ホンダ・エリシオンVX(5AT)【ブリーフテスト】
ホンダ・エリシオンVX(5AT) 2004.07.09 試乗記 ……427万3500円 総合評価……★★★★ 「トヨタ・アルファード」「日産エルグランド」に対抗する、ホンダの最上級ミニバン「エリシオン」。自動車ジャーナリストの笹目二朗は、ハードウェア性能を高く評価するも……。
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ちょっとチグハグだが……
「ラグレイト」に(事実上)代わる豪華ミニバンとして就航。低い車体をウリにする新型「オデッセイ」に対して、やはりミニバンはミニバンらしく、背の高さもステイタスであると主張する。筆者としても、ゆったりと寛ぐならばこちらの方が正調と思われる。
しかしながら、操安性担当者が“ゆったり”ではスポーティな感覚が削がれると勘違いしたらしく、やや落ち着きのない走りが、このクルマの性格をチグハグなものにしている。それともホンダを選ぶユーザーは、ミニバンといえどもドライバーズシートこそ最優先と考えているのだろうか。
とはいえ、ハードウェアはよくできており、特にボディの剛性感は十分。ガシッと強固で内装などの細部のつくり込みにも高級感があり、微振動に対しても低級音の発生など皆無なのはリッパだ。最近の国産のこのクラスは、外観の迫力を重視したデザインが主流だが、ギラギラしたグリルなど、攻撃的な過剰装飾を廃したおとなしさが新鮮。営業成績に与える影響が興味深い。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2004年5月13日に発売された、「ラグレイト」の後を継ぐホンダの最上級ミニバン。全長×全幅×全高=4840×1830×1790mm(FF)、ホイールベース=2900mmの低床を謳うボディに、3列8人乗りシートを載せる。
エンジンは2種類。「インスパイア」譲りの3リッターV6(250ps/6000rpm、31.5kgm/5000rpm)は、走行状況に応じて6気筒の半分を休止させて燃費を向上させる「可変シリンダーシステム」付き。もう一方は、オデッセイと同型の2.4リッター直4(160ps/5500rpm、22.2kgm/4500rpm)である。トランスミッションは5段オートマチック。駆動方式は、FFに加え、通常はほぼFF状態で走り、状況に応じて後輪にトルクを配分するリアルタイム4WDを設定する。
装備は、ミリ派レーダーを使ったクルーズコントロール「IHCC(インテリジェント・ハイウェイ・クルーズコントロール)」、リアカメラと音声認識機能が付いた8インチモニター+ハードディスク(HDD)ナビゲーションを用意。安全装備は、旋回時にヘッドランプの光を進行方向に向ける「AFS(アダプティブ・フロントライティング・システム)」、車両の挙動を安定させる「VSA」や、ブレーキアシスト、EBD付きABS、ミリ波レーダーにより衝突の危険を感知するとブレーキやシートベルト制御で危険に対応する「追突軽減ブレーキ+E-プリテンショナー」など、ホンダ自慢の装備が充実する。
(グレード概要)
グレード構成は、2.4リッターモデルが下から「M」「G」「X」、3リッターは「VG」「VX」「VZ」の3種類ずつ。テスト車は、3リッターの中核モデルである。
3リッターモデルは、ベーシックグレードのVGでも、Honda HDDナビゲーションシステム(レスオプションはマイナス32万9700円)やクルーズコントロールを標準装着。VXはこれに加えて、Hondaスマートカードキーシステム、運転席8ウェイパワーシートなどが備わる。ステアリングホイールとシフトレバーがレザー&木目調のコンビ、リアドア&リアサイドパネルが木目調と、インテリアにも差別化が図られる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
この手のものは“オモチャ”っぽくなりがちだが、ここまでやればご立派。立体映像のメーターパネルは高級感も備わっているし見るのが楽しい。インダッシュのナビゲーション画面も見やすい位置にある。空調オーディオ操作関連も、今風でありながらウォークスルーの邪魔にならない配慮も十分だ。
インパネシフトの便利さは他種で実証済みだが、操作力のすくなさや頻度を考え、ここにもうひと工夫のアイディアが欲しい。
(前席)……★★★★
豪華版のシートはサイズ、形状、座り心地それぞれ良好で、調整機構も完備している。ステアリングにテレスコピック調整も欲しいところ。太いピラーに安心感があり、三角小窓は視界確保に有効である。
サイドブレーキの2度踏みリリース方式は要改善。補助ブレーキとして反復使用できないし、走行中に誤って左足などで踏んでしまったときには、停止しないと解除できない。
(2列目)……★★★
ちょっと前後長が足りないがサイズ形状ともまずまず。豊富な前後スライド量が特徴だ。座面を跳ね上げて左右をずらせば、3列目へ室内移動もできる。乗り心地が改善されれば、助手席より快適かもしれない。現状では上下微振動が気になり、走行中にメモをとるのに苦労した。
両側スライドドアだがガラスは上下可動式、オートドアは作動がやや緩慢ながらお年寄りには大変便利である。前席背後のハンガーフックなど、機能的なアイテムも気が利いている。
(3列目)……★★★
前後スライド量も豊富、天井も高く空間的な居住性は良好。コーナーウィンドウがすこしでも開くのは息苦しさを救う。硬く跳ね気味な乗り心地や、ロードノイズが多少こもる点では“三等席”だが、窮屈ではないからそれほど疎外感はない。高いシート位置は外の見晴らしもよい。
(荷室)……★★★
3列目シートを後部まで一杯に下げてしまうと、それほどの空間は残らない。積み荷に応じて適宜広さを確保して使う、ということだろう。テールゲートは雨の時に屋根になる角度で便利だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
3リッターV6は2トン弱(1920kg)の大柄なボディを余裕で運ぶ。インスパイアで実績のある可変気筒エンジン(6気筒と3気筒)の作動は気がつかないほどスムーズで、メーターパネルの「ECO」ランプが点灯するのをを見なければわからない。燃費への貢献度は不明ながら、今回のテストでは暴風雨のなか、箱根を往復した結果は7.3km/リッターだった。5ATは遅滞ない加減速とスムーズな走行を見せる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
スムーズな作動としっとりした操舵感を持ちラック&ピニオン式パワーステアリングとしては上級のフィール。応答性も良好で、絶えず微舵角を与え続けるドライバーにかかると、後部座席ではやや横Gの発生が不快なほどだ。
ただ、直進性はあまりよくない。乗り心地はおおむねフラットで快適な部類に入るが、硬めというよりアーム長が短いクルマ特有の減衰感で、ヒョコヒョコした短い周期で反復し落ち着きに欠ける。もっとゆったりした乗り味が欲しい。
(写真=峰昌宏/2004年7月)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2004年6月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:3316km
タイヤ:(前)215/60R17 96H/(後)同じ
オプション装備:プレミアムサウンドシステム(アキュリーフ)(10万5000円)/パワースライドドア(リア右側)(6万3000円)/1列目シート用i-サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステム(11万5500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:285.4km
使用燃料:39.0リッター
参考燃費:7.3km/リッター

笹目 二朗
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