第214回:ステップワゴンお前もか!?新型「ホンダ・ステップワゴン」試乗
2005.06.14 小沢コージの勢いまかせ!第214回:ステップワゴンお前もか!?新型「ホンダ・ステップワゴン」試乗
■ちょっとどーなのよ?
早速、行ってきました。3代目「ホンダ・ステップワゴン」試乗会。
結構、興味あったんだよね。初代が個人的にはかなり衝撃的だったから。あんなにシャレた“道具っぽい”クルマは国産車じゃ珍しい。マジな話、フランス車っぽいなぁと思ったくらい。
記憶は薄いんだけどさ。たしか初代が出たとき、俺は唯一、カー・オブ・ザ・イヤーでコイツに10点入れたんじゃなかったかしら。ルノー・キャトルとかカングーと同様の“すがすがしい匂い”を感じたんですよ。
ところがどっこい3作目は全然違ってて、最近のホンダ路線、つまり似てはいないけどライフみたいにエアロテイストを取り入れた箱型フォルムに大変貌。
「ちょっとどーなのよ?」とばかり乗ってきました。
■ステップワゴンじゃないみたい
結論から言いましょう。コレはコレでよく出来てます。ただ、昔のステップワゴンとはかなり違う、特にデザインに関してはね。いってみれば、市場の要求に沿いつつ、なおかつ最近のホンダの“低床の法則”にしたがったクルマでありましょうか。
ポイントはわかりやすくて、現行「オデッセイ」「フィット」あたりから光明を見出した“低床フラットフロア”が最大のキモ。つまり、今までより約6センチも床を下げることにより、カタチを低くスポーティにし、重心を下げて運動性能を上げ、乗り降りをしやすくするという、“3つのブレイクスルー”を狙ってるのだ。で、実際にそうなっています。乗り降りのし易さはかなりのもんだよね。全然「どっこいしょ」って乗る感じはなくなったし、オマケにオプション設定されるフローリングの床は、部屋っぽさもさることながら使い勝手もよさそう。ただ、逆に加減速で荷物が滑っちゃうことがあるかも、ね。
なにより驚いたのは走り。足まわりは意外と硬めに締まったもので、ロールのしなさ加減といい、全体のしっかり感といい、まるでステップワゴンじゃないみたいだ。同じく低床の現行オデッセイに乗った時も驚いたけど、見た目を裏切る安定性と大人っぽいステアリングフィールを持つ。ま、オデッセイほどの高級感はないけどね。エンジンは2リッター直4と2.4リッター直4の2種類があるんだけど、2リッターでも十分トルクが出てて扱いやすい。ただ、トランスミッションが2.4リッターの場合、スポーティなマニュアルモードを持つ7段シフト付きCVTと組み合わせられるから、より走りを楽しみたい人にはこっちだよね。
■ナンパになった
やっぱり気になるのはデザインとボディの作りだ。インテリアは外観よりは実質重視。直線基調でスッキリ見やすいのはもちろん、ダッシュボードのフタ付き物入れはステップワゴンらしく使いやすそう。運転席の視点の高さのわりに、ダッシュボードは低くなってるようでボディの見切りと視界はバッチリ。このあたりは「実際に乗るのは奥様」という市場の要求に沿ったカタチだ。そのうえ、“実”ばかりじゃなく樹脂の材質といい、色使いといい、高級にはなったよね。ただ、フローリングの床にしろユニークだけど、初代に通じる潔さみたいのはない。プチ豪華な感じ。
問題は外観よ。やっぱり見ればみるほど、“ナンパになったステップワゴン”という気がする。決してカッコ悪いわけじゃないし、一般的には「スポーティにカッコよくなった」だ。グイっと伸びた鼻もキライじゃない。でも昔の潔さはどうにもないんだよね。
実はこの感情、現行オデッセイが出たときにも味わった感情で、「昔の方がピュアだったなぁ」なーんて思ってしまいました。「ステップワゴンよ、お前もか!」、個人的な感想ではありますが。また、運転席に座ったとき、頭上に圧迫感はないんだけどAピラーが寝て、屋根が下がったわりにシート高を下げなかったこともあって、ムダな頭上空間が減った。合理的っちゃ合理的だが、寂しいといえば寂しい。とはいえ、床を下げたのに、視界確保のために視点を下げ過ぎなかったのは英断だと思う。
![]() |
■“ガンコ”じゃだめなの?
ってなわけでつまりね。5ナンバーサイズとか、合理的なテイストとか、そういうのを残したまま、見事に現代的になっているのだ。映画『いちご白書』(古い!)じゃないけど、社会人になって、急に大人の常識を身に付けた純朴学生とでもいいますか。初代の飾り気のなさに共感した俺としてはちょっと思うトコロもあるけど、2代目ステップワゴンで片側スライドドアに固執し、お客を逃がした面もあるんでしょう。日本ってどうにも、名作を初代に出しても2代目ぐらいまでは持ちこたえるけど、3代目には繋がらないんだよね。
市場の要求だから仕方がないんでしょう。でもやっぱり残念っちゃ残念。今のもよくできてるんだけどさ。“ガンコなステップワゴン”じゃ、やっぱ売れないんですかね。
ちなみに今度の新作はスポーティなデザインと質の高い走りを獲得したこともあって、初代&2代目オデッセイのお客さんからの買い換えも予想されるとか。
クルマビジネスって面白いよね。
(文と写真=小沢コージ/2005年6月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
ロイヤルエンフィールド・クラシック650(6MT)【レビュー】
2025.9.6試乗記空冷2気筒エンジンを搭載した、名門ロイヤルエンフィールドの古くて新しいモーターサイクル「クラシック650」。ブランドのDNAを最も純粋に表現したという一台は、ゆっくり、ゆったり走って楽しい、余裕を持った大人のバイクに仕上がっていた。 -
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。