス」をベースに格納式ハードトップ「バリオルーフ」を与えた2座オープン。オープンとクーペを両立する利便性、手頃なサイズや価格が好評を博してヒットした。
7年を経てフルモデルチェンジした新型はシャシーやエンジンを強化し、「このクラスのスポーツカーを凌駕する」という、高い走行性能が謳われる。デザインは、F1マシンや「SLR マクラーレン」を彷彿とさせる、アグレッシブなものとなった。
エアコンの強化や、首まわりを暖めるシート内蔵式ヒーター「エアスカーフ」の装着、バリオルーフの開閉時間を短縮するなど、利便性と快適性にも配慮する。
(グレード概要)
日本に導入されるのは、新開発の3.5リッターV6DOHCを積む「SLK350」(672.0万円)と、AMG製5.5リッターV8を搭載する「SLK55AMG」(959.7万円)の2種類。05年8月、3リッターV6を搭載するエントリーグレード「SLK280」を追加。全3種類が販売される。欧州には1.8リッタースーパーチャージャーを積む「SLK200コンプレッサー」もあるが、導入は見送られた。
SLK280は、ファブリックシートが標準。新機軸の「エアスカーフ」はオプションの本革シート(21.0万円)とセットで用意される。AMGスポーツパッケージは設定されず、10スポークアルミホイールやスポーツサスペンション、バイキセノンヘッドライトなどがセットになった「スポーツパッケージ」が33万6000円で装着できる。
快適装備に不足はなく、DVDナビゲーションシステムや6連奏CDチェンジャーなどを含むオーディオがセットになった「マルチファンクションコントローラー」、左右独立式エアコン、クルーズコントロールなど、至れり尽くせり。ESP をはじめとする電子デバイスも標準装備する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
インパネは他のメルセデスと比べると、センターパネルまわりなどを曲線で描いたエモーショナルな造形。写真でわかるように、丸いシルバーのスイッチが数多く並び、うるさいと感じる人もいるかもしれない。それと、これらのスイッチはただ並んでいるだけで、触れただけでは機能がわかりづらい。安全性の見地からも、ひと工夫ほしいところ。Z型のパーキングブレーキレバーは新型ホンダ・シビックなども採用しているが、スタイルだけでなく、この形状のおかげでセンターコンソールボックスを用意できたというメリットがある。
キャビンは旧型よりは広くなったが、メルセデスとしては依然としてタイト。低いルーフは閉めるとそれなりの圧迫感があるし、開けてもウインドスクリーンの角度が寝ているので頭との距離が近く、シートバックを傾け気味にしたくたくなる。スポーツカーらしい空間と言い換えることもできる。頭上は、ルーフ部分はきちんとトリムされているのだが、リアクォーターはフレームがむき出しで、プレミアムブランドらしからぬ仕上げに思えた。
(前席)……★★★★
パワーシートは前後スライドが不足気味で、身長170?の自分の場合、アクセルペダルを床まで踏み込むと、ひざの裏がクッションの前端と軽く干渉する。こちらの足が短すぎるのか? 座り心地は最近のメルセデスに共通するもので、クッションはペタッとした厚み感のない感触だが、シートバックはセダン系に比べるとタイトな作りで、欧米人ほどガッシリしていない自分でも満足のいくホールド感が得られた。とくに肩まわりのサポート感は心地よい。
SLK350では標準装備だった、ヘッドレストから温風が吹き出す「エアカーテン」は、こちらではレザーシートとのセットオプションになるが、一度体験した人間からいわせてもらえれば、約20万円のエクストラを支払ってもつけたくなる。
(荷室)……★★★
クローズドの状態では、奥行きはかぎられるものの、深さはあり、リッドの開口部も大きくて使いやすい。オープンにしたときも、ルーフを薄く畳むので、想像以上に天地がある。開口部が狭くなるのは構造上しかたがないところだが、2人の旅行用の荷物なら楽に収められるだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
SLK280といいつつ3リッターの排気量を持つV6エンジンは、SLK350が積む3.5リッター以上になめらかで、繊細なメカニカルサウンドを聞かせてくれる。オープンにしてアクセルを踏み込むとフォーンという心地よいエグゾーストサウンドが加わり、3000rpmを越えるとその音がボリュームアップして、スポーツカーっぽい雰囲気をもたらしてくれる。さらに、5000rpmを越えるとコーンという硬質なサウンドに変わり、クライマックスに達したことを教えてくれる。事務的だった旧型のV6とは別物の心地よさだ。パワーやトルクは必要にして十分。むしろSLK350に比べるとアクセルを深く踏み込んで快音を楽しめる機会が多いぶん、スポーツカーらしさは上まわっているような気がした。
7段ATは、マニュアルモードでは多段ゆえのわずらわしさを感じることもあるが、Dレンジで走るかぎり、これまで自分が乗ったCクラスやEクラスのそれとは別物のようなスムーズさで変速を行ってくれた。エンジンの性格に見合った、なめらかな加速感を届けてくれる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ボディの剛性感はオープンカーとしては最高レベルにあり、ルーフを開けた状態でも乗り心地に荒さはみられない。もちろん閉めたほうが剛性感は高まり、サスペンションがきっちりとストロークしてくれるようになって、よりメルセデスらしい、懐の深い乗り心地が得られる。ステアリングは、セダン系のように低速で軽くなることはなく、つねにしっとりした重さを返してくれるので、戻しの重さとのバランスがとれている。また、切ったときに反力が伝わってくるタイプなので、どのぐらい操舵しているかがわかりやすいのも美点だ。
ハンドリングは敏捷ではないものの、動きが素直なので楽しい。ESPを解除すれば、リアを軽く流した後輪駆動スポーツカーならではの楽しさも味わえるが、不安定な姿勢になることはなく、メルセデスらしい落ち着いたマナーに終始する。ルーフを閉じると相対的にフロントがやや重く感じるが、旧型のように操縦性が激変するようなことはなかった。ブレーキは過敏でない代わりに、踏めば踏んだだけジワッと効いてくれて、コントロールしやすい。制動力そのものも強力だった。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2005年9月13日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:3213km
タイヤ:(前)205/55R16(後)225/50R16(いずれも ピレリP7)
オプション装備:本革シート(エアスカーフ付)(21万円)/ETC(2万8350円)
走行状態:市街地(2):高速道路(1):山岳路(7)
テスト距離:384km
使用燃料:50.6リッター
参考燃費:7.6km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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