メルセデスベンツCクラス スポーツクーペ&ステーションワゴン【海外試乗記】
『覇権と積載』 2001.02.10 試乗記 メルセデスベンツCクラススポーツクーペ&ステーションワゴン メルセデスの拡大路線は止まらない。「A」クラスで未開地を切り開き、「S」を敢えて現実的なサイズに落とし、「C」でまた好評を博したおかげで、過去7年間に全世界での販売は2倍となり、昨年には105万2000台を売り切った。 もちろん、抱え込んでしまったクライスラーという重荷と、それに起因する株価の低迷という悩みはあるが、それでも何よりマーケットが大事と、2000年のパリサロンではCのスポーツクーペを、2001年のデトロイトショーではワゴンを発表、ともにまとめて夏前から世界に放出し始める。 フランスはニースで開かれた試乗会からリポートをお届けする。![]() |
![]() |
![]() |
良いけれど、疑問もあるクーペ
つい2週間前まで氷が張っていたというニース、この日は快晴で温度は15度と絶好の日より、その中で走ったスポーツクーペは、確かにかなり気持ちがいいクルマだった。ただし……は後で書く。
ホイールベースはCクラスそのままに、前後が切りつめられたクーペボディは、ワイパー、ドアミラー、ドアハンドル以外、セダンとの共通パーツは1カ所としてないという。ハッチバックで、ハイデッキによる視野阻害を改善すべく、小さなスポイラー下に加えられたグラスエリアやその両端のテールランプの形、どこかで見たような気がした。記憶の糸を辿ったらマツダのファミリアネオだった。
このボディの売り物は、クーペでも広いリアルーム(確認した)と、リアの上もグラスエリアになっているために、前のガラスサンルーフと合わせて開放感が楽しめるオプションの「パノラマサンルーフ」で、南仏ではそれなりに効果的だった。
エンジンは各種の4気筒があるが、試乗したのは200のコンプレッサー(163psと23.5kgm)と230のコンプレッサー(197psと28.6kgm)だった。ギアボックスは、後者が普通のティップ付き5AT、前者は新しい「シーケントロニック」なるクラッチレスの6MTである。
アルファの「セレスピード」に似たシーケントロニックは、まだ詰めが甘い。タイムラグは中途半端だし、特に3速と2速のギア比が離れているのにアルファのような「中吹かし」が入らないから、ドーンッとダウンシフトする。ショックが大きい。やはりC230に乗ったときの、トルクコンバーターを持ったATのティップでシフトした方がよかった。
それを除けば気持ちよく走った。短くなったボディゆえか、より剛性感が高まった感じだし、ずっと軽快に振りまわすことができる。「エボリューション」なるスポーティモデルは、225/40ZR17という太いサイズのピレリ・Pゼロ「ロッソ」を履いていたにも関わらず、乗り心地もいい。
ただし、それでも個人的に好きになれなかった。どうしてあのメルセデスが、BMWコンパクト憎しと、ここまで意地になってマーケティング優先モデルをつくらなければいけないのだろうか、と思ったからだ。あまりにも覇権をめざすと、イメージを崩すと思う。
![]() |
![]() |
巧妙なワゴン
スポーツクーペと反対に、個人的に買ってもいいかと思わされたのがワゴンである。さすがは2代目だから慣れている。前席上から後ろにスウィープするルーフラインにも、そしてかなり寝た最後端のピラーにも関わらず、783リッターという最大積載スペースは旧型よりも11リッター増えているという。
エンジンは、これはセダンとまったく同じラインナップ。従って4気筒だけでなく、2.6と3.2のV6も揃っている。前述のシーケントロニックも付くが、この日は遠慮して5ATだけに乗った。
Cクラスワゴンは、なかでも240、つまり2.6リッターモデル(名前と排気量が一致しない)がいい。それは確かに3.2の方が強力だが、このモデュラーユニットは年々改善されており、2.6ぐらいのバランスが一番好ましい。
ただしワゴンゆえ、路面によっては、特に低速でリア・サスペンションがやや硬く感じる。つまり積載量を考えた、荷物を積んだときに合わせた設定だが、やはりEワゴンのようなオートレベリング機構は欲しいと思う。
とはいえ、サイズといい、つくりといい、本当に自分で欲しくなったクルマである。
両者とも日本導入は夏から秋、スポーツクーペは「200コンプレッサー+5AT」が主体で、同エンジンのセダンよりはやや安くなるはず。ワゴンの方はセダンと同じライナップのエンジンを揃え、やや高い価格になるだろう。
(文と写真=webCG大川悠)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
-
ロイヤルエンフィールド・クラシック650(6MT)【レビュー】 2025.9.6 空冷2気筒エンジンを搭載した、名門ロイヤルエンフィールドの古くて新しいモーターサイクル「クラシック650」。ブランドのDNAを最も純粋に表現したという一台は、ゆっくり、ゆったり走って楽しい、余裕を持った大人のバイクに仕上がっていた。
-
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】 2025.9.4 24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
NEW
MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル(FF/7AT)【試乗記】
2025.9.8試乗記「MINIコンバーチブル」に「ジョンクーパーワークス」が登場。4人が乗れる小さなボディーにハイパワーエンジンを搭載。おまけ(ではないが)に屋根まで開く、まさに全部入りの豪華モデルだ。頭上に夏の終わりの空気を感じつつ、その仕上がりを試した。 -
NEW
第318回:種の多様性
2025.9.8カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ステランティスが激推しするマイルドハイブリッドパワートレインが、フレンチクーペSUV「プジョー408」にも搭載された。夜の首都高で筋金入りのカーマニアは、イタフラ系MHEVの増殖に何を感じたのか。 -
NEW
商用車という名の国民車! 「トヨタ・ハイエース」はなぜ大人気なのか?
2025.9.8デイリーコラムメジャーな商用車でありながら、夏のアウトドアや車中泊シーンでも多く見られる「ハイエース」。もはや“社会的インフラ車”ともいえる、同車の商品力の高さとは? 海外での反応も含め、事情に詳しい工藤貴宏がリポートする。 -
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス(前編)
2025.9.7ミスター・スバル 辰己英治の目利き「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のなかでも、走りのパフォーマンスを突き詰めたモデルとなるのが「ゴルフR」だ。かつて自身が鍛えた「スバルWRX」と同じく、高出力の4気筒ターボエンジンと4WDを組み合わせたこのマシンを、辰己英治氏はどう見るか? -
ロイヤルエンフィールド・クラシック650(6MT)【レビュー】
2025.9.6試乗記空冷2気筒エンジンを搭載した、名門ロイヤルエンフィールドの古くて新しいモーターサイクル「クラシック650」。ブランドのDNAを最も純粋に表現したという一台は、ゆっくり、ゆったり走って楽しい、余裕を持った大人のバイクに仕上がっていた。 -
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。