ボルボXC90 2.5T(5AT)【試乗記】
「走破」は似合わない 2004.02.14 試乗記 ボルボXC90 2.5T(5AT) ……674.0万円 ボルボ初となる本格SUV「XC90」。その雪上での実力を試すフィールドに選ばれたのは北海道旭川。プレス向けウインターテストに、webCG 本諏訪が参加した。留萌へ!
旭川空港に降り立ったのは夜8時過ぎ。空港前に出迎えるは「マイナス8度」と表示された温度計と雪だるま。ここが今回のボルボXC90プレス試乗会の舞台となる。
2003年5月、日本発表直後に同じく北海道は千歳で開かれた試乗会では、初夏の気候のなか、ロングドライブを楽しんだ。今回は真冬の北海道。北米マーケットをニラんで作られたとはいえ、生まれは北欧。ドイツより北に位置するメーカーが作るクルマは、雪の上でどんな顔を見せるのか、以前から興味があった。
ボルボXC90は、アメリカで盛り上がるSUV人気に乗り遅れまいと、2002年の秋にリリースした同社初の本格SUV。いわば満を持して“後出し”した、「安全」で「快適」なプレミアムSUVである。わが国では、2003年の登録台数では、「BMW X5」におよばないものの、期途中に発売されたのにもかかわらず、メルセデスベンツMクラスや、アウディ・オールロードクワトロを上まわる、947台を達成した。
日本市場には内装を簡素化した「XC90」を含めた3種がラインナップする。旭川に用意された試乗車は、2.5リッターライトプレッシャーターボ(209ps)の「2.5T」と、トップグレードとなる3リッターツインターボ(272ps)の「T-6」。
売り上げのほぼ半分を占めるというメイングレード「2.5T」を主に試乗した。タイヤはノーマルより1インチアップとなる、235/65R17サイズのブリヂストン・ブリザックDM-03スタッドレスを装着する。
ふぶく雪のなか向かったホテルで一夜を明かすと、翌朝、晴れた空の下、XC90 2.5Tのステアリングホイールを握る。ヘッドレストが大きく前に出た、リポーター好みの形状をしたシートに座り、さっそくナビゲーションシステムの目的地を留萌(るもい)市に設定し、走り出した。
見ていても安心
ボルボのアイデンティティと謳われる、ショルダーの膨らみをドアミラー越しに見つつ、高速道路を使って撮影ポイントに移動する。
新雪の積もる道路を撮影場所に選んだ。50cm近い雪が積もり、除雪もされていないところにクルマを進入させた。
XC90のアプローチアングル28度というポテンシャルに加え、メンバーに直接取り付けられたフロントスキッドプレートは、効果抜群。眼前の雪をモリモリと押しのけつつ、クルマは進む。これがなければフロントバンパーに相当なダメージを受けそうだ。
ボディから張り出す樹脂のバンパーも、雪道への突入を躊躇させない。試乗車にオプションで装着された、オイルパンをカバーする「アンダープロテクションプレート」、リアバンパー下の「リアスキッドプレート」も、このような状況では、さらに安心できるアイテムだ。
「外から見ていても安心ですね。スキッドプレートが利いてます。フォルクスワーゲン・トゥアレグとかベンツのMLとかだと、ボディを傷つけちゃいそうで怖いですけど」と、カメラマン氏。
寒さに耐えながら撮影を終わると、急いで車内に駆け込む。室内は快適だ。3列目シートにまで専用吹き出し口を持つから、定員いっぱいの7人乗っても、寒さに凍える人は出ないハズ。シートヒーターで暖かい運転席に座り、次の目的地に向かう。テスト車は、305W 11スピーカーのプレミアムサウンド・オーディオシステムを積んでいた。ジマンのオーディオをオンにすると、ロクセットの『Sleeping In My Car』が車内に流れ出した。
雪をあまり感じずに
緩やかなカーブが続く、試乗に最適な場所を発見した。3回ほど往復し、雪道でのコーナリングを試す。
ステアリングを大きく切る交差点などでは、アクセルオン時にあやしい挙動を見せていたが、山道などでのコーナリングは至って穏やか。タイヤが横滑りすると、エンジントルクの制御に加え、各輪のブレーキ制御を行うスピン抑制デバイス「DSTC(ダイナミックスタビリティアンドトラクションコントロールシステム)」がスムーズに介入する。XC90はたちまち進行方向を修正させられる。
次にDSTCをオフにして走行。それでもトラクションコントロールは常に作動し、駆動力を最適に配分。電子制御多板クラッチたるハルデックスユニットを用いた4WDシステムのおかげで、DSTCが無いと走れないということはなかった。もちろん、無理をした運転ではこの限りではない。
53:47という前後の重量配分も利いているのだろう。雪道の下り坂でも不安を感じさせない。また仮にリアが出るようなことがあっても、前述のDSTCが横滑りを抑えてくれる。タイヤの性能によるところもあるが、雪上をあまり感じずにドライブすることができた。
“安心”なクルマ
長いホイールベースと剛性感の高いボディがもたらす車両の安定性。雪道に立ち向かうための数々の装備。「高い走行性能」を求めたというより、「安全走行」を目指した、つまりライントレースより、転倒防止に重点を置いたDSTCなど、ウインターテストでXC90が見せたのは、雪上走行での“安心感”だった。
このSUVに「走破」という言葉は似合わない、と思った。「悪路を積極的に攻める」のではなく、「悪路に遭遇したときに、危なげなく対応できる」という開発姿勢を感じる。“安心感”を持つドライバーは、とまどうことなくそれを乗り越えるはずだから、とボルボの開発陣は言いたいのだろう。豊かな自然を持つ北欧生まれであるがゆえか。
(文=webCG 本諏訪/写真=清水健太/2004年2月)

本諏訪 裕幸
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
日産キックスG(FF)/キックスX e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.7.13 日産のコンパクトSUV「キックス」が、いよいよフルモデルチェンジ! デザインもパワートレインもプラットフォームも刷新された新型は、見ても乗っても長足の進化が感じられる力作となっていた。日産の再生を担う重要モデルの仕上がりを報告する。
-
BYDシーライオン6 AWD(4WD)【試乗記】 2026.7.11 BYDのプラグインハイブリッド車「シーライオン6」の4WDモデルが登場。先に登場したFFモデルにリアモーターを追加したという説明は間違いではないが、実はエンジンが違うばかりか、加速力にも別物といえるくらいの差がつけられている。300km余りをドライブした印象をリポートする。
-
NEW
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
NEW
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。 -
第970回:クルマの背中に浮かぶ文字たち――空いた字間が語るもの
2026.7.16マッキナ あらモーダ!アナタは自動車のボディー背面に施されたメーカー/ブランドのロゴについて考えたことがあるだろうか? 字間を詰めたり、広げたり、時代によって変わるそのトレンドと、その背景にあるメーカーの思惑を、自動車史にも精通する大矢アキオが語る。

































