スバル・インプレッサスポーツワゴンI'sスポルト2WD(4AT)【ブリーフテスト】
スバル・インプレッサスポーツワゴンI'sスポルト2WD(4AT) 2001.11.28 試乗記 ……159.8万円 総合評価……★★★ベタベタしないスポーツ系
インプレッサスポーツワゴン。先代から「5ドアハッチ・プラス」のボディをしてスポーツワゴンと呼ぶあたり、個性派メーカーとしてのツボを押さえている。2代目は、“もうちょっと”「楽ちん」「私らしく」「遠くへ」「安心」「エモーション」……といった要求を満たす「MAXI COMPACT」としてウリ出し中。テスト車のペイント「アストラルイエロー」は、2001年9月のマイチェンで追加された「I'sスポーツ」専用色。空力パーツで飾った車体を引き立てる。
等長排気管をもつ自然吸気のボクサーユニットは、静かでスムーズ。出力は100psと14.5kgmと、1230kgの車重には順当なところだが、スポーティなルックスのわりに“走らない”と思ったら、迷わずオートマチックのモードを「スポーツ」に。燃費重視でサッサとシフトアップしていたプログラムが変更されて、俄然、キビキビと走りだす。ギョロ目のフェイス、扱いやすいボディサイズ、プラスαの広さがある荷室と、地味な1.5リッタークラスにあってキャラクターが立っているのは、派手めな色のせいだけじゃない。ベタベタしたいわゆる“女性向け”モデルでないところもイイ。
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【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
インプレッサは、2000年8月23日に、8年ぶりのモデルチェンジを果たした。日常性を重視した5ナンバーのワゴン、走りを進化させるためトレッドを広げ3ナンバーになったセダンと、性格がハッキリ分けられたのがポイント。エンジンラインナップは、ワゴンが、1.5リッター、2リッター、同ターボ、セダンは、2リッターNAとターボとなる。2001年9月10日にマイナーチェンジを受け、グリル等の意匠変更とドライブトレインのリファインを受けた。
(グレード概要)
「I'sスポルト」は、1.5リッターワゴンのスポーティバージョン。ブレーキ冷却ダクト付きのバンパー、大型ルーフスポイラーが装着されるほか、アルミ製ボンネット、15インチアルミホイールなどが奢られる。インテリアでは、MOMO製ステアリングホイール、CDカセット付きラジオ(4スピーカー)、スポットマップランプなどが「I's」との相異点となる。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
デザイン、操作系ともコンベンショナルなインパネまわり。見やすい大きなメーター、シフトポジション表示、ダッシュボード右下に小物入れ、センターコンソールには小銭入れとカップホルダーが備わる。わずかにMOMOのステアリングホイールが、スポーツ&スペシャル感を演出する。
(前席)……★★★★
適度な硬さと豊かなクッション感が同居する、ちょっと贅沢なフロントシート。背もたれ表面の形状もよく考えられていて、サイドサポートが柔らかく張り出したバックレストに背中が優しく収まる。ホールド性じゅうぶん。運転席に、使いやすいラチェットレバー式のハイトコントロールが備わる。
(後席)……★★
スポーツワゴンは、パーソナルなクルマだから、後席は荷物置き場と割り切っているのだろう。前席と比較すると、いささか居心地の悪いリアシート。シートの座面が短く、体がクッションに反発されるので、座っていて収まりが悪い。膝前、頭上の空間は確保される。ヘッドレストは「ノーマル」と「引き出した」ときの2段階の高さ調整が可能となった。
(荷室)……★★★
ワゴンというよりは、5ドアハッチと解すべきラゲッジルーム。床面最大幅133cm、奥行き91cm、天井までは80cm。分割可倒式になった後席を倒せば奥行きは170cm前後に拡大するが、しっかり存在を主張するストラットタワーが原点要素。奥にいくほど高くなる、平らでないフロアが気になるヒトがいるかも。荷室をカバーするパーセルシェルフ(1.6万円のオプション装着)は必ず装着したい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
2001年9月のマイナーチェンジで、ピストンリング、オイルポンプに改良を受け、フリクションを低減した1.5リッターNAボクサー。左右排気管の長さを揃えられるため、「ドコドコドコ……」という水平対向エンジン独特のサウンドは発しない。マニアにはちょっと物足りない? 2010年度燃費基準に合致させるためか、シフトスケジュールはちょっとケチンボ。街なかドライブでは、最大トルク発生回転数4000rpmのはるか手前でギアを上げていくうえ、スロットルペダル操作への反応も鈍いため、おとなしい運転するを強いられる。メリハリを付けたいときは、ATを「スポーツ」にすれば、もうすこしエンジン(回転)を“ひっぱって”くれるので、グッと俊敏さが増す。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
「175/70R14」の「I's」に対し、スポルトは「195/60R15」のタイヤを履く。スバル得意の4輪ストラットの足まわりをもち、まずまず良好な乗り心地と破綻ないハンドリングを実現。いずれも際立ったところはないが、ココロに刺さる不快な要素もない。テスト車はFF(前輪駆動)車だったが、ハンドリングの性格は4WDモデルを踏襲する、と感じた。ステアリング操作へのレスポンスは正確だが、全体に落ち着いた印象。シャキシャキしたところはなく、たとえばコーナリング時にアクセルを抜いてもタックインは穏やかだ。
(写真=阿部ちひろ)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年10月2日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:1464km
タイヤ:(前)195/60R15 88H/(後)同じ(いずれもブリヂストン Potenza RE88)
オプション装備:濃色ガラス
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:718.1km
使用燃料:77.3リッター
参考燃費:9.3km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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