フォード・エクスプローラー XLTエコブースト(FF/6AT)【試乗記】
V6あやうし 2012.04.02 試乗記 フォード・エクスプローラー XLTエコブースト(FF/6AT)……440万円
ダウンサイジングした2リッター直噴ターボエンジンで前輪を駆動する「エクスプローラー」の低燃費仕様「XLTエコブースト」で、雪の残る北陸を旅した。
過去をさらに遠くへ
2リッター直4ターボを積んだ「フォード・エクスプローラー XLTエコブースト」に乗ると、「大排気量多気筒エンジンを看板にしたアメリカンSUVとは何だったのか?」という疑問がムクムクと湧いてくる。「2.0 EcoBoost(エコブースト)」と呼ばれる、ブルーオーバルの新しいグローバルエンジンがもたらす動力性能に、何ら不足を感じなかったからだ。
2011年5月24日から日本での販売が始まった現行エクスプローラーは、初代以来続いてきたトラックベースの流れを完全に断ち切ったモデルである。具体的には、「モノコックボディー」「横置きエンジン」「4輪独立式サスペンション(先代から)」によって、燃費向上に不可欠な軽量化と、路上での快適性向上が図られた。全長と全幅がそれぞれ5mと2mを超すという大柄なボディーながら、身にまとったモダンなデザインが、見る人に間延びした印象を与えない。余裕のあるサイズを生かしたサードシートを持ち、乗車定員は7人であることも見逃せない。
日本市場のエクスプローラーに当初ラインナップされたエンジンは、3.5リッターV6(294ps、35.2kgm)のみだった。先代の4.6リッターV8に匹敵するアウトプットを得ながら、燃費は「従来のV6エンジンより20%以上向上している」とうたわれる新開発エンジンである。装備の違いで、「XLT」(440万円)と、上級版「リミテッド」(530万円)が用意された。
9カ月遅れで日本に導入された2リッター直4ターボ搭載モデル(440万円)は、過去を断ち切った新世代エクスプローラーを、さらに次のステージへ押し上げる推進役というわけだ。
黙々と仕事するエンジン
「エコブースト・エンジン」は、フォードが手がける新しいパワーユニットの、いわば愛称。ワールドワイドに展開されるエンジンで、2リッター直4ターボに加え、3.5リッターV6ターボの投入もささやかれる。
今回導入された直列4気筒ユニットは、排気量1998cc。ボア×ストローク=87.5×83.1mm。過給機の力を借りて、243ps/5500rpmの最高出力と37.3kgm/3000rpmの最大トルクを発生する。旧モデルの4リッターV6(213ps、35.1kgm)をパワー、トルクともに上回り、現行の3.5リッターV6(294ps、35.2kgm)と比較しても、トルクが太い。しかも1000rpm低い3000rpmから最大トルクを生み出す、いかにもターボらしい特性をもつエンジンだ。
2リッターエコブーストは、「ターボバンで離陸するかの加速」を楽しむ代わりに、自然吸気と見まがう(!?)ばかりのフィールで黙々と低燃費化に貢献するパワーユニットである。ツインカム16バルブのヘッドメカニズムは、吸気、排気側ともバルブの開閉タイミングを連続的に変える「Ti-VCT」を搭載。コモンレール式のインジェクターを備え、燃料を直接シリンダーに吹き込むガソリン直噴ユニットである。燃料噴射のタイミングを1秒間に最大300回(!)も調整し、噴射圧力は220psiから2150psiの間でコントロールする。精緻このうえないシステムの恩恵で、かつては過給機付きエンジンの悩みのタネだった異常燃焼を抑え込み、圧縮比は9.3:1を実現。内燃機関としての効率を追求する。ターボチャージャーそのものの低慣性化に務めていることは言うまでもない。
車重2トンを超えるエクスプローラー XLTエコブーストの、日本でのカタログ燃費(10・15モード)は、8.1km/リッターと記載される。
都会派SUV
新世代エンジンを積んだエクスプローラー XLTエコブーストは、少々もてあまし気味なボディーサイズではあるが、クールな外観通り、どちらかというと都会派SUVである。
2リッターターボがもたらす動力性能は、V6モデルと遜色ない。この日も、スタッフとフォトグラファー、カメラ機材を積んで、東京−長野間のロングツーリングを難なくこなした。ただ、「曲がり」が多い田舎道となると、ATセレクターのボタンで変速できる「セレクトシフト」を持たないことがうらめしく感じられることがあった。
また、4WDのV6モデルに対し、XLTエコブーストは、いまのところFFのみの設定となる。当然、トンネルコンソールには、「雪道/砂地/泥道/ノーマル」を切り替える、「テレイン・マネージメント・システム」のダイヤルが見当たらない。雪が残る長野の道でも、9割方は問題ない。ただ、別荘地の急な登り坂で、どうしても上れない場面に出くわした。4WDモデルを購入する理由のひとつに、「最後の100m」が挙げられることがある。雪かきがなされる公道は大丈夫だけれど、私邸へ至るわずかな道でスタックする恐れがあるので「4輪駆動が必要」というわけだ。
「最後の100m」を気にすることさえなければ、XLTエコブースト、V6 XLTと同じ価格で、燃費のいいエンジンと本革内装を手に入れることができる賢い選択だ。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。








































