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フォード・エクスプローラー タイタニアム(4WD/6AT)

これぞSUVのお手本 2016.03.24 試乗記 佐野 弘宗 「フォード・エクスプローラー」の最上級モデル「エクスプローラー タイタニアム」に試乗。高効率をうたうターボエンジンや充実の装備がもたらす、走りの質をリポートする。

トップにしてラストのモデル

2016年1月末にフォードの日本撤退が発表されてから、それ以降のフォードの新車投入計画はすべて白紙となった。というわけで、2015年末に発表されたこのクルマが、日本におけるフォード正規モデル最後のニューモデルということになる。ああ、なんもいえねえ(泣)。

それはともかく、この3.5リッターV6直噴ターボ(フォード流にいうと「エコブースト」)を積んだエクスプローラー タイタニアムは、先代にあった4.6リッターV8に相当する最上級エクスプローラーということになる。

エクスプローラーがエンジンを横置きするFFレイアウトを採って、パワートレイン構成を、先代のV8とV6からV6と直4にダウンシフトした背景には、リーマンショック真っただ中の開発時期も無関係ではないだろう。

そんな現行エクスプローラーの車体に、米本国ではじめて3.5エコブーストが搭載されたのは2013年のことだ。標準のエクスプローラーとは一線を画す「エクスプローラー スポーツ」という武闘派モデルに搭載された。そして、先ごろのビッグマイナーチェンジで、そのスポーツが正式にエクスプローラーシリーズに組み込まれると同時に、もう1台、同じエンジンを積む最上級ラグジュアリーグレードを設定した。それがこのタイタニアムである。

ちなみに、タイタニアムという名は、国際的にはフォード乗用車に共通する最上級グレードと位置づけられるが、米本国のSUVだけは例外。北米のエクスプローラーでは、同じモデルに「プラチナム」というグレード名が与えられている。クルマそのものの内容はタイタニアムもプラチナムも基本的に同じだ。

日本では2011年5月にデビューした、4代目「フォード・エクスプローラー」。現在販売されているのは、マイナーチェンジを経た後期型である。今回は、2016年3月に発売された、その最上級モデル「タイタニアム」をテストした。
日本では2011年5月にデビューした、4代目「フォード・エクスプローラー」。現在販売されているのは、マイナーチェンジを経た後期型である。今回は、2016年3月に発売された、その最上級モデル「タイタニアム」をテストした。 拡大
「歴代フォードで最も高品質なインテリアを目指して作りこんだ」とアピールされる、「エクスプローラー タイタニアム」のインテリア。上質なレザーやウッドがおごられる。
「歴代フォードで最も高品質なインテリアを目指して作りこんだ」とアピールされる、「エクスプローラー タイタニアム」のインテリア。上質なレザーやウッドがおごられる。 拡大
「エクスプローラー タイタニアム」には、「デュアルパネルサンルーフ」が備わる。フロント側(写真左側)は電動開閉式。
「エクスプローラー タイタニアム」には、「デュアルパネルサンルーフ」が備わる。フロント側(写真左側)は電動開閉式。 拡大
マイナーチェンジでデザインが大きく変わった「エクスプローラー」のフロント周り。「タイタニアム」には、メッシュタイプの専用グリルが装着される。
マイナーチェンジでデザインが大きく変わった「エクスプローラー」のフロント周り。「タイタニアム」には、メッシュタイプの専用グリルが装着される。 拡大
フォード エクスプローラー の中古車

ついててうれしい電動装備

インテリアは、アメリカンらしい豪華さだ。サードシートが電動収納式となることやレザーシートの前席にヒーターとクーラー、そしてマッサージ機能まで内蔵されることは、昨2015年秋に上陸済みの「リミテッド」と共通である。

タイタニアムではそのうえで、レザーが柔らかい肌ざわりのニルヴァーナレザーとなって、それがダッシュボードにまであしらわれて、加飾パネルはアルミと木目による本物の素材となる。さらに、メーターパネルがフル液晶となることや、最上級モノの500Wオーディオシステム、ウッドとレザーのコンビとなるステアリングホイールなどはタイタニアム専用という。

モノコック構造をいかして、低床ながらも伝統的クロカン風に小高いシートポジションは、エクスプローラーの美点である。今回の発見は、エクスプローラーではタイタニアムとリミテッドにつく電動スライド調整式ペダルが、私のように身長のわりに手足の短い日本人には、意外なほど重宝されることだった。

しかも、私のようなメタボ体形だと、自分なりにハズせないシートバック角度というものもあったりして、腰の角度と手足のリーチのすべて満たすドライビングポジションを見つけるのに難儀することも少なくない。その点、このクルマのように、ステアリングのリーチに加えてペダルまで前後してくれると「そそ、これよこれ!」というドラポジにすっと落ち着く。電動調整ペダルはまだポピュラーな装備ではないが、なぜ、これがもっと当たり前に定着しないのかが不思議なくらいである。

60:40分割式の2列目シート。中央席を除く左右席には、シートヒーターが備わる。
60:40分割式の2列目シート。中央席を除く左右席には、シートヒーターが備わる。 拡大
「エクスプローラー タイタニアム」は7人乗り。3列目には、50:50分割式の2人掛けシートが用意される。
「エクスプローラー タイタニアム」は7人乗り。3列目には、50:50分割式の2人掛けシートが用意される。 拡大
インフォテインメントシステム用のタッチパネルは8インチ。オーディオは、ソニー製のものが採用されている。
インフォテインメントシステム用のタッチパネルは8インチ。オーディオは、ソニー製のものが採用されている。 拡大
センターコンソールに備わる、走行モードのセレクター。滑りやすい下りの斜面で車速を制御するヒルディセントコントロールのスイッチも含まれる(セレクター中央部)。
センターコンソールに備わる、走行モードのセレクター。滑りやすい下りの斜面で車速を制御するヒルディセントコントロールのスイッチも含まれる(セレクター中央部)。 拡大

特筆すべきV6エンジン

現在のフォードは、マスタングなどの趣味性の高いクルマにV8を残す以外は、この3.5エコブーストが実質的なフラッグシップエンジンという扱いだ。フォードから2016年発売予定のスーパースポーツカー「GT」も、この3.5エコブーストを積む。

額面上のパワーとトルクはなるほど4.5~5リッター級で、さすがに2.3トン級のエクスプローラーでは十二分に速いが、暴力的なモンスターというほどでもない。

3.5エコブーストで印象的だったのは、そんなことより、その静かさと滑らかさ、そして扱いやすさである。リミットの6000rpmまで笑ってしまうほどフラットトルク。ためらいを見せる回転域は本当に皆無で、じつにキメ細かい回りかたをする。数ある最新V6ターボのなかでも、これほど静かで滑らかなエンジンはそうないだろう。

さらには、まるで右足とエンジン回転計が直結したかのような、超リニアなレスポンスがたまらない。それと組み合わせられる6ATもタイトにロックアップしてくれるので、スロットルオフ時のエンジンブレーキがドンピシャ。これほどの重量級なのに、ブレーキペダルを踏むことを迫られる頻度が驚くほど少ないのだ。

エクスプローラー自体も、3.5エコブーストのパワーと重量をもてあましている感はまるでない。フルスロットルで突進しても、車体や室内調度がビリつくこともなく、とんでもないトルクを4WDが黒子に徹したままシレッと支配しきる。乗っている人間はなんのコツも要求されないのだ。

車重は絶対的には重いが、意外なほど良好な前後重量バランスもあって、この史上最速エクスプローラーは、市街地でも高速でも山坂道でも、拍子ぬけするほど安定して、イージーかつ上品に走ってしまう。これは武闘派とは正反対の乗り物である。

「エクスプローラー タイタニアム」の駆動方式は4WD。タイヤの空転が発生しない通常の走行においては、ほぼ100%のトルクが前輪に伝達されている。
「エクスプローラー タイタニアム」の駆動方式は4WD。タイヤの空転が発生しない通常の走行においては、ほぼ100%のトルクが前輪に伝達されている。 拡大
吸排気独立可変バルブタイミング機構が備わる3.5リッターV6直噴エンジン。最高出力370ps、最大トルク48.3kgmを発生する。
吸排気独立可変バルブタイミング機構が備わる3.5リッターV6直噴エンジン。最高出力370ps、最大トルク48.3kgmを発生する。 拡大
メーターパネルには、アナログデザインの10インチカラーディスプレイが採用されている。
メーターパネルには、アナログデザインの10インチカラーディスプレイが採用されている。 拡大
「エクスプローラー タイタニアム」はシフトパドルを装備。スポーティーな走りが楽しめるとアピールされる。
「エクスプローラー タイタニアム」はシフトパドルを装備。スポーティーな走りが楽しめるとアピールされる。 拡大

レアなお宝になりうるクルマ

もうひとつ、今回の試乗で目からウロコが落ちる思いだったのが、シートのマッサージ機能。最近では、マッサージ機能はときおり見かけるが、シートバックがウニウニ動くだけの気休めにしかならないタイプが大半だ。

エクスプローラーのそれもシートバックは他車とたいして変わりないが、加えて座面中央にも4分割(それぞれ右尻、左尻、右もも、左ももを担当)で上下するマッサージ機能がつく。この座面マッサージは、自分の体重で体が押さえつけられることもあって、思わず「おお、効くうぅぅ……」と声がもれてしまうほどだったことを、最後に報告しておく。

さて、エクスプローラー タイタニアムはフォードの日本撤退発表直前に、いくばくかの台数が正規輸入された。その輸入分は、もちろん、フォードの正規ディーラーできちんと販売されている。

現時点で市中在庫がどれほど残っているかは不明だが、大フォードが「日本でのサポートもきちんとやる」と宣言している以上、投機目的でもなければ、買って後悔することはないだろう。エクスプローラーは今後も並行輸入で入ってくる可能性も高いが、近い将来「正規のタイタニアム」がレアなお宝物件に……なんて勝手な希望的観測もできる。

いやホント、エクスプローラーはステキなクルマである。世界的評価を受けるエコブーストはもちろん、スミズミまで行き届いたサービス精神に、走りのリズム感まで突き詰めたダイナミクス性能……と、エクスプローラーはまさにSUVのお手本といえる一台だ。日本から撤退するとはいえ、エクスプローラーをきちんとベンチマークしないようでは、日本メーカーもいいSUVはつくれないと思う。

(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎)

「エクスプローラー タイタニアム」の運転席と助手席には、シートヒーターとマッサージ機能が備わる。
「エクスプローラー タイタニアム」の運転席と助手席には、シートヒーターとマッサージ機能が備わる。 拡大
マシン切削加工が施された、「エクスプローラー タイタニアム」の20インチアルミホイール。テスト車には、ハンコックのタイヤ「ヴェンタスS1 ノーブル2 プラス」が組み合わされていた。
マシン切削加工が施された、「エクスプローラー タイタニアム」の20インチアルミホイール。テスト車には、ハンコックのタイヤ「ヴェンタスS1 ノーブル2 プラス」が組み合わされていた。 拡大
荷室の容量は7人乗車時で595リッター。2列目および3列目シートを折りたたむことで、最大2285リッターにまで拡大できる。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます)
荷室の容量は7人乗車時で595リッター。2列目および3列目シートを折りたたむことで、最大2285リッターにまで拡大できる。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます) 拡大
荷室左側には、3列目シートを収納するための電動スイッチや電源ソケットが設置されている。
荷室左側には、3列目シートを収納するための電動スイッチや電源ソケットが設置されている。 拡大
 
フォード・エクスプローラー タイタニアム(4WD/6AT)【試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

フォード・エクスプローラー タイタニアム

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5050×2000×1820mm
ホイールベース:2860mm
車重:2280kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:370ps(272kW)/5500rpm
最大トルク:48.3kgm(474Nm)/3500rpm
タイヤ:(前)255/50 R20 105H/255/50 R20 105H(ハンコック・ヴェンタスS1 ノーブル2 プラス)
燃費:7.2km/リッター(JC08モード)
価格:635万円/テスト車=641万4260円
オプション装備:メーカーオプションなし ※以下、販売店装着オプション ETC車載器(1万2420円)/フロアマット(5万1840円)

テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1421km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:471.2km
使用燃料:76.4リッター
参考燃費:6.1km/リッター(満タン法)/6.2km/リッター(車載燃費計計測値)

フォード・エクスプローラー タイタニアム
フォード・エクスプローラー タイタニアム 拡大
サテンクロム調のドアハンドル(写真左)と専用カラーのドアミラーカバー(同右)は、「エクスプローラー タイタニアム」ならではのドレスアップアイテム。
サテンクロム調のドアハンドル(写真左)と専用カラーのドアミラーカバー(同右)は、「エクスプローラー タイタニアム」ならではのドレスアップアイテム。 拡大

助手席側Aピラーの付け根(室内側)には、フロントバンパー直前や右側フロントフェンダー周辺の様子を示すモニターが備わる。


	助手席側Aピラーの付け根(室内側)には、フロントバンパー直前や右側フロントフェンダー周辺の様子を示すモニターが備わる。
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センターコンソールの後端には、2列目シート用の空調およびシートヒータースイッチ、USBコネクターなどが設置されている。
センターコンソールの後端には、2列目シート用の空調およびシートヒータースイッチ、USBコネクターなどが設置されている。 拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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