ベントレー・コンチネンタルGTスピード コンバーチブル(4WD/8AT)【海外試乗記】
欲張りなベントレー 2013.03.08 試乗記 ベントレー・コンチネンタルGTスピード コンバーチブル(4WD/8AT)「ベントレー・コンチネンタルGT」のオープンバージョンに、625psを発生するハイパワーモデル「スピード」が登場。その走りや乗り心地を、アメリカの道で試した。
満を持してのオープン「スピード」
ベントレーの「コンチネンタルGT」シリーズ、つまり同社でもっとも売れ筋である2+2シーターのクローズドクーペには、3つのモデルがラインナップされている。
6リッターW12ツインターボエンジン搭載の「標準モデル」(実際は極めて豪華で“標準”と呼ぶにはいささか抵抗があるが……)、このエンジンの最高出力を50ps引き上げて625psとした高性能版の「スピード」、そして4リッターV8直噴ツインターボエンジンを搭載した「V8」である。
いっぽう、それらのオープントップ版は、今後呼び方を「GTC」から「GTコンバーチブル」へと順次改めていくそうだが、こちらはまだ“標準”と“V8”がラインナップされているだけで、ハイパフォーマンスバージョンの“スピード”はなかった。だから、このたび「ベントレー・コンチネンタルGTスピード コンバーチブル」が誕生したのは当然の結果であるのだけれど、そのいっぽうで「ものすごく狭いマーケットに細かくバリエーションを投入しているなあ」という思いを抱く読者がいたとしても、わからないことではない。
なるほど、バッジやグリルの色が異なったり、テールパイプの形状が違っていたりはするものの、知らない人が見たら外観はどれも一緒。おまけに「乗り味の違いを確かめたいのでちょいとディーラーで試乗でも……」なんてことができるほどベントレーのハードルは低くない。というわけで“標準”“スピード”“V8”の差は、いまひとつ広く知られていなかったような気がする。
とはいえ、クルーの技術者たちが心血注いで3モデルを作りわけてきたことは、実際に乗り比べてみればたちどころにわかる。
その違いをクーペで説明すれば、まず“標準”はベントレー本来の魅力であるグランドツアラーとしての資質をしっかり受け継ぎながらも、2000万円を超すラグジュアリークーペにふさわしい快適性と豪華さを兼ね備えたモデル。
いっぽうの“V8”は、標準と25kgしか車重が違わないことが信じられないくらいハンドリングが軽快。例えば箱根のタイトなワインディングロードでは、まるでライトウエイトスポーツカーを操っているかのようなスポーツドライビングを楽しめる。不思議と「乗り心地が悪くなっている」とは感じられないけれども、いかにもサスペンションのスプリングレートを上げてレスポンスを改善したようなハンドリングだ。
“重厚なる高性能”が持ち味
残る“スピード”もやはりスポーティー路線ではあるが、V8とは明瞭に方向性が異なる。先ほどV8をライトウエイトスポーツカーにたとえたが、同様に表現すればスピードは重厚長大なハイスピードツアラーのように思えるのだ。
乗り心地はスプリングを強化したV8とは対照的に、ダンパーを締め上げたような感触で、どっしりと落ち着いていて据わりがいい。
エンジンはもちろんパワフルなのだけれど、その印象を強調するかのようにスロットルペダルの踏み始めで敏感に反応するように設定されており、バルブ機構を盛り込んだ排気系は、ペダルをさらに強く踏み込んだ際、迫力あるエキゾーストノートを奏でる。
ただし、前述したようにハンドリングは軽快というよりも重厚な印象なので、「V8がロータスだとすれば、スピードはAMG」ともたとえられる。もっとも、戦前生まれのベントレーにしてみれば、ロータスやAMGのような“若造”と一緒にされたくないと思うかもしれないが……。
前置きがかなり長くなったが、本題であるコンチネンタルGTスピード コンバーチブルの国際試乗会は、アメリカで催された。コースはアリゾナ州フェニックスを出発してグランドキャニオンを経由し、ネバダ州のラスベガスまでのおよそ1000km。2日間の行程とはいえ、かなりの強行軍であったことが想像できるだろう。
しかも、アメリカには路面の荒れた道が少なくない。そこを延々と走り続けるわけだから、コンバーチブルモデルにとっては極めて過酷な条件といえる。にもかかわらず、コンチネンタルGTスピード コンバーチブルはオープン化に伴う弱点をさらけ出すことなく、この長丁場を走りきってみせた。
正直、ボディー剛性が低いと感じられることはほとんどなかったのである。たしかに悪路を通過する際にステアリングポストがかすかに震えることはあったが、フロアの振動やスカットルシェイクは皆無といえるレベルだった。
クーペのよさはそのままに
いっぽう、例によってコンフォートからスポーツまで4段階に設定を切り替えられるエアサスペンションは、特にスポーツ側でクーペ版のコンチネンタルGTスピードよりややソフトな設定となっていた。この点をエンジニアに確認したところ「GTコンバーチブルのボディー剛性はオープントップとして極めて高い水準にあるが、それでもクーペボディーに比べるとねじり剛性は10%ほど低下している。このため、スポーツ側のセッティングをクーペよりもほんの少し柔らかめにした」との回答が返ってきた。
そもそもクーペ版GTスピードのスポーツモードは、はっきりと硬さが意識できる設定で、たまにサーキットで振り回したりするのにちょうどいいくらいのセッティング。言い換えれば、公道ではあまり登場するチャンスはなかった。だから、仮にこのポジションを4、もっとも柔らかいポジションを1とすれば、GTスピード コンバーチブルは「クーペ版の1〜3を4で均等割りしたような味付け」になっており、オンロードでのチョイスはよりきめ細かくなったとも言える。
これらを別にすればコンチネンタルGTスピード コンバーチブルはクーペ版のコンチネンタルGTスピードと印象がとてもよく似ている。ちょいと踏み込んだだけでぐいと力強く反応するエンジン、車外で聞くとかなり勇ましいエキゾーストノート、そしてダンピングのよく効いた引き締まった乗り心地などは、コンチネンタルGTスピードとウリふたつ。クーペで築き上げた各モデルの相対関係は、コンバーチブルでも同様に保たれていたのである。
もちろん、コンチネンタルGTスピード コンバーチブルにはオープンドライビングというクーペでは味わえない魅力が加わる。そして、スイッチひとつで上質なキャンバストップを操作し、4人分の広大なキャビンを覆い隠したなら、625psを生み出す6リッターW12ツインターボエンジンをして、この2.5トンにならんとするボディーを325km/hの最高速度まで導くことも可能になる。ベントレーがコンチネンタルGTスピード コンバーチブルを「世界最速の4シーターオープン」と呼ぶゆえんである。
インテリアの豪華さについては、いまさらいうまでもないだろう。しかも、ベントレーならではのビスポークプログラムが用意されているので、ウッドを生かしたクラッシーなキャビンにもできれば、カーボンパネルでハイテクイメージを強調することもできる。むしろ、問われているのはオーダーする側のセンスかもしれない。
スーパーカー並みのパフォーマンスと、グランドツアラーの快適性と、オープンエアドライビングの楽しみを1台で兼ね備えたコンチネンタルGTスピード コンバーチブル。これ以上ぜいたくなチョイスは、そうあるもんじゃない。
(文=大谷達也/写真=ベントレーモーターズジャパン)

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
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