第43回:本当にアレでいいのか?ニュー「レガシィ」
2003.07.03 小沢コージの勢いまかせ!第43回:本当にアレでいいのか?ニュー「レガシィ」
■全域ですっごくイイ
こないだ、北海道で新しいスバル「レガシィ」に乗ってきました。一言でいうと、全域ですっごくよくなってます。エンジンは売れ線の2リッターターボが、最高出力こそMTが280ps、ATは260psと変わりないんだけど、全域でトルクが太くなったから体感速度は2〜3割増し! それから、ハンドリングも前輪のグリップがやたら上がってて曲がること曲がること。ハンドルの切れ角も深く、回転半径も小さいから便利になって、実用面ではいうことなし! って感じ。
だけど、ちょっと違うと思うんだよなぁ。別にスタイルじゃなくてね。俺的にはスタイルはあんまりピンと来ないし、トヨタ車みたいだと思うんだけど、それはそれでいいのよ。
個人的見解だと、レガシィは「スタイルで売れるクルマではない」。あれってボルボと同じでさ。「カッコ悪さがカッコいい」みたいなクルマでしょ。本来的には「個性的」であることが一番重要で、特別美しいとかカッコよい必要はない。そういうクルマ。なによりも「レガシィである」とわかることが大切で、それは一応クリアしてる気がします。
■レガシィは「ハーレー」だ!?
それよっか問題は「エンジン音」と「ハンドリング」だよね。というのも、“小沢論”としていわせていただくと、レガシィはある意味「クルマ版ハーレー」なのである。スポーツワゴンってことで、“速い”“荷物が乗る”ってのももちろん大切。しかしなによりも、エンジンをかけたとたんに「バタバタバタ」と聞こえてきて「スバルだなぁ」って感じるフラット4エンジンとか、やたら軽くよくまわるステアリングフィールが大切だったように思う。
その点、今回のレガシィは排気系の取りまわしを画期的によくした、つまり一段とマトモな集合管を使い、順序よくシリンダーに火を入れることで「バタバタ」がなくなった。壊滅的というか……。
文明的には素晴らしい進歩だけれども、こと“味”を考えるとマイナスもマイナス。「これじゃあトヨタか日産みたいじゃないかぁ」という声が出てきてもおかしくない。
■“味”と“実用性”
ハンドリングもそう。今回からトレッドを拡げ、ワイドボディにしてサスペンションに余裕が出たから、ジオメトリーを一新! コーナリング時にほどよくネガティブキャンバーが付くようになった。おかげでグリップ性能は相当向上したんだけど、逆に昔のスカっとした、軽いステアリングフィールがなくなっているのだ! これは問題じゃないのか?
つまり「レガシィはハーレー」と考えると、これらの進化はマイナス要因。だって、ハーレーはVツインの OHVだからイイのだ。あの「トルットルッッッ、トルットルッッッ」って、止まりそうなアイドリングと音とトルク感がいいわけで、90度バンクのDOHC ツインなんかになってヒュンヒュンまわっちゃ逆効果。ハーレーは進化しないからいい。
だけど、味という評価の一方で、クルマは実用性、レガシィはスポーツワゴン、とまっとうに考えれば、今回の進化は正当。諸手をあげて受け入れられるべきもの。
果たしてどっちがドウなのか。今後のみなさまの裁定が、気になるところであります……。
(文=小沢コージ/2003年7月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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