ランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4ロードスター(4WD/7AT)【海外試乗記】
ゆっくり走っても幸せ 2013.02.22 試乗記 ランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4ロードスター(4WD/7AT)……4660万3200円(日本国内価格)
700psのスーパーカー「ランボルギーニ・アヴェンタドール」に、オープンバージョンが登場。いったい、どんな走りを見せるのか? アメリカ・フロリダ州のマイアミで試乗した。
最新技術がもたらす「美」
それを“量産”と呼べるかどうかは別にして、12気筒エンジンを積むミドシップカーをある程度の規模で生産しているメーカーは、今やランボルギーニだけである。
最新フラッグシップの「アヴェンタドールLP700-4」。世界的にセールスは好調で、すでに1300台近くがサンターガタ・ボロネーゼをラインオフした。2012年の生産台数922台(実質10カ月)は、これまで最高を記録した2007年の「ムルシエラゴ」(425台)の倍以上だ。
そして、創立50周年を迎える今年。祝宴の盛大なアペリティーボとなったのが、そのロードスターモデルというわけである。もちろん、12気筒ミドシップスーパーカーのオープンモデルは、世界的にみて貴重な存在である。
「カーボンファイバーのコンポジットマテリアルはデザイナーにフリーダムを与える最高のツールだ」。チーフデザイナーのフェリッポ・ペリーニはそう断言した。
ロードスター化において、彼が最も大切にしたこと。それは、トップビュー(真上からの姿)だったという。完成されたベルリネッタのフォルムやラインの構成をしっかりと守りつつ、さらにアグレッシブな仕立てを実現しようと試みた。結果、ルーフパネルを外した状態のロードスターは、クーペに比べて25mmもトップ位置が低くなり、エンジンフードのデザインも非常にドラマチックな仕立てとなる。それはもう、クーペのユーザーが悔しくなるほどに……。
トップは、いまどき“まさかの”2分割取り外し式パネルとされた。もちろん、これには理由があった。ひとつには、それがクーペのデザインコンセプトを昇華させるために最適な手法であったこと。もうひとつには、例えば電動化などによるパフォーマンスへの悪影響、つまりは重量の純増や重量配分の変化を嫌ったためである。
2枚組のルーフパネルといえば「ポルシェ・カレラGT」を思い出す。取り外しの手間と要領そのものはさほど変わらないと思われたが、それぞれ6kg以下と軽いこと、さらにフロントのラゲッジルームへのしまい込みが容易であることから、カーボン製の大事な屋根を取ったり外したりするという精神的負担は、かなり軽微になった(落とすことを想像すると手が震える!)。
ちなみに、ルーフパネルの構造には、鍛造コンポジットをRTM(Resin Transfer Molding)成型のCFRP(炭素繊維複合材)でサンドイッチするという新しい手法が採られている。高圧のRTM成型によって、クラスAの表面質感を実現した。ランボルギーニの見立てによれば、従来のプリプレグ方式によるCFRP成型は、ここ数年のうちに特殊な領域に限られるようになるという。
環境性能もアップ
ルーフを取り外し可能としたことで、当然ながら、ボディーやシャシーまわりにも若干の仕様変更が施されている。
アヴェンタドールには、そもそも強固なCFRPモノコックボディーが採用されており、設計段階から将来のオープン化も想定されていた。それでもカーボンルーフをなくしたことによるマイナスを補うために、サイドシルやピラーのCFRP層を増やし、クーペには及ばないまでも、同じくロードスターであったカレラGTなみ、要するに700psのスーパーカーにふさわしいボディー剛性を確保している。また、スプリングやアンチロールバーも、ややコンフォート寄りに再チューニングした。
伝統の60度V型12気筒エンジンに、シングルクラッチの2ペダル式トランスミッション「ISR(Independent Shifting Rods)」を組み合わせるのは、クーペと同じ。700psに70.4kgmというエンジンスペックも変わらない。
ある意味、傑出したパフォーマンスよりもニュースだったのは、2013年モデルから、クーペ/ロードスターともに、気筒休止システムとアイドリングストップシステムが採用されたことだろう。前者は、135km/h以下の低負荷時に6気筒ドライブを促すもので、高速巡航時の燃費がおよそ2割向上するという。再始動のエネルギーをバッテリーではなくスーパーキャパシターに頼るアイドリングストップシステムと相まって、複合燃費では約7%の改善をみた。
フロントに最大6割のトルク配分を行う電子制御ハルデックス式4WDシステムもまた、クーペと変わらない。復習になるが、3つのドライブモードにおける前後トルク配分のデフォルトは、ストラーダモードでF30:R70、スポーツでF10:R90、コルサでF20:R80、となっている。
ボディーの強化やポップアップ式のロールオーバーバーの装備(転倒時の備え) などにより、クーペに比べて約50kgの重量増となっているが、パフォーマンスの低下はごくわずか。そのことは、0-100km/h加速3秒フラットという数値が証明している。最高速は350km/hだ。
走りのよさはクーペと同じ
今回の国際試乗会は、マイアミのホームステッドレースウェイを起点に開催された。いまにもNASCARレースの熱狂に包まれそうなオーバルコースと、インフィールドに設けられたサーキットを使って、まずはルーフ・クローズドでハイスピードドライブを楽しむ。
ピットロードからインフィールドに入り、いくつかの小さなベンドを左右にこなしながら気付くのは、(当然ながら)ボディーがまるで弱音を吐かないことだ。こと、わが身を包むキャビンの頼もしさという点で、クーペにまるで遜色ない。否、ルーフを付けている限り、ロードスターであることを忘れて激しいドライビングを楽しむことができる。
わずかに柔らかなアシまわりのセットは、フロントの“ため”や、リアの“入り”を分かりやすくしてくれるため、シロウトドライバーにはむしろありがたい。ご存じのとおり、アヴェンタドールのサスペンションはプッシュロッド方式である。左右の踏ん張りを、少しでも上下に感じられる方が、プロドライバーではないわれわれは、安心して踏みこんでいけるというものだ。
基本的に振り回して走らせることができ、変速時間もリーズナブルに短く、ブリッピングサウンドも盛大なスポーツモードがサーキット走行でもオススメなのは、クーペと変わらない。もっとも、コルサモードのプログラムもどうやらリファインされたようで、素早いけれども内臓を直撃するようなシフトアップ時の変速ショックはかなり抑え込まれた。ただし、コルサはあくまでも“速く走るためのモード”であって、ドライビングファンを望むなら、やはりスポーツモードがベター。
特別なロードスターであることを同乗者にも知らしめたい。そう思ったときは、電動式のリアウィンドウを下げてみることをオススメする。コンバーチブルでいうところの、いわゆるカリフォルニアモード。慎重に設計されたエキゾーストシステムを通じて、大排気量V12自然吸気エンジンの咆哮(ほうこう)がキャビンを満たす。シフトダウン時の盛大なブリッピングサウンドや、加速時の高らかに舞う豪勢なノートを満喫しては、なるほどスーパーカーの醍醐味(だいごみ)は“絶叫サウンド”にあったよな、とあらためて得心した。
スーパーにして快適
ロードスターの試乗会に赴いて、オープンで走らないという手はない。“クーペ”のアヴェンタドールをあらためてサーキットで満喫、で終わってしまうと、まるで仕事にならない。
ホームステッドサーキットからマイアミビーチのホテルまで、ド派手なグリーンメタリックのロードスターを駆って、オープンクルーズを楽しんでみた。これで白いスーツでも着れば、まさに『マイアミ・バイス』、ドン・ジョンソンな気分で、実際、あのテーマソングがアタマのなかを流れたほどだ。
サーキットでハードなドライビングを試みても、クーペ同様のパフォーマンスをみせた。ルーフを外したといっても、そこは厳しいアメリカの速度規制下である。せいぜい時速55マイルという速度領域で、カーボンモノコックボディーが弱みをみせることなど、ありえない。むしろ、カゴ(=キャビン)の張りや力みのわずかなヌケが心地よく、突っ張り感の減ったアシまわりと相まって、ライドフィールは快適と言っていいほど。
注目のエコデバイスについても報告しておこう。アイドリングストップシステムのマナーは、すこぶる良好だ。エンジン停止はもちろんのこと、キャパシターによる素早い再始動はショックもなく、十分に使える。それでも嫌なら、切ればいい(元も子もないが)。
もっとも、決して静かとはいえないド派手なクルマが近づいてきて、赤信号で停止すれば、いやが応でも注目を集めてしまう。そんなとき、プスっとエンジンが止まり、急に静かになったとしたら? きっと目撃者の貴方は、「あ、エンストしよった!」と心の中で笑うことだろう。
気筒停止(ノーマルモードのみ。アイドリングストップも同様)もまた、その変化を振動で感じることはない。アクセルペダルをほとんど踏まないでも進むようなクルージング状態になれば、エンジンサウンドが「ボボーッ」とくぐもって、インジケーターとともに「ただいま6発状態」であることを教えてくれる。低速な状態(50〜60km/h、1200rpm以下)で7速に入っていれば、むしろ起動しないようにセッティングされているようだ。
2月のマイアミ、天候は晴れ。青々とした空から降り注ぐ陽光とさわやかな風が頭頂をなでる心地よさのなか、世界最高のロードスターに乗っているということ自体、たとえ平均時速30マイル以下であろうともクルマ好きの幸せMAX、というものである。
その日は日曜日だった。大渋滞のオーシャンドライブ。町中の視線を浴びる。ゆっくり進むことがあんなにも晴れがましく、幸せに感じたことは初めてだ。スーパーカーはゆっくり走っていても気持ちがいい。そこが、スポーツカーやレーシングカーとの、最大の違いでもある。
(文=西川淳/写真=アウトモビリ・ランボルギーニ)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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