第59回:日産「プレサージュ」試乗で感じた 「ミニバンってこうあるべきじゃないの?」
2003.08.14 小沢コージの勢いまかせ!第59回:日産「プレサージュ」試乗で感じた 「ミニバンってこうあるべきじゃないの?」
|
■どうなるのよ? ミニバン界
こないだ北海道まで、日産の新型ミニバン「プレサージュ」を試乗に行ってまいりました。プレサージュって正直、それほどブランドイメージ残ってない。写真で見た時もインパクトなかったんで、「へぇ、どんなもんかぁ」って程度で乗ってきたんだけど、これが秀逸。俺的には満足。久々に「ミニバンとはなんぞや?」を考えてしまいました。
っていうか元々、「今後のミニバン界、どうなるのよ?」って思ってたの。まず第一に「オデッセイの迷走(!?)」。っていうかまだ発表されてないし、乗っても触ってもないからハッキリとはいえないんだけど、もうすぐ出るはずの次期型オデッセイのウワサをかえりみて。
というのもね。なんか全高1550mm以下の、立体駐車場に入れるサイズになるというじゃない。ほとんど異様な低さだよね。いまのスタイル優先、走り優先の「ストリーム」やトヨタ「ウィッシュ」でさえ1600mmだから、もっとペッチャンコ。聞けば「昔のアコードエアロデッキの再来」という話もある。
それってまさに、格好だけの“陸サーファー”ならぬ“陸ミニバン”!? つまり「実用性が最優先」だったはずのミニバンが、実は「スタイル最優先」になったという逆転現象が起こっている!?
■迷走するミニバン
その昔、見てくれだけの狭くてスポーティなスタイリッシュクーペ「プレリュード」でヒトヤマ当てたホンダとしては、その現象を「ミニバン時代でもう一度!」ってことなのかもしれない。だけど、果たして「世の中それでいいのか?」と思っていたのだ。
だってさ。プレリュードって確かにカッコよかったけど、その後、なにも残らなかったでしょう?
俺個人としては、あれもブームにならなければ「それなりにアリ」のクルマ。「見てくれだけカッコいいスポーティクーペ」ってのもいいと思うんだけど、一過性のブームになり過ぎたあまり“苦い思い出”になり果ててしまった。悪ノリしすぎて、後で見たくもない青春時代の写真みたいなもんですね。
それにね。ミニバンは人と荷物が乗れて、使えるのが本筋なはず。本来、理想主義的思考の俺として、単純に「それでいいのかミニバン?」とも思っていたのだ。
なによりそういう“バクチグルマ”に、ミニバンの代名詞たる「オデッセイ」の名前をつけていいものか。せいぜい「プチ・オデッセイ」とか「スタイル・オデッセイ」とかさ。王道イメージをいただくだけでよかったんではあるまいか。その思いきりのよさが、久々にホンダさんらしいっちゃホンダさんらしいわけだけど。
そのほか、スタイル優先の三菱グランディスが出るなど、ずいぶん迷走し始めてるなぁ、日本のミニバン界って思ってたのよ。
■日産の「make sure」
そこにきてプレサージュ。ちょっと安心してしまいました。あまりに“マトモなつくり”なんで。
まずね。このクルマは、かのカルロス・ゴーンの哲学たる「make sure」の考え方にそってつくられたそうだ。別にプレサージュに始まったことじゃないんだけど、メイクシュアーは「本質重視」とか「実質本位」とかそういうこと。かなり簡単にいっちゃうと、ヨーロッパ的なクルマづくりの姿勢。そして言葉の通り、マジメにつくられている。
ボディサイズは全長×全幅×全高=4840×1800×1685mmで、現行オデッセイよりややデカいサイズ。「国内では大きめ」という意見もあるだろうが、俺的にはジャスト。ミニバン本来の魅力に不可欠だと思う。ホンダ「ステップワゴン」やトヨタ「ノア/ヴォクシー」もいいけど、やっぱり窮屈な感じは否めない。逆に「エルグランド」や「ラグレイト」じゃデカすぎる。これくらいがちょうどいい。
基本性能もマジメにつくられている。それは走りもさることながら、スライドドア採用なのに、床を普通のヒンジドア並みに低くしていること、モノ入れも多い。 2列目がキャプテンシートにもベンチシートにもなるところや、リアゲートにガラスハッチを採用するなど。さらに、これらには“カユいところに手が届く”ような工夫がなされた。
ガラスハッチは十分大きく開くだけでなく、背の低い車庫を想定し、開けっ放しのまま、テールゲートを上げてもある一定の高さにいかないようになってる。後ろからワンタッチで3列目の座面が持ち上がり、シートバックが倒れる。さらにツータッチで、持ち上がったシートバックが向こうへ倒れ、フラットになる。
走りはちょっと「スカイライン」にも似た、大味なV6エンジンのフィールが気になった。とはいえ、乗り心地はいいし、がっちり感もあり、それでいてステアリングも滑らか。全体のレベルは高い。スタイルもしばらく乗ってると、地味だけど奇をてらわず、スタンダードなミニバンとして美しくできてるのがよくわかる。ある意味、「スタイル」「使い勝手」「走りの」バランスはドイツ車っぽいかもしれない。
ま、内装はもうちょっと高級感あってもよかったと思うけどね。ってな具合に、非常にマジメにできてます、プレサージュ。一見、ジミだけどこういうクルマにこそ売れて欲しいもんだよね。ホント。
(文=小沢コージ/2003年8月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。







