スズキ・エリオX(4AT)【ブリーフテスト】
スズキ・エリオX(4AT) 2001.05.22 試乗記 ……149.6万円 総合評価……★★★★モノシェイプなバックシャン
「軽ナンバーワン」のスズキが放つ5ドア普通乗用車。主戦場たるヨーロッパには、1.3/1.6リッターモデルが輸出されるが、国内向けには、VVT(可変バルブタイミング機構)を奢った1.5リッターオールアルミユニットが積まれる。
「ミニバン」「セダン」「ワゴン」を融合したという欲張りな“モノシェイプ”ボディは、黒いガーニッシュを大きく使ったハッチゲイトが魅力のバックシャン。ただし、サイドビューは、Aピラーを前に出したキャブフォワードデザインを採ることもあって、ちょっとズングリ。
グリップタイプのドアハンドルを引いて乗り込むと、三角形をモチーフにしたインパネまわりにギョッとするが、たしかに室内は広い。特にリアシートは小さなミニバンといっていい。快適。インテリアに独特のセンスの良さを見せるスズキ車らしく、トリム類の品質感は高く、居心地がいい。ヘリンボーン調の生地を使ったベージュ内装はオススメです。
走りに際立ったところはないけれど、新開発1.5リッターツインカムは快活で楽しい。トヨタ・カローラ、ホンダ・シビックといった強力ライバルひしめくなか、斬新な、しかし生活に根ざしたニューコンセプトで斬り込むその意気やよし。惜しむらくは、フロントフェイスにリアほどの個性がないことか。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ミニバンのゆとりある居住性とセダンの走行性能、ステーションワゴンの使い勝手を融合させた」とカタログで謳われるスズキの欧州戦略車。2001年1月23日にデビューした。国内では、カルタス(旧カルタスクレセント)のハッチバックにかわるモデルとなり、「1.5リッター+4AT/5MT」が用意される。車種構成は、ベーシックな「G」、装備を奢った「X」、「X」の4WD版の3グレード。輸出モデルの排気量は、1.3と1.6リッターの2種類。2001年度の輸出台数は3万台を計画する。欧州名は、「Life In A New Age」の頭文字をとって「LIANA」(リアーナ)。まず欧州から、その後北米ほかに拡大する予定だ。
(グレード概要)
「X」は「G」の上級グレード。ルーフエンドスポイラー、ひとまわり大きなホイール、マフラーカッター、ボディ同色ドアミラー&ハンドルなどで、スポーティに装う。フロントドアの窓にはUVカットガラス、リアドア、クォーター、バックドアはスモークトガラスを使用する。運転席シートリフター、前後席アームレスト、MD/CD付きカセットステレオ(2DIN)ほか、装備充実。助手席シートアンダートレイも、Xの専用品だ。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
助手席前のパネル、メーターナセル、ステアリングホイール、センターコンソールなどに「三角のモチーフ」を反復して未来感を出したインパネまわり。テーマは“フューチャーリラックス”だそう。驚きの第一印象とはうらはらに、ミラー、空調等、ボタン、スイッチ類は少なく、操作に迷う余地はない。「X」グレード標準装備の四角く黒いMD/CD付きカセットステレオ(2DIN)の、まあシンプルなこと。ダイヤル式のボリューム調整に、ホッとするヒトも多いのでは。
(前席)……★★★★
さすがに欧州仕様だけあって、たっぷりしたサイズのシート。硬めだが厚いクッション感がいい。1550mmの車高を活かして座面を高めに設定、いわゆるアップライトな着座姿勢をとらせる。運転席には、座面の角度調整用ダイヤルが備わる(助手席はリクライニングのみ)。
(後席)……★★★★
高い天井、四角いボディ形状ゆえ、後席の居住性はすばらしい。高めの着座位置にもかかわらず、頭まわり、足もととも、スペースに不満はない。シートのかけ心地も前席同様によい。小ぶりなアームレスト(カップホルダー内蔵)が付くのはご愛敬。
(荷室)……★★★
床面最大幅130cm、奥行き80cmのラゲッジルーム。右側壁に小物入れ有り。リアシートは6:4の分割可倒式で、ダブルフォールディング可能。背もたれを倒せば奥行きは150cm程度まで延長される。さらに、床下には、深さ10cm前後、幅×奥行き=88×60cmの広さのサブトランクが用意される。バケツ付き。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
1.3リッター直4ユニットのストロークを8.5mmストレッチした1.5リッターエンジン。78.0×78.0mmのスクエアなボア×ストロークをもつ。吸気側に可変バルブタイミング機構を備え、110ps/6000rpmの最高出力と14.6kgm/4000rpmの最大トルクを発生。クランク軸受けの剛性向上、ヘッドとブロックの間にゴムを挟む「フルフローティング式シリンダーヘッドカバー」やサイレントチェーンの採用といった音・振動対策をとる。とりたてて「静粛性」に感銘を受けることはないが、車内に侵入するのは朗らかなサウンドで、不快ではない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
2001年1月31日、デビュー直後に開催されたプレス向け試乗会では、卸したてゆえか“ヨーロピアン”を謳う足まわりがやたらと硬かったが、今回のテスト車はグッとソフトに。5000km余の走行でこなれたか? 乗り心地はむしろイイ。
そもそも「地を這うようなハードなスポーツ走行はしない」コンセプトだが、ためしにカーブの続く山道でトバしてみる。と、いわゆる「アンダー(ステア)の出やすい」ハンドリングのため丁寧な運転を要求される一方、パラレルリンクを用いたコンベンショナルなストラット式リアサスはスロットル操作に素直に反応する。運転していてけっして退屈ではない。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年5月18日から19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:5313km
タイヤ:(前)195/55R15 88V/(後)同じ(いずれもYokohama Advan A-460)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:357.6km
使用燃料:40.0リッター
参考燃費: 9.0km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。
