ボルボ・クロスカントリー2.4T(5AT)【ロードインプレッション】
『次なる選択肢』 2000.10.10 試乗記 ボルボ・クロスカントリー2.4T(5AT) ……617.3万円 千歳全日空ホテルの駐車場には、ボルボ・クロスカントリーが黒い鼻面を揃えて並んでいた。何台あるのかと数えていると、「全部で30台です」と、そばにいたボルボの人が教えてくれた。 1泊2日のプレス向け試乗会を3回。のべ90台、100人をはるか超えるジャーナリストとカメラマンを招いての一大イベントである。 「なんだって、そんなに気合いを入れてるんですか?」 「それだけの価値があるモデルだからでしょう」 拡大 |
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よりゴツく、クロカンぽく
ボルボ・クロスカントリーは、同社の中堅ワゴンV70をベースに、最低地上高を55mm増やして215mmにした「SUVとエステートの融合」を謳うモデルである。パワーソースとして、2.4リッター「ライトプレッシャー」ターボユニット(200ps、29.1kgm)を搭載、5段ATを介して4輪を駆動する。
日本では、2000年9月20日から販売が開始された。装備の違いによって、「クロスカントリー」(490.0万円)と「クロスカントリー2.4T」(530.0万円)の2グレードが設定される。ステアリングホイールの位置は、基本的に右。後者のみ、左ハンドルも選択可能だ。
ボルボカーコーポレイション・クロスカントリー・テクニカルプロジェクトリーダーのシルヴィア・ガルスドルフは語る。「クロスカントリーの最初の開発計画は1993年に立案されましたが、『市場がない』ということで中止になりました」
しかしその後、北米ではトヨタRAV4、ホンダCR-V、そして96年デビューのレク
サスRX300(トヨタ・ハリアー)など、乗用車ベースのSUVの人気が爆発! メルセデス、BMW、ホンダ、そしてポルシェまでもが追従することになる。
ボルボもいちはやくプロジェクトを再開、97年に「V70XC AWD」こと初代クロスカントリーを市場に送りだした。
「年間販売台数は1万5000台程度の見込みでしたが、98年には2万1500台も売れる大ヒットになりました」と、ガルスドルフ。「約80%がアメリカ、16から17%がヨーロッパの販売」だったという。「しかし、欧州や日本では、従来のエステートと較べ、違いがなさすぎるという意見が大勢を占めました」
そこで、「車高を上げたワゴン」というコンセプトはそのままに、ニューV70のスプリング基部を延ばし、よりゴツく、クロカンぽいボディを載せた2代目クロスカントリーが登場したワケである。
「ワイルド」バット……
クロスカントリーのボディ下部を、無塗装の黒い樹脂製バンパーと、サイドプロテクションモールがグルリと取り囲む。細かいキズを目立たなくするのと、タフなルックスを演出するために。荷室側面の窓の下部には、カラードモールが付けられ、「すこしでも背が高く見えるよう」工夫された。専用デザインの太いルーフレールが力強い。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=4735(+25)×1860(+45)×1560(+90)mm(カッコはV70との比較)。高くなった車高によるロール安定性の低下を避けるため、トレッドは、前/後=90/60mm広げら、1610/1550mmに。また、215/65R16と、ベースモデルより太く厚いタイヤを装着するため、ホイールハウスが広げられ、ホイールベースも10mm長い2765mmとなった。
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テスト車の「2.4T」には、オプションの本革内装が奢られる。トリムの縫製に、帆船のセイルに使われる「クロスステッチ」を採用したのがジマンだ。洒落たタフネス。
前席間のトンネルコンソールには、助手席の乗員用にハンドグリップが設けられる。これを掴むのは、悪路走行時に限りたい。
内外ともに、「ワイルド・バット・下品じゃない」クロスカントリーである。広報資料には、「SUVのコンセプトがアメリカ的であるのと同じように、クロスカントリーはきわめてスウェーデン的な車である」と記される。
つまり、北欧のメーカーはこう言いたい。
「ちょっと違うのヨ」。
ビスカスカプリングと4輪TRACS
左右に木々が鬱蒼と茂った林道を行く。
クロスカントリーの最低地上高は215mm。この数字は、ジープチェロキーの200mm、レンジローバーの210mmをもしのぐ。
もちろん、荒涼とした「本当の」オフロードでは、サスペンションのストローク量、デパーチャーアングル、そして4WDシステムの優劣といった総合力がモノを言うが、今回のような比較的平坦な未舗走路では、じゅうぶんなロードクリアランスと、1560mmという、いわゆるSUVより低い車高がありがたい。
2.4リッター低圧ターボは、200ps/6000rpmの最高出力と、29.0kgmの最大トルクを、わずか1800rpmから発生する。ローからサードまでのギアを低めに切った5段ATの恩恵もあって、発進加速は悪くない。上級グレードたる「2.4T」には、「ギアトロニック」ことシーケンシャルシフトが可能なスポーツモードが備わる。
シャシーは、フロントにハイドロリックブッシュを使用したマクファーソンストラット、リアにはパッシブステア機能を盛り込んだマルチリンク方式が採用された。徹底して安定方向に振られた足まわりで、普段は、ステアリングやペダル操作より、今日釣ったトラウザのサイズや、次回のウィンドサーフィンのゲレンデをどこにするかといったことに意識が向かう運転感覚である。
4輪駆動システムは、基本的に先代からのキャリーオーバー。リアアクスル直前にビスカスカプリングを配したオンデマンド型で、通常は駆動力の約95%が前輪に送られる。
一方、新たなデバイスとして、ABSを発展させたトラクションコントロール「4輪TRACS」が搭載された。空転するタイヤにブレーキをかけ、その分の駆動力をトラクションのかかる車輪に配分するシステムである。デフロックも、4輪TRACSで替えられる。
ちょっと背の高いボルボ
ジャリ道を快調にトバす。
ニューモデルは、ボディの剛性向上に意が払われ、特にテイルゲイト付近の補強に余念がない。最後尾のクロスメンバー(床面左右にわたされる骨組み)には硬いボロンスチールを使用、ゲイト周辺のフレームには複合組織鋼を、それもスポット溶接だけでなく、面で接合させるため接着剤をも使う手の込みよう。「他のメーカーのようにテイルゲートを前方に傾斜させれば自然に剛性が増します。しかしそれでは荷室容量が減るので、ボルボとしては、この点について一切妥協するつもりはありません」と、広報資料も誇らしげ。ラリーにでも出場しないかぎり、ワゴンボディゆえの不満を感じることはないだろう。
各部フレームに剛性確保を負ったため、ハッチゲートにプラスチック、ボンネットにアルミを用いて、軽量化を図ることができた。とはいえ、車重は1700kg。不整路ではなかなか止まれない……ということは、後で身をもって知りました。あー、コワかった。
万が一の備えとして、クロスカントリーの前席エアバッグは、衝撃の度合いによって「70%」か「フル」に膨らむかを選ぶ「デュアルモード」となった。側面衝突時には、0.012秒で作動する、Bピラーに埋め込まれたサイドイアバッグとあわせ、前後窓枠上端からインフレータブルカーテンが0.0025秒で膨張、乗員の頭部を保護する。車外に放出されることも、効果的に防ぐという。
ボルボ・クロスカントリーは、結局、「ちょっと背の高いボルボ」である。当たり前だが。いかつい外観はあくまで演出で、その実、ノーマルのエステートモデルとほとんど変わることなく接することができる。
だから、本格派クロカンはヘヴィ過ぎると乗用車ベースのSUVに移ったヒトの、次なる選択肢として適当だ。顧客が欲しいのは、「ワイルド」という記号なのだから。
それなら、普通のワゴンでもいいではないか、と思わないでもないが、資本主義社会における消費者の心理は複雑なものなのだ。
(文=web CG 青木禎之/写真=河野敦樹/テスト日=2000.9.20)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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