ジャガーXタイプエステート3.0スポーツ(5MT)【海外試乗記】
日本仕様を待ちながら 2004.05.01 試乗記 ジャガーXタイプエステート3.0スポーツ(5MT) サルーンのBピラーから後ろをつくりなおした、エステートボディを纏った「ジャガーXタイプ」。「次のマイカーにどうか」との思いを抱きつつ、『webCG』エグゼクティブディレクターの大川 悠が、フランス・アンシーで行われたプレス試乗会に参加した。 拡大 |
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大きな期待とともにフランスへ
プレミアムコンパクトのワゴンが欲しい。
最近、いつも自分のクルマ選びばかり語っているようで恥ずかしいのだが、反面、一見冷徹で実は他人事ですませている、いわば義務的、商売的インプレッションより、人によってはかえって理解しやすいのではないか、と言い訳しながら続けている。
還暦が近くなり、そろそろ一線を退いて、残り少ない人生を一緒に過ごすには、中型サイズのワゴンか、荷室容量が比較的大きな普通のセダンで、長く使えるクルマがいいと思っている。
ここでは具体名を出さないが、ある程度候補が絞られたときに、意外や伏兵が出てきた。「ジャガーXタイプ」のエステートがそれだ。
Xタイプのサルーンは、『CAR GRAPHIC』誌の長期リポート車として、もう3年近く乗っているから、裏も表も大体は理解している。初期モデルはトラブルはともかく、リファインメントに欠けたが、最近、特に2004年モデルからは格段によくなっていることは、何台か実車に乗って知っている。
しかも細かいトラブル云々より、“ジャガーネス”をあの値段でうまく表現していることに感心しているし、2.5以上はAWDだからとても心強い。何を言いたいかというと、普段、不平や不満を言いながら、実は内心でとても好きなクルマがXタイプなのだ。
で、それのエステートである。これまで候補に考えていたチュートニックのワゴンもいいけれど、これは何とも抗しがたい魅力がある。というわけで、まだ雪の残るフランス・アルプスへの試乗会へ、大きな期待とともに参加した。
ライフスタイル商品そのもの
プレゼンテーションではいろいろなことを聞かされる。もちろん売る側の論理に即したもので、意外と買う側の気持ちは入っていない。プレミアムコンパクトのワゴンが、従来より多少若い世代に「自己表現の手段」として増える(という予測)などは、リポーターにはどうでもいい、と感じられた。どんな世代でも、どのようなライフスタイルでも、クルマとの波長が合えばそれでいいからだ。
とはいえ、このクラスのクルマは、一方ではSUVやクロス、ミニバンに取られたマーケットを、いわゆるオーセンティック派が巻き返しに出ようとして開発されたものである。そういう観点で、いま、ジャガーが最廉価のシリーズで、古くからエスタブリッシュされた「エステート」「ワゴン」「シューティングブレーク」……なんと呼んでもいいけれど、古典的ジャンルを付け加えたのは選択としては正しい。
手垢が付いた「ライフスタイル商品としてのクルマ」という言葉を敢えて使うなら、イギリスの中流階級のワゴンなんて、まさにスノビッシュな垢にまみれた、ライフスタイル商品そのものだからだ。
実用性は高い
機械的説明はあまりいらない。Bピラーから後半のボディがつくりかえられている。一方、デザイン論は面白い。
2年近く前に出まわったジャガーエステートのスクープ写真は、もっとシャープでスポーティ、ちょっとホンダの「アコードワゴン」風だった。それが昨2003年秋のフランクフルトショーで公開されたXタイプエステートは、多少控えめ、悪くいえば個性的ではなかったので、ちょっと失望した。
今回ジャガーのデザイナーと短時間話したのだけれど、彼はスクープ案の存在は認めつつ、「ともかくジャガーに相応しいエレガンスを重視して、スポーティネスは我慢した。それ以上に積載力を求められたから、デザイン的冒険はそれほどできなかった。でも、サイドラインの通し方なんて、ジャガーの優美さを出していると思う」と、懸命に答えた。
若い彼をこれ以上責める(?)わけにはいかないから、「でも僕は、ジャガーは多少実用性を捨てて欲しかったのです」とだけ言って、握手した。ということは、個人的には依然としてすこし残念である。
ただ、彼らの名誉のためにいうなら、荷室のつくりはとてもいい。私自身、何台かワゴンを使っているが、この手のクルマは、細かい配慮で使い勝手がすごく変わる。その点ジャガーはずいぶん考えている。同じフォードグループの、ランドローバーからもボルボからもフォードからも学んだのだろう。
いいのはリアシートの折り畳みに力がいらないこと。あるいは面倒じゃないこと。そしてリアガラスとテールゲートが双方開くことなど。ついでにいうなら、ラゲッジルームそのもののつくりもきれいだ。ただし剛性のために、シルと床の間に段差があるのが惜しい。
ジャガーの繊細さ
Xタイプエステートのシャシー、ドライブトレインといった機関部は、サルーンのものを受け継いでいる。サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンク式。ホイールベース2710mmは、いうまでもなくサルーンと変わらない。
エンジンは、2.1リッター直4、2.5と3リッターのV6、そして2リッターのディーゼルがラインナップされる。駆動方式は、ガソリンV6モデルがAWDこと4WD、ほかはFFとなる。
ガソリン車のトランスミッションには5ATと5MTが用意されるが、今回のテスト車は、3リッターV6+5MTという、日本市場と馴染みのない組み合わせだった。
走りに関しては問題なかった。より正しく言うなら、04モデルからの格段によくなったサルーンの美質を、そのまま受け継いでいる。具体的には、ボディ剛性、洗練性、ブレーキ感覚、各種の異音対策などで、もともと素性のいいステアリングフィールや、望むときだけ介在する4WDのよさはそのままだ。
試乗中に休息したとき、若いプレス仲間がこう語った。「ぼくには、どうしてジャガーがいいのかわからない。ステアリングの応答性はやや鈍いし、ブレーキも甘く感じる……」。
その言葉はとても理解できる。もっとも、だからこそ繊細な感覚が要求されるともいえるわけで、だからジャガーに長く乗っていると、上品にリラックスしながらでも、それなりにいいペースで流すことができるようになる。もしかしたら、あまり若いときは、ジャガーに乗らない方がいいのかもしれない。
対向車をかわすのも難しいほどの山道や、まだ圧雪が残っているスキー場など、様々な場面で乗ったXエステートに、とても惹かれた。もうすこしつくり慣れると、ボディ各部のガタや、乗り心地の個体差(コンチネンタルのオールシーズンタイヤは、基本的にとてもいいが)は改善されるだろう。JATCOの5段ATも年々プログラムがよくなっている。
「来年ぐらい、本当に買ってもいいかな……」。内心そう思いながら、秋に来る日本仕様を待っている。
(文=webCG大川 悠/写真=ジャガージャパン/2004年5月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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