フォルクスワーゲン・パサートワゴン(4AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・パサートワゴン(4AT) 2003.08.15 試乗記 ……322.5万円 総合評価……★★★★ 廉価なパサートワゴンの登場に、ショックを受けるゴルフワゴンのオーナー……。モータージャーナリストの生方 聡も、そのひとりだった。試乗しての感想はいかに?まさにお買い得
2002年4月、このクルマが発売されたとき、現行型「ゴルフワゴン」オーナーだった私はショックを受けた。約20万円差で、ひとクラス上のパサートワゴンが買えるようになったのである。基本的に同じ2リッター直4を搭載しながら、余裕のリアシートとラゲッジスペース、充実した装備……。ゴルフの割高感、裏を返せば、パサートの割安感を実感した瞬間だった。
さらにショックは続く。ゴルフの2リッターエンジンは、より大きなボディのパサートワゴンには力不足と想像していた。しかし実際に運転してみると、見事に予想が裏切られたからだ。その内容は後ほど詳しく報告するが、このパサートワゴンはまさにお買い得の1台。ちょっと大きめのワゴンをお探しの方は、ぜひ候補に加えてほしい。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年8月にセダンが登場した4代目パサート(VWいうところの5代目。シリーズIIIのフェイスリフトを一代と数えるため)。アウディA4用をストレッチしたフロアパネルを用いるフォルクスワーゲンの旗艦である。97年に、ワゴンと4WDモデル「4モーション」が加わった。2000年10月のパリサロンでビッグマイナーチェンジを受け、ドアとルーフ以外のボディパネルを一新。2001年10月30日から日本に導入されたニューバージョンは、2.3リッターV5(FF)と、2.8リッターV6(4WD、FFは受注生産)がラインナップされた。
その後、エントリーグレードの2リッター版「パサートワゴン」や、斬新なシリンダーレイアウトで注目された4リッターW8(275ps、37.7kgm)を積む「パサートワゴンW8 4モーション」を追加。近年、フルラインメーカーへ転換を図りつつあり、高級車市場に食い込みたいVWにとって、「ゴルフより上」に位置するパサートは、戦略的に重要な車種である。
(グレード概要)
2002年4月、エントリーモデルとして追加されたのが、2リッター直4を積む「パサートワゴン」。シート生地がクロスとなるなど、上級グレードとの差別化は図られるが、フロント&サイド&カーテンエアバッグやEPSなど、安全装備は同等の内容。価格は299.0万円と、リーズナブルだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ドイツ車らしい、シンプルなインパネをもつパサート。華やかさはないが、飽きのこないデザインが魅力である。メーターパネルは大型で見やすいレブカウンターと速度計を左右に配し、中央上には小さな水温計と燃料計がある。いずれもクロームのリングが施され、高級感を高める。
中央の液晶ディスプレイは、シフトポジションやドライビングコンピューターのデータなどを表示するほか、オプションで装着される純正カーナビゲーション「MMS(マルチメディアステーション)」にも対応。ルート案内時には進行方向を示す矢印などが表示されるため、少ない視線移動で案内を確認できるのがうれしい。
(前席)……★★★
パサートのベーシックモデルに装着されるのは、快適性重視のゆったりしたシート。ベロア地のやわらかい表皮のおかげもあり、ソフトな座り心地を示す。2時間ほど座り続けたが、疲れを感じることはなかった。ただ、シートの表面はホコリが目立ち、なんとなく安っぽく見えるのが残念だ。シート調整はすべて手動。ステアリングは、チルト(上下)だけでなく、テレスコピック(前後)の調整もついているので、快適なドライビングポジションをとることができる。
(後席)……★★★
前席同様に座り心地はソフトで、シートクッションは沈み込みが大きい印象だ。乗員のためのスペースは余裕があり、身長167cmの私が前席のポジション調整をしたのち、後席に座ると、膝に前には拳3個分、頭上にも2個分の空間が確保される。足元も、前席の下にスペースがあるので窮屈な感じはない。反面、前席のシートバックやヘッドレストが高い位置にあるので、後席からの視界はやや開放感に欠ける。
(荷室)……★★★★
パサートワゴンの荷室内は凹凸が少なく、奥行き、幅、高さとも十分なサイズが確保されている。リヤシートを起こした状態でも約110cmある奥行きは、シートを倒せば170cmまで拡大。もちろん荷室のフロアはフラットである。
シートはダブルフォールディングタイプだが、倒す際にヘッドレストを取り外さなくてはならず、また、シートクッションを戻すときにもシートベルトのキャッチ部分が取り出しにくかったりと、操作性では改良すべきところもある。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
ノーズに縦置きされるエンジンは、基本的にはゴルフにも搭載される2リッター直列4気筒SOHC。最高出力116ps/5400rpm、最大トルク17.5kgm/3500rpmのスペックは、約1.5トンの車両重量に対して力不足に思えるかもしれない。
しかし、実際に運転してみると、むしろ活発なほどの印象である。低回転から豊かなトルクを発生するこのエンジンは、低めのギア比にも助けられ、街なかでも高速道路でも優れたレスポンスを見せる。高回転での伸びこそないが、実用性は十分だ。唯一の弱点は、エンジンのノイズが大きいこと。100km/h巡航時の回転数は4速で3000rpmを超え、キャビンは決して静かではなかった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
前:4リンク、後:トーションビームアクスルのサスペンションに、205/55R16のミシュラン「PILOT HX」が組み合わせられたこのクルマは、一般道ではソフトで快適な乗り心地。そのため、高速道路での乗り心地を心配したのだが、予想に反して高速でもその快適さを維持しながら、フラットで落ち着いた挙動を見せてくれた。ハーシュネスの遮断も良好。高速道路での直進安定性にも優れる。それでいて、素直なステアリングフィールとノーズの軽い印象は、コンパクトなエンジンを縦置きするこのクルマならではのよさといえるだろう。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年7月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:7512km
タイヤ:(前)205/55ZR16 91W(後)同じ(いずれもミシュラン パイロット HX)
オプション装備:マルチメディアステーション(23.5万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:302.3km
使用燃料:35.6リッター
参考燃費:8.5km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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