日産エクストレイルS(4WD/4AT)【ブリーフテスト】
日産エクストレイルS(4WD/4AT) 2003.07.09 試乗記 ……259.0万円 総合評価……★★★★ 日産の小型SUV「エクストレイル(X-TRAIL)」が、2003年6月9日にマイナーチェンジを受けた。利便性、道具感を向上したという新装備を加えての登場だ。「東京ドイツ村」での試乗会で、自動車ジャーナリスト生方聡が乗った。街で便利なSUV
気軽に乗れるSUV(スポーツユーティリティビークル)として、ホンダ「CR-V」やこの日産「X-TRAIL」の人気は根強い。街乗り中心にもかかわらず、フルタイム4WDや高い最低地上高が必要なのか、という論議はまた別の機会に譲ることにする。しかし、パッケージングという点から見ると、モノコックボディでフロアが低いシティ派SUVは、日常において、不便どころか使いやすいところがたくさんある。比較的コンパクトなボディでも、キャビンとラゲッジスペースは十分広い。それに高めのドライビングポジションと、見切りのいい四角いボディのおかげで、取り回しも楽だ。
重量級の本格SUVもいいが、街で乗るならX-TRAILのようなライトなSUVがスマートだと思う。駆動方式は、フルタイム4WD以外にフロントドライブも用意されているおり、FFも案外賢い選択なのかもしれない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年10月19日に発表された日産の小型ヨンク。エクストリーム系スポーツ、いわゆる「横ノリ系」スポーツを楽しむ若者をターゲットに開発。サニーのフロアパンをベースに、リアサスペンションをパラレルリンクを用いたストラット式の独立懸架に変更。テラノなどで実績のある電子制御式4WDシステム「オールモード4×4」を搭載した(FFモデルもある)。エンジンは、2.0リッター(150ps/6000rpm、20.4kgm/4000rpm)と同ターボ(280ps/6400rpm、31.5kgm/3200rpm)。
2003年6月9日にマイナーチェンジし、ステアリングホイールが上45度にまでチルトする「ポップアップステアリング」がAT車で採用となったほか、内外装の一部が変更された。
(グレード概要)
「S」は最もベーシックなグレード。上級グレードの「X」と比較すると、ホイールが鉄チン+ホイールカバーになり、車体後部のガラス類がプライバシーガラスにならないほか、ステアリングホイールがウレタン、エアコンがマニュアル、といった違いがある。また「S」グレードのみ5MT車が選択できる。
【室内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
直線的なデザインのインパネには、中央部に3連丸形メーターが配置され、すっきりまとめられた。保冷・保温機能付の大型収納や、保冷機能付きのドリンクホルダーなど、便利な装備がたくさんある。センタークラスターはメタリックな塗装が施されて、インパネのアクセントになっているが、ちょっと目立ちすぎ。オプションで木目調パネルも用意されるが、インパネに馴染む落ち着いたデザインも欲しいところだ。
(前席)……★★★
今回のマイナーチェンジの目玉が、ステアリングが大きくチルトアップする「ポップアップステアリング」だ。乗り降りや車内の移動がラクだったり、運転席で何か作業するときにステアリングホイールが邪魔にならなかったりと、メリットはたくさんありそう。いっそのこと、ステアリングがインパネに収納されて、テーブルでも出てくると、いいのだけれど……。ふつうに使ううえでは、ステアリングのチルトに加えてテレスコピック(前後)の調節ができるのがうれしい。シート生地には人工皮革の「カブロン」を採用。高い防水性を謳うそれは、質感やメインテナンス性に優れ、このクルマのキャラクターにぴったりの選択だと思う。
(後席)……★★★★
リクライニング可能なリアシートのバックレストは、多少張りがあって快適さが確保される。シートクッションも十分な長さで、自然な姿勢が取れるうえ、足下や頭上のスペースにも余裕があるから、窮屈な思いはしないで済みそうだ。バックレストは6:4の分割可倒式を採用(ワンタッチ式ではない)、ダブルフォールディングもできる。ワゴンとしての使い勝手は上々だ。
(荷室)……★★★★
ラゲッジスペースは広い。シートを起こした状態でもほぼ1m、シートを倒せば約1.6mの奥行きになり、幅も1mから1.5mは確保されている。もちろん、ルーフの高さを活かして荷室高も十分だ。フロア部分は簡単に汚れが落とせる素材を採用しており、濡れたものや汚れたものでも、気にせずに放り込めるのがいい。フロア下には収納スペースが用意される。テールゲートは跳ね上げ式。リアガラスのみの開閉機能はない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
搭載されるのは、2.0リッター直4DOHCのQR20型エンジン。最高出力150ps/6000rpm、最大トルク20.4kgm/4000rpmのカタログスペックに対して、車両重量は1400kgとやや重め。しかし実際に走ると、オートマチックトランスミッションとの組み合わせでも出足は力強く、平坦な道を走るには十分な実力である。3000rpm付近でややトルクが落ちる印象だが、3500rpmから6000rpmまでは活発に回る。アクセルワークに対するレスポンスは良好で、エンジンからのノイズもよく抑えられている。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ステアリングの操舵力が軽いのが気になるものの、日産車らしい軽快なハンドリングはこのクルマにも活きている。それでいて直進安定性は高レベル。乗り心地はフラット感があって快適。荒れた路面では多少タイヤがバタつくこともあるが、ショックの遮断性も合格点が与えられる。マッド&スノータイヤが発するノイズがやや耳障りなので、オンロードメインならサマータイヤに履きかえるのも手だ。
(写真=峰 昌宏)
【テストデータ】
報告者 :生方聡
テスト日:2003年6月11日
テスト車の形態 :広報車
テスト車の年式 :2003年型
テスト車の走行距離 :--
タイヤ: (前)215/65R16 98S/(後)同じ
オプション装備 :キセノンヘッドランプ+215/65R16 98Sラジアルタイヤ&16インチアルミロードホイール(16×6.5JJ)(14.0万円)/ハイパールーフレール(10.0万円)/X-TRAILスーパーサウンドシステム(MD・CD一体AM/FM電子チューナーラジオ、120W、6スピーカー、MD・CDオートチェンジャー対応機能付)+カーウイングス対応TV/ナビゲーションシステム(DVD方式)+ETC+インストツイーター+本革巻4本スポークステアリング(31.0万円)/フロアーカーペット(2.0万円)
テスト形態 :ロードインプレッション
走行状態 :--
テスト距離: --
使用燃料 :--
参考燃費:--

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.26 「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。
-
ロイヤルエンフィールド・ハンター350(5MT)【レビュー】 2025.11.25 インドの巨人、ロイヤルエンフィールドの中型ロードスポーツ「ハンター350」に試乗。足まわりにドライブトレイン、インターフェイス類……と、各所に改良が加えられた王道のネイキッドは、ベーシックでありながら上質さも感じさせる一台に進化を遂げていた。
-
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。

































