ボルボXC90 T-6(4WD/4AT)/2.5T(4WD/5AT)【試乗記】
ボルボの味 2003.05.31 試乗記 ボルボXC90 T-6(4WD/4AT)/2.5T(4WD/5AT) ……695.0万円/615.0万円 2002年1月のデトロイトモーターショーでデビューした、ボルボ初の本格SUVモデル「XC90」が、やっと日本に登場した。同社のフィロソフィー「安全」「環境」を高いレベルで実現したと謳われる新型に、webCG記者が北海道で試乗。オン・オフ・ロードを走った。
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「安全」「環境」「多様性」
北海道は千歳を基点に開かれた、ボルボ初の本格SUV「XC90」の試乗会。試乗日前夜のプレスカンファレンスは、ボルボカーズジャパンのケネス・ストロームスホルム社長の挨拶で幕を開けた。「われわれがSUVの後発であるのは事実。しかし“ハッピーな後発”です……」。
ニューモデルにかける意気込みが感じられる。
GMやフォードなどのビッグスリーにとって、北米市場での人気が高く、利幅も大きいSUVモデルは“ドル箱”である。アメリカでの利益が社運を握る欧州メーカーにとっても同様。BMW「X5」や、メルセデスベンツ「M」シリーズ、ポルシェですら初のSUV「カイエン」をリリースし、フォルクスワーゲンは「トゥアレグ」で後を追う。2003年1月のデトロイトショーでは、プレミアムスポーツのアウディと“伊達オトコ”のマゼラーティが、3月のジュネーブショーではアルファロメオが、それぞれSUVコンセプトを出展したことからも、SUVの重要性がいかほどかご想像いただけるだろう。
ボルボXC90は、フラッグシップ「S80」のプラットフォームをベースにつくられた。主力車種「V70」をベースに車高を上げ、外観をタフに演出したクロスカントリーモデル「XC70」もあるが、“純然たるSUV”はXC90が初めてだ。“オフロードの走破性”より、街乗りに重点が置かれた「スタイリッシュSUV」で、X5やMシリーズを主なライバルとする。
セリングポイントは、ボルボのフィロソフィーたる「安全」と「環境」を追求したこと。ストロームスホルム社長が“ハッピーな後発”と語るのは、これらの性能に自信があるからだろう。さらに、3列シートのアレンジを活かして、クルマとして便利な「多様性」を備えるのがジマンだ。
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タフを演出するブランドアイコン
日本でのラインナップは3種類。ベーシックな「XC90」(555.0万円)と、レザー内装が奢られる「XC90 2.5T」(615.0万円)は、2.5リッター直5ターボ(209ps、32.6kgm)に、シーケンシャルモード「ギアトロニック」5段ATの組み合わせ。トップグレードの「XC90 T-6」(695.0万円)は、「S80 T-6」譲りの3リッター直6ツインターボ(272ps、38.7kgm)を搭載。トランスミッションは4段ATとなる。駆動方式は、すべて電子制御ハルデックスクラッチを使うAWD(4WD)のみだ。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=4800×1900×1780mm、ホイールベースは2855mm。SUVは大きさも魅力の1つだが、重量と路上専有面積の増加は、環境によろしくない。そのためXC90は、全長4800mm以下を目標に設計された。といってもX5より130mm長く、80mm高い。車重2トンを超える大きな体躯は、まさしくSUVのそれだ。フロントマスクの四角いグリル、“V‐シェイプ”と呼ばれる段差の付いたボンネットなど、一目でボルボとわかるブランドアイコンがXC90では強調され、SUVらしい“タフさ”の演出に一役買っている。
試乗車は、広報氏がメイングレードと推す2.5Tと、トップグレードT-6の2種類。まずは、同行した自動車専門誌『NAVI』の山口編集部員が2.5Tに、リポーターはT-6に乗った。
T-6のインテリアは、オークとアリーナ、トーンの異なるベージュを組み合わせた明るい内装。グリップの太いアルミ調ドアハンドルなど“SUVっぽい”アイテムを採用しつつ、シンプルで上品な“スカンジナビアン”テイストの仕上がりだ。日本に導入されるXC90は、すべて3列シートの7人乗り。全席にヘッドレストが備わるのはもちろん、プリテンショナー付き3点シートベルトと、3列目までカバーする「インフレータブルカーテンエアバッグ」(IC)を備えるのは世界初だという。ICは全車標準装備、オプションでお茶を濁さないのはさすがだ。
2台連れだって、新緑が萌える初夏の北海道を走り出した。
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転倒防止機構「RSC」
T-6の3リッター直6は、基本的にS80のそれと同じ。可変バルブ機構「CVVT」とツインターボを備え、272ps/5200rpmの最高出力と38.7kgm/1800〜5000rpmの最大トルクを発生する。低回転から維持される広いトルクバンドにより、2130kgもある巨体をスムーズに運ぶ。パワーソースは3リッターのツインターボながら、XC90は常にジェントル。ターボ感は希薄で軽くまわり、高回転でも静かだ。重量による慣性力のせいか、4段ATの変速ショックも気にならない。
最も印象に残ったのが、静かで乗り心地が良いことだ。T-6は235/60R18インチと、かなり大きなタイヤを履くにもかかわらず、ズシっと重い突き上げやバタつきはほとんど感じない。記憶にあるXC70やS60の乗り心地に照らしても、XC90の方がグっと上質で洗練されている。上下動がユッタリしたボディの動きは、重厚感ある高級車らしいものだ。
もちろん、ハンドリングもゆったりしているが、街乗りヨンクとして使うには十分。むしろ運転を急かされることのない、このユッタリ感はボルボならではだ。XC90はXC70より車高が120mm、クリアランスは10mm高いが、安定性を考慮して重心高は90mm増に抑えられている。コーナリング時のロールも怖くない。
ボルボがXC90をつくる際に、気を遣った事項の1つが「安定性」だ。SUVは背が高く不安定になりがちで、急激なコーナリング時--たとえば道路に突然現れた鹿を避けるなど--に転倒する危険があり、安全をモットーにするボルボとしては、なんとしても克服したかった。
そこで導入されたのが、世界初の「RSC」(ロールスタビリティコントロール)という電子デバイスである。これは、スロットルと4輪のブレーキを個別に制御して、スピンなどを防止する「DSTC」(ダイナミックスタビリティ&トラクションコントロール)と連動し、ジャイロセンサーのロールスピード&傾き情報から、転倒の危険がある場合は意図的にアンダーステアを発生させ、横G(ロール)を低減して転倒を防止する。
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軽快な2.5T、重厚なT-6
途中で撮影しながら、千歳から100km弱ほどのところにある、日高ケンタッキーファームに到着した。昼食にジンギスカンを食べて一休みしていると、ジーンズ姿にカウボーイハットをかぶった、ウエスタン風のオジサンが話しかけてきた。「カッコイイね。今のヨンクは乗用車みたいなのが多いけど、コレは強そうに見える」と、四角いグリルを指さしていう。
オジサンは、牧場の馬を管理する人だった。クルマに馬を載せて林道に赴き、馬で森を駆けることもあるという。馬にも乗ってみたかったが、XC90で林道を走るのも楽しそうだ。
ということで、2.5Tに乗り換えてオジサン(最後まで名前を聞かなかった……)に教えてもらった林道を目指した。
乗り換えた2.5Tのインテリアは、オフブラックで統一される。ちょっと重たい雰囲気だ。
「個人的にはT-6の明るい内装が好きだなぁ」と思って走り出したら、内装とは裏腹(?)の軽快なフィーリングに驚いた。2.5リッター直5ターボは、209ps/5000rpmの最高出力と、32.6kgm/1500〜4500rpmの最大トルクを発生する。
いうまでもなく、3リッターに数値は劣るが、中低回転域からの加速フィールは(タイヤのせいもあろうが)こちらのほうがスムーズに感じられた。絶対的な動力性能は十分ある。100km/h巡航は2200rpmでこなすから、音も静かだ。
さらに2.5Tは、乗り心地が6気筒モデルに輪をかけてよい。両モデルのサスペンションは同じだというから、T-6よりひとまわり小さい235/65R17サイズのタイヤが奏功したのだろう。6気筒ではやや重いステアリングフィールも軽く、ハンドリングまでシャープになったようだ。日常的に扱いやすそうだから、個人的には2.5Tをオススメする。T-6は、重厚な乗り味が好きとか、高速道路を頻繁に使う人にはいいかもしれない。
ほどなくして、オジサンに教えてもらった林道に入った。周囲の森はところどころに山菜が生え、蛇行する小さな河の水が綺麗だ。
道はクルマがやっとすれ違えるほどの幅しかなく、乾いた泥(?)に覆われてグリップが低そう。AWD機構が活躍する絶好のシチュエーションだが、ボルボのAWDは“攻めの走り”ではなく、急激な路面状況の変化や不整地での発進を“安全”にこなすためのもの。林道でも気を遣うことなく、かつ大らかに走れるXC90は、“ボルボの味”が濃いSUVだった。
(文=webCGオオサワ/写真=河野敦樹/2003年5月)

大澤 俊博
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