レクサスRX 450h“バージョンL・Air suspension”(4WD/CVT)【試乗記】
おもてなしの心 2012.07.03 試乗記 レクサスRX 450h“バージョンL・Air suspension”(4WD/CVT)……731万4500円
マイナーチェンジで見た目が新しくなった「レクサスRX」。エアサス付きの豪華グレードに試乗して、グローバルでの人気のわけを考えた。
レクサスブランドの屋台骨
レクサスは、新型「GS」に初めて採用した「スピンドルグリル」という顔つきを今後全車に展開し、BMWのキドニーグリルのように、どのモデルを見てもひと目でレクサスとわかるデザインを目指している。当然、マイナーチェンジした「RX」にも採用した。どうだろう、RXの元のデザインに違和感なく溶け込み、10分も見ていると、もともとこうだったと思わせる上手な移植手術と言えるんじゃないだろうか。まぁ元のを10分で忘れるのも問題だが……。
RXは、北米ではレクサス各モデルのなかで最も売れている。現行モデルの登場から3年たつが、実はセダンの「IS」や「ES」よりも売れているレクサスのドル箱なのだ。日本では、SUVの流行は過ぎ去り、販売ランキングの上位30位に食い込むSUVといえば、ひとつ小さいクラスの「マツダCX-5」や、もっと小さいクラスの「日産ジューク」くらい。
だが、レクサスにとってはRXが日本で売れようが売れまいが関係ない。関係者の視線はほぼ北米のみに向けられている。北米市場には各メーカーの500万〜600万円級の高級SUVをまとめて飲み込む力があるということに、あらためて驚かされる。クルマがどんどんアメリカ人好み、中国人好みになっていくのは寂しいけれど、RXのバタ臭さは嫌いではない。
RXには3.5リッターV6エンジン+モーターを搭載した「450h」(4WDとFF)と3.5リッターV6エンジンを搭載した「350」(4WDとFF)、2.7リッター直4エンジンを搭載した「270」(FFのみ)がある。
今回乗った「450h」は4WD車。発生回転数は公表されないが、システムの最高出力は299ps。システムの最大トルクも公表されていないが「350」の最大トルク35.5kgm/4700rpmよりも低い回転域でより大きなトルクを発生することは間違いない。アクセルペダルとエンジンの間にモーターをかまされたら、もうスペックから力強さを想像することは難しいのだが、乗った感じでは、最大トルク40kgm以上のSUVと同等かそれ以上の力強さを感じた。CVTのマナーにも気になるところはない。ハイブリッド車の場合、エンジンとモーターのそれぞれの駆動力を組み合わせて走るが、エンジンとモーターが同時には最高出力を発生しないので、システム出力はエンジンとモーターそれぞれの最高出力を足した数字にはならない。トルクも同様だ。
エコに挑戦したくなる
ドライバビリティー、乗り心地ともに良好だ。発進時には車重2130kgなりの重さを感じさせるが、タイヤが転がり始めてからは軽やかで、実際に速い。速いのだが、鋭い発進加速を2〜3度楽しんだら、不思議なもので今度は発進からできるだけ長い間エンジンを始動させないで走ろうとする努力に興味が移る。積極的にモーターだけで走ろうとするトヨタのハイブリッド車に乗る人ならわかってもらえるのではないだろうか。
「スポーツ」「ノーマル」「エコ」と3モードあるドライブモードのうち、試乗中ほとんどの時間を「エコ」モードで走った。トヨタのハイブリッドの場合、人間がなるべくエンジンを始動させないように努める、いわばチャレンジモードになることも好燃費の一因だと思う。それを面白いと感じる人はハイブリッド車を買っており、面白くないという人はハイブリッドそのものにアレルギー反応を示しているのではないだろうか。自ら購入したわけではなく、社用車、営業車として与えられたと思(おぼ)しき「プリウス」の乱暴な挙動をしばしば目にしてそう思う。
話を戻そう。RXのカタログ上の燃費(JC08モード)は16.4km/リッター。数日間、主に一般道を使って200km程度走った結果は満タン法で12.5km/リッターだった。重さを考えれば健闘していると言ってよいが、今となっては、驚くほどの燃費数値ではない。
先進的で、コストのかさむハイブリッドシステムを採用しているとはいえ、つるしの状態で659万円するモデルなので(テスト車はさらに72万4500円のオプションが装着されていて、731万4500円)、インテリアにもそれなりの品質が求められるというもの。その点、RXはまぁ及第。トヨタ/レクサスだと途端に評価が厳しくなる人が書き手にも読者にもいるが、そういう人じゃなければ、どの部分にも不満は感じないはずだ。
操作系も総じて使いやすい。撮影当日はずっと雨が降っていたが、ベンチレーション機能のおかげで、レザーシートもさらさら。(湿気が)多い日も安心だ。アームレストにひじを置いたままカーナビなどの操作が可能な「リモートタッチ」は、操作性もさることながら、クリック感をもたせた操作感が気持ちいい。こういう“レクサスオリジナル”な部分をすぐやめないで大事に育ててほしい。
ただ、インテリアのベースカラーが黒で、シートカラーがサドルタンというのは、ダックスフントのようでなかなかかわいい……とは思えず、ベースカラーがベージュ系ならタンシートもありだが、黒内装なら黒か落ち着いた赤、もしくは思い切って白に挑戦してほしかった。さらに随所にシルバーとウッドが使われているので、色の要素が多くて少々うるさく感じた。
SUVのトレンドリーダー
RXが他のSUVと決定的に異なる点は、V8ではなくV6+ハイブリッドでプレミアムを表現したことだ。日本にこそガチンコライバルが見当たらないが、北米にはこのクラスのSUVがうじゃうじゃしている。その多くが、安いほうがV6、高いほうがV8という組み合わせをラインナップするのに対し、レクサスは先代RXから上級グレードに得意のハイブリッドを投入した。
RXのハイブリッドは、燃費はそこそこにモーターがドーピング方向に用いられ、ユーザーにV8要らずと思わせるだけの力強さを得ている。気付けば北米でのライバルもこぞってハイブリッドを採用しているではないか。脱原発依存ならぬ脱V8依存という意味では、RXはSUVのトレンドリーダーだ。
SUVというのはCCV(クロスカントリー・ヴィークル)から派生した、非常に現代的な価値観のボディータイプだ。CCVの大きな箱型ボディーはユーティリティーの面で有利だし、そのマッチョな印象はオーナーの虚栄心と安心感を同時に満たす。ただ、本物のCCVだとほとんどのユーザーにとってその過剰な悪路走破性(とそのためにかさむ重量)がムダになる。だからモノコックの乗用車をベースに、見た目だけCCVのようにしたのがSUVだ。“見た目だけ”というのに拍車がかかり、今ではほとんど悪路走破性が備わらない前輪駆動のSUVも増えてきた。
それを嘆かわしいと言いたいわけではなく、先進国においてはクルマという商品がもう成熟しきってしまって、モノのよさよりも企画勝負になってきているという現状を、SUVはよく表している。そして、RXはそういう現代的な価値観を思い切り具現したSUVと言いたいのだ。このクルマに悪路走破性を期待する人はいない。トップグレードの「450h」にもFF車が用意されていること見てもそれは明らかだ。また、時代が燃費を要求したら、ボディーを軽く、小さくするのではなく、さらに重くなるのを覚悟でモーターとバッテリーを加える力業で燃費を稼ぐという、一見矛盾に近いソリューションも、快適であることをできる限り我慢しないアメリカ人好みだ。
善悪ではなく、お客さまが望むなら……という姿勢こそが、RXを初代から北米でヒットさせ、日本でも都市部のユーザーのニーズをうまくとらえている要因に違いない。……などと小難しいこと言わなくても、カッコイイいいじゃん、RX。外国車みたいで。
(文=塩見 智/写真=荒川正幸)
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塩見 智
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