第3回:変わりゆくナビ、変えていくナビ
2013.01.16 NAVIeliteの、今とこれから第3回:変わりゆくナビ、変えていくナビ
スマホ用ナビゲーションとして認知されてきたNAVIeliteだが、その開発元であるアイシン・エィ・ダブリュが多くの自動車&ナビメーカー向けにカーナビゲーションを開発していることは、実はあまり知られていない。今回は2012年5月に発売したトヨタ純正ディーラー向けオプションカーナビをはじめとする同社ナビ開発のキーマンである、ナビ事業本部の製品統括部主査 加地孝典氏に、現在のカーナビにおけるトレンド、そして今後ますます重要視されるであろうスマホとの連携などについてお話を伺った。
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いま世の中にないならやろう
高山:発売から若干時間がたっており申し訳ありませんが、まずトヨタ純正ナビについての特徴や商品企画における狙いなどを教えてください。
加地:おっしゃるように現在販売されているトヨタさんのディーラー向けのカーナビゲーション、その中でもフラッグシップモデルにあたる「NHBA-X62G(以下X62Gと表記)」ほか数機種、さらにここ数年間はトヨタさん向けのフラッグシップモデルを小社で開発しています。その中で今回初めてブルーレイのデッキを本体内に搭載して製品化しました。われわれは「用品」と呼んでいるのですが、その位置づけは「打倒、市販モデル」であったり、トヨタさんの商品群の中での「アンテナ商品」であったりでなければいけない。その使命を担っているのがフラッグシップモデルなのです。
高山:その具体化が今回のモデルというわけですね。
加地:はい。今回われわれが一番チャレンジしたのは「現在AV一体型モデルの中で、ブルーレイを搭載しているものは世の中に出ていない。ならばそれをやろう」と。さらに家庭用ではブルーレイはだいぶ普及してきていますので、お客さまにクルマの中でのエンターテインメントをもっと楽しんでほしいということ、さらに音楽系のコネクテッドも十分準備するなど毎年新しいことをやっています。これがわれわれの使命でもありますし、トヨタさんから期待されている部分でもあります。
高山:このX62Gも8インチ、つまり大画面ディスプレイを搭載していますね。
加地:大画面に関しては市販メーカーさんが積極的に展開していますので、われわれも追いつかないといけないな、と。もちろんサイズに限界はあるわけですけど、9インチも市場に出ている中、大画面化のトレンドは間違いなく続くでしょうね。
「中から外」へ持ち出す時代
高山:加地さんはNAVIeliteの初期の開発にも携わっていたと伺っていますが。
加地:はい。実は発表した当時、われわれはNAVIeliteを「ウエアラブルナビ」というコンセプトで開発していました。何が言いたいのかというと、従来のナビというのはクルマの中だけで完結させてきたものじゃないですか。一方でNAVIeliteは身につける「どこでもナビ」を提供したかったわけです。
高山:ただ、一見すると二つの商品は直接つながっていませんよね。
加地:そこなんです。目的地の検索などはそもそもクルマの中で決めることではないですよね。
高山:家とか外出先とかが多い?
加地:そう。そこで開発したのが「smart nAVVi Link(スマートナヴィリンク)」というスマホ向け無料アプリなのです。これを使えば「スマホで事前に検索しておけば、後はクルマに乗った時に転送するだけ」、あとはルート案内してくれますよ、という世界を作りたかったのです。
高山:ナビとスマホが連携した重要な出来事ですね。
加地:いまはスマホで家電が動かせる時代ですから、われわれも派生機能としてAV機能のリモコンや燃費情報をナビから転送してスマホで見ることもできるようにしました。もはやクルマの中でどうこうするのではなく、立ち寄った喫茶店でも情報は見ることができる。クルマから外、言い換えれば「中から外」へ情報を持ち出す時代になっているわけです。また、アプリ自体も今後ますます進化していきますし、われわれも新しいアプリを開発していきたい、という意思もあります。
高山:そんな中、NAVIeliteはMINIとのコラボも今回行っていますが、一方でNAVIeliteをインストールしたスマホを直接つなげるナビも商品化されていますよね?
加地:DAN-W62はパナソニックさんの商品ですが、コラボというか、NAVIeliteを大画面で使うことができます。
高山:スマホではやはりサイズが小さいという声もあると思います。こういう商品は今後どうなるとお考えですか?
加地:価格的に安いからというより、ライフスタイルとして普及していく気がしています。
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車載ナビとの共存は可能?
高山:では最後に、これだけスマホナビがトレンド、そして数としても多く出回っている昨今、据え置きナビも作っているアイシン・エィ・ダブリュとしては、共存は可能と考えますか?
加地:確かにわれわれのような車載ナビを作っている会社がアプリを出すことは、その市場を食い合うことになるのでは、という話は当初確かにありました。やはりクルマの中のマルチメディア製品というものは安心感というか、クルマとセットで買いたくなるというのは間違いないと思います。さらにナビの進化として考えた場合、ディスプレイ自体の工場装着率が上がることで「付いていて当たり前の商品」になっていくとすれば十分共存は可能だと思います。ただ、スマホの場合はイメージも含めて進化のスピードが速いんですよね。
高山:高感度層にはそのほうがウケますよね。
加地:そういう方はスマホの中により良いナビアプリを入れて使い倒すとかになると思います。でも結構そういう人は両方使っていたりして(笑)。
高山:僕はそうですね(笑)。
加地:ナビとスマホアプリは近づきつつも、やはり別の世界を作っていくと思います。もちろん今のままであれば、ナビとして見た場合できることはかなり近いので、据え置きナビの立場は変わっていくと思います。
高山:また変えていかないといけないわけですよね。
加地:そう。さらに言えばスマホは例えば2年後、今の形のままなのかだって予想はつかないですよ。だからこそライフスタイルに合わせた提案や商品を送り出していくつもりでいます。
インタビューを終えて
もともと個人的にも利用していた「NAVIelite」ではあったが、今回のMINIとのコラボレーションにより、スマホ単体の世界で片付けられてしまいがちなナビアプリの“次の一手”が見えてきた気がする。もちろんすでにスマホナビを大型ディスプレイに表示するユニットも販売されてはいるが、正直いまひとつ盛り上がっていなかったのも事実。コストダウンや接続時の手間などの問題を解決できれば市場としても期待できる。
スマホナビの場合、その端末の仕様が公開されないと開発自体を行うのが非常に難しい。つまり、発売後にいかに短時間で端末に対応させるかが、商品の行方を占う意味でも重要なポイントとなる。その点でもNAVIeliteの開発スピードは非常に速く、アプリの中身同様にユーザー本位である点に好感が持てるのである。もっとも、開発側からしたらたまったものではないだろうが……(笑)。
インタビューで加地氏が「2年後はスマホも今の形のままか予想はつかない」とコメントしたのは筆者も同感である。しかしNAVIeliteならばその変化に対応し進化してくれると期待している。
(インタビューとまとめ=高山正寛/写真=峰昌宏、webCG)

高山 正寛
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