ボルボXC60 T5 R-DESIGN(FF/6AT)【試乗記】
つくづく上品 2012.09.25 試乗記 ボルボXC60 T5 R-DESIGN(FF/6AT)……584万円
「ボルボXC60」のFFモデルに、スポーティーな内外装や足まわりを持つ特別仕様車が登場。その走りは? 乗り心地は?
3年たってもカッコいい
今年は、2009年8月に日本に導入された「ボルボXC60」にとって最大の転機になると思う。何もこのモデルに大がかりな変更があったわけではない。「レンジローバー イヴォーク」が日本で走り始めたのだ。
別に、イヴォークに客をとられるという意味ではない。イヴォークの隣に並ぶことで、XC60の持ち味がはっきりしたのだ。これまではただ「カッコいいミドルサイズのSUV」だと思っていたけれど、イヴォークと並べると、そのカッコよさが「より落ち着いた、エレガントなカッコよさ」だということがわかる。
イヴォークがグッチのモード服だとすれば、XC60はラルフ・ローレンのモダンなトラッド服。ライバルの登場で、XC60の立ち位置がはっきりした。
今回試乗するのは、8月にラインナップに加わった「XC60 T5 R-DESIGN」。このモデルにいたる、日本におけるボルボXC60の歴史を駆け足で振り返ると――。
2009年8月に日本への導入が始まった時は、3リッター直列6気筒ターボエンジン搭載の四輪駆動モデル「XC60 AWD T6 SE」だけの設定だった。翌2010年2月、内外装と足まわりにスポーティーな味つけを施した「R-DESIGN」が加わり、同年8月には2リッター直列4気筒の直噴ターボエンジンを積むFF(前輪駆動)の「XC60 T5 SE」が投入された。
この2リッターエンジンは、2012年モデルでは最高出力が203psから240psへと引き上げられている。そしてこの2リッターのFF版に追加された「R-DESIGN」仕様をここでは取り上げる。
ちなみに「R-DESIGN」の“R”とは「Refinement(リファインメント)」の“R”。「デザインと走りの融合」をテーマに、内外装と足まわりに手が加えられている。
ラジエーターグリルやエアインテークの縁、それにドアミラーやサイドスカートなどが専用パーツでキラっと輝く外観をチェック。抑えの利いた演出であること、それでも確実にノーマル仕様よりスポーティーさが増していることを確認してから乗り込む。
やり過ぎないのがミソ
インテリアもエクステリアと同様、さらっとスポーティーに見せている。ホントはこの「さらっと」が難しいはずで、おそらくデザイン担当はうんうんうなりながら考えたのだろう。専用のレザー製スポーツシートやアルミのペダルとインパネで控え目に、かつセンスよく、「走ります!」という雰囲気を盛り上げる。
駐車場から一歩出て、「へぇ」と思う。事前に資料で読んだ「強化スプリング」「強化ショックアブソーバー」「強化アンチロールバー」という文字から想像した、がっちがちの乗り心地ではなかったからだ。
乗り心地が硬いというよりも、乗り味がしっかりとしたという表現のほうが近い。凸凹を乗り越えた時のショックを過大に感じることはないけれど、乗り越えた後に揺れが収束するスピードが速いという印象だ。
ここでも、「品よく、センスよく」というフレーズが頭に浮かぶ。
箱根のワインディングロードに入ると、この足のセッティングの意味がさらによくわかる。ロールを許さないわけではなく、ドライバーはある程度の横方向への傾きを感じる。ただし、これは不安を感じさせるものではない。傾きの度合いは、「もうちょっといける」とか「このへんでやめておこう」ということを判断する手掛かりとなる。つまり、ロールを利用しながらコーナーをクリアするタイプだ。これを可能にするのが、進入時の「グラッ」と、脱出時の「フラッ」というコーナリングにおける二大不安要素をほとんど感じさせない、しっかりとしたセッティングだ。
いつもよりギュッと力を入れてしっかり握ったおにぎりのように、コーナリング中の車体にソリッドなカタマリ感を感じる。これには、ステアリングホイールのギアレシオが10%クイックになっている点も関係していると考える。ステアリング操作が敏感に車体の動きに反映されるからだ。
「R-DESIGN」は“ほどよいスパイス”
240psを発生する2リッターの直列4気筒直噴ターボとツインクラッチ式の6段ATの組み合わせは標準仕様と変わらない。
このエンジンは、発進加速時からみっちりと太いトルクを発生する、下から濃ゆいタイプだ。一方、踏み込めばスーッとスムーズに回転を上げる軽やかさも併せ持つ。箱根の急勾配の登りだけは1790kgの車重に対して「もう一声!」と言いたくなるけれど、全体的には上品なクルマの性格に合っている。
クルマの性格に合っているという評価は、ツインクラッチ式の6段ATにもあてはまる。パキッパキッとした変速スピードの速さよりも、お行儀のいいシームレスな変速フィーリングを狙っている。
走りの質もデザインも、全体に育ちのよさそうなクルマの雰囲気に、ピリッとスパイスを利かせたのが「R-DESIGN」だ。そしてスパイスを利かせることでこのクルマが持つ上品さが強調されるあたり、お汁粉にひとつまみ塩を加えると甘さが増すのに似ている。
自分で買うとしたら「外観はおっとりしたノーマルで、足まわりだけR-DESIGN」という仕様が好ましいけれど、これはたわ言だと思って聞き流してください。569万円というT5 R-DESIGNの価格は、イヴォークをはじめとするライバルと比べても、その中身を考えれば競争力がある。
なによりXC60には、低速での追突回避と万が一の時の被害低減を目的にしたオートブレーキシステム「シティセーフティー」が標準装備される。望めば15万円で「セーフティー・パッケージ」のオプション装備もできる。これには、歩行者検知機能や、すべての速度域で先行車両に追従するクルーズコントロールなどが含まれる。
モノの良さを控え目にアピールするXC60と、街を行くすべての人の視線を奪うイヴォーク。やっぱり、このカテゴリーは面白い。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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