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第448回:もしや、クルマ版『KARA』!? ついに再上陸、コリアンパワー「ヒュンダイi40」

2012.03.15 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第448回:もしや、クルマ版『KARA』!?ついに再上陸、コリアンパワー「ヒュンダイi40」

国内からもいい反応

やって来た……ついにやって来ちゃったって感じですよ。ヒュンダイ再上陸!
ご存じ韓国ナンバーワン自動車ブランドも、2009年に日本市場から(乗用車部門のみ)撤退してから、早3年。その間、欧州ではヒュンダイ&キアがトヨタ&レクサスを販売台数で抜き、2011年も順位でいうならルノー・日産アライアンスに続く5位とはいいつつも、世界販売約15%増の約659万台! ハッキリ言って、日本市場が疫病神だっただけなんじゃ?……と思ってしまうほど伸びてます(笑)。

と思ったら案の定、再上陸のハナシが湧き出てるんですねぇ。目玉となるのは、話題のスタイリッシュワゴン「i40」だ。グローバルセダンの「ソナタ」と同じプラットフォームを使う欧州向けのモデルで、全長4770×全幅1815×全高1470mmの、車重は1470kg。去年ご当地で発表されたばかりだ。

今はまだ並行輸入の段階で、九州の意欲的なインポーター「CRADLE」が入れようとしている。なんでまた……?

「『今のヒュンダイを入れたら売れそうだな』というのに加えて、『今の日本人は、このすごさを知っておくべきだ』と考えたからです」とコメントするのは、同社代表の大鶴純二氏。

「CRADLE」はそもそも欧州車用の後付けバイフューエルキットの販売がメインの会社だ。それが去年の東京モーターショーに「i40」の同仕様を試験的に展示したところ、結構な反響。
「これ? いつ入れるの」「なにこれ、カッコいいね! なんていうクルマ?」ってな問い合わせが多く寄せられ、2012年4月の受注開始を決定したってわけ。

で、今回ワタクシが「仮ナンバーですけど乗ってみませんか?」とのリクエストを頂き、“渡りに船”とばかりに都内をチョイ乗りすることになったわけだけど……乗るなりビックリ!! 正直、顔が青ざめましたわ。

「ヒュンダイi40」
「ヒュンダイi40」 拡大
こちらは、テスト車「i40」のリモコンキー。
こちらは、テスト車「i40」のリモコンキー。 拡大
インテリアの様子。左ハンドル仕様だ。
インテリアの様子。左ハンドル仕様だ。 拡大

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「FFのBMW」?

まずはスタイリングだよね。とにかく生でみるとインパクト大で、独特のマッチョ感とキレのあるエッジが印象的。それは「FFのBMW」って言いたくなるほどだ。あるデザイン・ジャーナリストは「まだ“韓国オリジナル”っていうほどの味は出せてない」と言うけれど、ぶっちゃけ、いまの大抵の国産車よりマシじゃない? ってか、この肉食系フォルムは、今の草食系ニッポンにゃ絶対出せないテイストよね。

その秘密は積極的な外部人材の活用で、最近ヒュンダイは、元BMWデザイナーのクリストファー・チャップマンを引き抜いた。ついでに言うと、グループ会社のキアは元アウディのチーフデザイナー、ペーターシュライアーがボスで、実際そのデザインは、完全に“アジアのアウディ”だ。

それと走り。実は去年、韓国で地元車に乗ってきた同業者の「まだ微妙に日本車に追いついてないね」との言葉に安心していたのだが、全然そんなことはない。

とにかくボディーの剛性感や車内の静かさは、日本車に比べて遜色無し。それどころか、高速走行における硬めでフラットな乗り心地は、まさしくヨーロッパを意識したセッティング。快適さを十分に確保しつつも、道路の継ぎ目を、コトリ、コトリとクリアしてゆく。

さらに見事なのはエンジンだ。今回試したのは、バイフューエル仕様の直噴2リッター直4DOHCの可変バルブタイミング機構付き。アウトプットは177ps、21.7kgmと十分で、ギアボックスもロックアップ機構付きの6段ATと、これまた十分なのだが、肝心なのはフィーリング。

乗った瞬間、「あれ、これって直噴ディーゼルだっけ?」と言いたくなるほどダイレクトかつトルキーで、回転の滑らかさや上質感はそれほどでもないが、とにかく力強い。ヨーロッパでウケるセッティングだ。 

ステアリングのフィールにも驚かされた。第一印象こそ「ちょっとヤリ過ぎじゃない?」と思うほど滑らかで軽いけれど、高速走行でも問題ナシ。“味わい”があるかっていうとビミョーなところだが、ビシっと真っすぐ走る。
で、思ったんだよね。これはちょっとシトロエンのデカいの、あるいは一時期のアウディなんかに似てると。軽いは軽いがレスポンスはシャープで、切った通りに走る。いたずらに路面からの影響を受けたりはしない。

もちろんよくできたBMWやメルセデスみたいなFR的味わいや、ポルシェほどの剛性感はないけれど、それなりのものに仕上がっている。これで十分だ。「アメリカはもちろん、ヨーロッパでも売れるだろうなぁ」と思わされるモノがありました。

流麗なサイドビュー。ドアパネルにはくっきりとキャラクターラインが入れられる。
流麗なサイドビュー。ドアパネルにはくっきりとキャラクターラインが入れられる。 拡大

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「i40」の2リッター直4エンジン。
「i40」の2リッター直4エンジン。 拡大

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うかうかしてると危ない

だからね。メチャクチャすごい!ってわけではないのよ。スタイリングに凝ってはいても、「これぞコリア」って個性や「今まで乗ったことない!」って驚きはない。
冷静に言うと、「徹底的にライバルを研究し尽くした」という感じ。日本車はもちろん、高級ドイツ車も乗り尽くし、自分たちのできる範囲で、猛烈にアジャストしてきた。インテリアのクオリティーだって、十分高い。

いまの時点で、心底「日本が抜かれた」という印象はない。でも、まさに今の日本の芸能界を闊歩(かっぽ)する『KARA』や『少女時代』、あるいは一連の韓流(はんりゅう)ドラマにも似ていて、徹底したトライ&エラーの結果到達できたものだということが、ひしひしと感じられるのだ。
それはまさしく「世界で勝とう!」「のしていこう!!」という意思の表明に他ならない。極端な話、ほかの全てを犠牲にしてでもデザインを極めるとか、開発期間を半減するとか、思い切った手段を取らない限り、日本のメーカーはそのうち確実にヤラれるんじゃないか!?って恐怖がある。

あるメーカーのトップ曰く、「今、韓国の残業時間は、日本の数倍」だとか。能力が同じ人間なら、長時間働いたほうが、より多くの結果が得られるのは間違いない。
語学力も無視できない。日本と違って、韓国の企業のトップは、ほとんど英語で話せる。それも流ちょうに。これは、欧米の人間が能力に差のない「英語をしゃべれる人」と「母国語しかしゃべれない人」を前にしたとき、どちらとビジネスするだろうか?って現実的な問題につながる。
そしてそのことは、今後主役となってくるであろう新興国についても言えるのだ。「ヒュンダイi40」の台頭は、氷山の一角にすぎないのである。

前述のとおり、「CRADLE」では、2リッターガソリン仕様の受注を4月から開始する。お値段は、3年程度の保証付きで350万円前後。とにかく気になったらぜひ一度、試乗してみてほしい。驚くよ!

(文と写真=小沢コージ)

240km/hまで目盛りが切られたスピードメーター。中央の液晶モニターには、韓国語(!)も見られる。
240km/hまで目盛りが切られたスピードメーター。中央の液晶モニターには、韓国語(!)も見られる。 拡大
こちらは、後席の様子。
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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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