ランドローバー・レンジローバー Vogue(5AT)【試乗記】
ライバルはSクラス 2002.07.12 試乗記 ランドローバー・レンジローバー Vogue(5AT) ……985.0万円 2002年7月2日、神奈川県は箱根で、3代目となる新型「レンジローバー」の試乗会が開かれた。「悪路走破性と、オンロード性能の両立」を謳う高級SUVに試乗した、webCG近藤俊(兵庫県神戸市出身)と、webCG大澤俊博(東京都千代田区飯田橋出身)が対談形式で報告します。
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迫力の見た目、豪華な内装
3代目となる新型レンジローバーは、先代とくらべてボディが拡大された。全長×全幅×全高=4950(4715)×1955(1890)×1865(1810)mm、ホイールベース=2880(2740)mm(カッコ内は先代)となった。ちなみに、車重は2500kg(Vogue)のヘビー級である。
デザイン上は、水平垂直ラインを基調とするエクステリアデザインや、上下2分割のテールゲートなど、先代のイメージを踏襲。ピラー類をブラックアウトし、あたかも浮かんでいるかのように見える、伝統の“フローティング”ルーフも受け継がれた。
インテリアは多様。トリムに、「チェリーウッド」と「ウォルナット」2種類と、「ファンドリー」と呼ばれるメタル仕上げ1種類。シートは、クロス、ブレンハイムレザー、最も高級なオックスフォードレザーの3種類。シートカラーも6種類(サンドカラーのみカーペットが2種類)用意され、「Made for me」というセミオーダーで、自由に選ぶことができる。
オオサワ:新型「レンジローバー」、実物を見ると大きいですね。
近藤:デカいというより、デカなった、かな。前のんと較べると、全長235mm、幅65mm、高さが55mm大きくて、ホイールベースは140mm延長されたからナァ。
オオサワ:大きさもそうですが、エクステリアデザインも迫力あります。四角いクリアカバーの中に、丸形ライトが2個収まるヘッドライトが特徴的。
近藤:水平、垂直基調のボディラインや、クラムシェル状ボンネットなど、レンジローバーの“伝統”はそのままやから、一目で「レンジローバーや」とわかる。ところで、内装はどない思た?
オオサワ:レンジローバーに乗るのは初めてなんですが、こんなに高級感溢れているとは思いませんでした。もっとワイルド系かと思ってたので。試乗車はトップグレードの「Vogue」(ヴォーグ)で、内装が最も豪華な仕様ですが。
近藤:ウォルナットのトリムに濃いブルー「ネイビー」の本革シートが、カジュアルで新鮮やった。英国車ぽい内装ていう視点でみると、サンドと呼ばれる「ベージュ」がピッタリかなあ。
オオサワ:ちなみに、エントリーグレードの「SE」(受注生産、795.0万円)とヴォーグとの違いは内装だけです。ところで新型のインテリアは、「Made for me」というセミオーダーができるんですよ。
近藤:12色のボディーカラー、3種類のトリム、3種類のシート素材と7種類の色から自由に選べるそうやね。自分で決めれへん人には、デザイナーお勧めの「デザイナーズチョイス」からも選べるし。
オオサワ:迷ってみたいですねえ……。
快音を発するSUV
ランドローバー社がBMWの傘下だったころに開発がスタートした新型のエンジンは、BMW製4.4リッターV8DOHC(286ps/5400rpm、44.9kgm/3600rpm)。トランスミッションは、レバーの上下でギアチェンジできる「コマンドシフト」付き5段AT。もちろん本格オフローダーの証、副変速機を備え、悪路走行時にはローレンジモードに切り替え可能。
先代との最も大きな違いは、ボディ構造と足まわり。ラダーフレームシャシーとリジッドサスペンションから、モノコックフレームと4輪独立懸架サスペンションになったことだ。形式は、前マクファーソンストラット、後はダブルウィッシュボーンを採用した。
オオサワ:運転席は、あたりまえですがヒップポイントが高くて見晴らしがいい。これがいわゆる「コマンド・ポジション」というやつですね。幅は2m近いのに、ボンネットがちゃんと見えるから取りまわしがいい。
近藤:ボディのデカさを意識しないで運転できる。電動シートは、ヘッドレストやランバーサポートも調節できるし、ドライビングポジションはバッチリ。ちょっと硬めのクッションで、お尻に吸い付くような座り心地やった。
オオサワ:走ってみての印象はどうです?
近藤:まずエンジンがスムーズなのに驚いた! まるでスポーティセダンのようなエンジンや。低回転からトルクがあって、2.5トンもある車重を感じさせない。アクセルを踏み込んだときのエンジン音に、ザラつき感がなくて、“快音を発するSUV”やね。
オオサワ:BMWの4.4リッターV8ですからね。急勾配での燃料供給確保や、50cmまでの河を渡れるよう、アルミヘッドとブロックの防水性を高めたり。“極限状態”での使用に耐えるべくランドローバーがチューンを施しました。
近藤:排気量は、先代の4552ccから4398ccに縮小されたけど、最高出力286ps/5400rpm、最大トルク44.9kgm/3600rpmで、10%ほどパワーアップしてる。
オオサワ:乗り心地が、まるで高級サルーンのようにフラットで滑らかなのにも驚きました。目隠しして乗ったら、4×4だと気づかないかも。
近藤:従来のラダーフレームとリジッドサスペンションを捨てて、ボディ一体型モノコックシャシーと、4輪独立懸架サスペンションを採用したことが利いてるんかな。
オオサワ:シャシー設計を担当した、ランドローバー社のジョン・バチェラーエンジニアの説明によると、まさにその通りだそうです。4輪独立懸架は、バネ下重量を軽くできるって。形式は、フロントがマクファーソンストラット、リアはダブルウィッシュボーンになりました。
近藤:電子制御エアスプリング採用で、車高も調節できるし。高速走行時は−25mm、停車時に45mm車高が下がるのは、乗り降りのしやすくなって、気が利いてるナァ。
悪路走行もバッチリ
ニューレンジローバーは、車両の安定性を高める「DSC」(ダイナミックスタビリティーコントロール)、4輪ABS+EBD、CBC(コーナリングブレーキコントロール)とブレーキアシストなど、数多くの電子制御システムを備える。HDC(ヒルディセントコントロール)は、クロスカントリー走行時に遭遇するような急勾配の下り坂を下る際、車速を4km/hに自動制御するシステムだ。
近藤:今回の試乗会は、デコボコ道や急斜面の登り下りなど、いわゆるクロスカントリー走行できる試乗コースが用意されてたね。
オオサワ:トランスミッションに備わるローレンジモードと、最大50mm高くなる車高のおかげで、ガンガン走れました。サスペンションストロークが、先代より前で50mm、後ろが100mm増えて、悪路走行時の乗り心地もよくなったそうです。
近藤:感動したんは、下り急勾配で速度を自動調節してくれる「HDC」(ヒルディセントコントロール)。ローレンジにいれてHDCをオンにすれば、どのギアでもアクセルもブレーキもふまんと4km/hを維持してくれるから、安心して坂を下れる。
オオサワ:これを使えば、免許とりたての人でも安心ですね。片手運転でも(きっと)大丈夫!
近藤:ほかに、車両の安定性を高める「DSC」(ダイナミックスタビリティーコントロール)、ブレーキにはABSとEBDに、ブレーキアシストなど、電子制御システムも豪華や。
ところで新しいレンジローバー、ライバル車に4×4のベルセデスベンツ「Mクラス」や「ゲレンデヴァーゲン」、BMW「X5」シリーズに加えて、メルセデスベンツの「Sクラス」や、BMW「7シリーズ」も入ってたよナァ。
オオサワ:ランドローバージャパン広報、森川修ジェネラルマネージャーさんのお話だと、「快適性やオンロード性能の向上によって、高級サルーンをライバルにしうるクルマになった」とのことです。今回乗った「Vogue」の価格は、985.0万円。ベンツなら「S430」(960.0万円)、BMWなら「745i」(990.0万円)に匹敵する価格ですし。
近藤:乗っても高級サルーンみたいやからね。内装も文句なく豪華やし。ターゲットユーザーは、35歳から60歳くらいで高学歴の男性、年収2000万円以上でクルマを複数台所有……。
オオサワ:別世界のハナシですね……。近藤部長、1台どうです?
近藤:ウチの給料で? どないせーっちゅーねん!
(写真=ランドローバージャパン/2002年7月)

webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。
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