BMW 735i (6AT)【ブリーフテスト】
BMW 735i (6AT) 2004.09.11 試乗記 ……932万850円 総合評価……★★★ クリス・バングルの斬新なデザイン、「iDrive」の採用で話題を呼んだBMWのフラッグシップ「7シリーズ」。そのエントリーグレード「735i」を、自動車ジャーナリストの河村康彦がテストした。BMW以外の何者でもない
ご存知、BMWのフラッグシップが「7シリーズ」。2003年11月に装着率の高いオプションを標準化するとともに、「iDrive」コントローラーのロジックを一部変更するなどのリファインを経て現在に至る。
「“新世代BMW”の先駆けとなった個性豊かな」……なんて謳い文句はさておき、「なんともアクの強いデザインのエクステリア」は、デビュー当時のままだ。アメリカ、特にカリフォルニア州では、想像以上にその姿を見かけるのには驚くが、一方、生まれ故郷のヨーロッパでは「ルックスにはいまだ抵抗がある」という声もすくなくないと聞く。
だから、日本では昨年のマイナーチェンジを機に、BMWジャパンがオプションアイテムだった「ホワイトウインカーレンズ」を標準化したのは、“さもありなん”の印象だ。特にフロントマスクでは、ヘッドランプ上をまゆ毛のように水平に伸びるウインカーレンズが、イエローからホワイト(クリア)になったおかげで、これまで顕著だった「困ったちゃん顔」(!?)の印象がかなり薄れた。
トップ・オブ・サルーンであろうが何だろうが、“ドライバーズシートこそ特等席”がBMW車の身上。7シリーズのキャラクターは、タイヤ&ホイールサイズを目にすれば、誰もが納得することになろう。与えられるシューズは、8J幅のアロイホイールに245/50R18サイズが基本。10mmのローダウンサスペンションやアクティブロールスタビライザーなどをセット化した「ダイナミック・スポーツ・パッケージ」をオプション選択すると、フロントが9Jホイールに245/45の19インチ、リアは10Jホイールに274/45の19インチと、さらに過激さを増す。
ラクシャリーなモデルだが、7シリーズはやはり、BMW以外の何者でもない。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年9月のフランクフルトショーでお披露目された、BMWの旗艦。わが国へは、翌2002年4月からデリバリーが開始された。新型7シリーズは、斬新なデザイン、大排気量エンジン、6段オートマチックトランスミッション、「iDrive」と名付けられた新しい操作系インターフェースなどが特徴である。
2003年11月にマイナーチェンジが施され、ウインカーレンズをクリアタイプにするなど、装備を一部変更した。ラインナップは、3.6リッターの「735i」(887万2500円)、4.4リッターの「745i」(1044万7500円)、745iのホイールベースを140mm延長した「745Li」(1134万円)、6リッターV12気筒を積む「760Li」(1659万円)の4種類。
新開発の3.6リッター&4.4リッターV8ユニットには、吸排気バルブの可変バルブタイミング機構「ダブルVANOS」、吸気バルブのリフト量によって混合気の流入量を機械的にコントロールする「バルブトロニック」などの先進技術を投入。加えて、インテイクマニフォルドの長さも可変制御することで、燃費を約14%削減しながら、最高出力を約14%向上させたという。
電子装備が数多く採用されたことも特徴。世界初を謳う6段ATはシフトバイワイヤ方式。ステアリングコラム右のセレクターレバーか、ステアリングホイール上の「ステップトロニック」スイッチでコントロールする。
「iDrive」は、ナビゲーションやエアコン、オーディオなど運転以外の操作を、センターコンソールに配置されたダイアル式コントローラーで行うインターフェース。エンジン始動は、ブロック型キーを差込み、スターターボタンを押し、パーキングブレーキはステアリング左端のボタンを押してリリースするなど、新しい操作方法を採用したのもポイントである。
(グレード概要)
3.6リッターV8(272ps)を積む7シリーズのボトムレンジ。シート表皮とドアライニングはクロス、CDオートチェンジャーがオプション、サンルーフが設定されないなど、一部装備は簡略化される。とはいえ、そこはフラッグシップ。快適・安全装備は他のグレードと同様に豊富だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
モニター画面を中央部に配して、そのバイザーの盛り上がりをメーター用のバイザーの盛り上がりと2連続させる……というのが7シリーズ以降「5シリーズ」や「6シリーズ」に続く最新BMWアッパークラス車のダッシュボードの基本的造形。ウッドパネルを大面積で使いスイッチ数を極力抑えたそれは、高級車のインパネとしてはシンプルなデザイン。しかし、各部の質感はライバルであるメルセデスを確実に凌ぐ「さすが」のレベル。7シリーズが初めて取り入れたiDriveの目的は「高級車ゆえに増え過ぎたスイッチ類をいかに減らすかにあった」とのこと。が、しかしそれもやり過ぎると、かえって使い難いというのを、初期の現行7シリーズが教えてくれた。センターコンソール上に置かれたハプティック(触覚)機能付きコントローラーの脇に、ワンタッチでメインメニュー画面に戻れるボタンと事前設定でユーザーの好みの機能を呼び出すことのできるボタンの2つが新設されたのは、だから必然であったといえよう。このモデルでもまだ簡単操作とはいい難いが、説明書に目を通さないと本当に「何が何だかわからない」ものであった初期モデルからすれば、格段の進歩だ。
(前席)……★★★★
7シリーズのフロントシートに収まると、「さすがは高級車」と誰もが感じるはず。たっぷりとした余裕のサイズと、滑りにくく身体にぴたりとくるフィット感の高さを両立。さらに心地よい面圧を実現させるなど、いかにもおカネのかかったシートである。残念なのはパワーシートの調整方法が難解なことで、まずは操作したい部位を絵表示付きのボタンで選択してからダイアルを操作するという独特の手順が必要。しかも、それらのスイッチは何とセンターコンソールの側面に置かれる。“独創性”が嵩じて“独りよがり”にまで行ってしまうのが、このところのBMWの難点だ(!?)
(後席)……★★★★★
ドライバーズシートが特等席、のBMW車ではあるが、さすがに7シリーズともなるとスペース的にもシートのつくり的にも、ショファードリブンとしてのポテンシャル十二分。745iのそれをおよそ150万円も下まわるリーズナブルな価格(?)が売り物の735iの場合、ヘッドレスト以外のパワー調整機能や内蔵ヒーターはオプション扱い。が、長時間のドライブでもリラックスできる“本体”のデキ栄えにもちろん差はない。
(荷室)……★★★
7シリーズのトランクルームは、「大体外観から察することのできる程度のボリューム」と表現すればよいだろうか。決して驚くほどに広大ではないが、かといってもちろん狭いというわけでもない。特に、宅配便システムの完備した日本では、この空間で物足りないと文句をつけたくなるシーンはまず考えられない。7シリーズが先鞭をつけた電動式のオートクロージャーは、735iの場合にはオプション扱いとなる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
745iに対して50kgマイナスの1900kgの車両重量に、最高出力272psの3.6リッターV8エンジン+6段ATの組み合わせは、飛びきり強力とまではいえないまでも、十分スポーティ。745iに比べれば全般に多少高めのエンジン回転数を常用することになるが、それでも静粛性に大きなハンディキャップを感じないのは、6段ATが巧みな変速を行って効率よくパワーを引き出してくれるから。ただし、BMWらしくマニュアル操作を試みようとステアリングホイール表裏にあるシフトスイッチに指を伸ばすと、これがひどく使いづらい。本来はシフトダウン用の表側スイッチを親指、アップ用の裏側スイッチを中指で操作するレイアウトであろうが、まず一般的な日本人にとっては両者のスパンが広過ぎて「親指と“小指”」といった操作を強いられることになってしまうからだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
果たしてどれほどの7シリーズユーザーがその領域を使った走りを知る機会があるかはわからないが、このクルマもシート上に重ねた雑誌がスッと動く程度の横Gを与えながら走ると、何とも心地よいドライビングを味わわせてくれる。全長が5mを超え全幅も1900mm。そして重量が1900kgに達するLLサイズ級ボディの持ち主でありながら、そんなペースで走ると、もっとグッと小さくて軽いクルマであるような錯覚をドライバーはおぼえる。そんな“人車一体感”の高さは、たとえデータ上で同等運動性能を達成させたとしても、たとえばトヨタの「クラウン」などには絶対にありえないテイスト。このあたりが、BMW車の真骨頂ということになる。
乗り味は、ハイスピードクルージングでの安定性とひきかえに、やはり50-60km/h程度までのスピードでは、路面凹凸を拾って多少コツコツとくる。このあたりにまだリファインの余地ありか。
(写真=清水 健太/2004年9月)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2004年2月20日-2月26日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)245/50R18(後)同じ
オプション装備:電動ガラスサンルーフ(チルト&スライド)(17万8500円)/ISO-FIXチャイルドシート・アタッチメント(リア/7350円)/ダイナミック・ドライブ・パッケージ(ダイナミック・ドライブ/アダプティブ・ヘッドライト/26万2500円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(7):高速道路(3)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。































