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【スペック】全長×全幅×全高=4907×1953×1379mm/ホイールベース=2990mm/車重=1880kg/駆動方式=4WD/ 6.3リッターV12DOHC48バルブ(660ps/8000rpm、69.6kgm/6000rpm)/価格=3200万円(テスト車=3802万円)

フェラーリ・フォー(4WD/7AT)【試乗記】

こんなエンジンほかにない 2012.03.12 試乗記 下野 康史 フェラーリ・フォー(4WD/7AT)
……3802万円


6.3リッターV12を搭載する4人乗り・4WDの跳ね馬「FF(フェラーリ・フォー)」に試乗。“世界最速の4シーター”をうたう同モデルは、街乗りではどうなのか。

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いまの時代のフェラーリ

スタートボタンを押すと、六本木ヒルズの地下駐車場に“ズバンッ”と大音声が響き渡った。触媒を一気に暖めるファストアイドル中も、フェラーリ史上最大の6.3リッター直噴V12は並はずれた存在感を響かせる。

「日本仕様にはヘレシステムが標準装備になります」。広報Kさんのレクチャーを受けてから重いドアを閉める。右パドルを引いて1速を出し、おそるおそる動き出す。高級車がきら星のごとく居並ぶ駐車場も、ランプウェイはそんなに広くない。というか、「第一印象、デッカイ」。ボディーのタテヨコは「パナメーラ」とほぼ同じだが、あちらよりさらにひとまわり大きく感じるクルマである。

表に出てほどなく、信号に止められると、突然、死んだかと思った。寒い日だったのに、早くも暖機が終わって“HELE”が作動したのだ。“ハイ・エモーション/ロー・エミッション”の略だというアイドリングストップ機構である。こういうクルマのオーナーは、油田のオーナーだったりもするわけだから、そんなチマチマしたことを、とも思うが、これも“時代”だ。ビッグV12の再始動は、「デミオ」のi-stopほど速くないが、十分である。パナメーラのように、歯がゆくてついキャンセルボタンに手を延ばしたくなるようなことはない。

革の芳香漂うコクピットで、次第に冷静さを取り戻すと、エポックメイキングな新型フェラーリに乗って出た感慨がこみあげてきた。「4座」と、そしてフェラーリ初の「4WD」を車名に込めた“FF”である。


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「スポーツGTツアラー」をうたう、「FF」のコクピット。
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F1のあの快音

長いノーズに収まる新設計の直噴6.3リッターV12は、660ps。0-100km/hはわずか3.7秒、0-200km/hも11秒フラットでこなし、最高速は335km/hをマークする。FFは「世界最速の4シーター」をうたうフェラーリである。

センターフロアにはローンチコントロールのボタンがある。おまかせでドラッグスタートがきれる最速加速ボタンだ。3つ並ぶボタンのなかで、AUTOモードやバックギアのボタンよりもドライバーの近くに配置されているのがスゴイ。ローンチコントロールはサーキットのみで使用するように指示されているのが通例だが、FFのトリセツでは「最適な発進加速のための機能です」と説明されているのもスゴイ。

デュアルクラッチ7段セミオートマのMTモードで引っ張ると、1速で85km/h出る。2速では早くも132km/hに達する。レブリミットは8250rpmの高みにある。

100km/h時の回転数は、7速トップでわずか1700rpm。自動変速のAUTOモードで床までアクセルを踏み込むと、4速に落ちる。一方、アグレッシブにMTモードでパドリングすれば、100km/hでも2速までシフトダウンが可能。そのとき、タコメーターの針は6200rpmに跳ね上がる。2000rpm以下の低回転からトルク頼みのものぐさ加速をきめこむと、“ベーッ”という不満げな音をたてるV12も、高回転ではまさに水を得た魚である。トップエンドの音質は、F1中継のコクピットラジオでおなじみのあの快音だ。6リッターを超す大排気量ユニットで、こんなイイ音を聴かせるエンジンはほかにない。

V12エンジンは、最高出力660ps/8000rpm、最大トルク69.6kgm/6000rpmのピーク値だけでなく、わずか1000rpmで51.0kgmを生み出す柔軟性もアピールされる。CO2排出量は360g/kmで、従来のV12と比べ、25%低減しているという。
V12エンジンは、最高出力660ps/8000rpm、最大トルク69.6kgm/6000rpmのピーク値だけでなく、わずか1000rpmで51.0kgmを生み出す柔軟性もアピールされる。CO2排出量は360g/kmで、従来のV12と比べ、25%低減しているという。 拡大
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画像をクリックすると、シートアレンジが見られます。
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アナザーワールド

“4RM”と呼ばれる4WDシステムが四駆になるのは、構造上、1速から4速走行時のみ。後輪が空転したときに前輪に駆動力を差し伸べるオンデマンド4WDである。つまり、FFの基本はFRである。

行きつけのワインディングロードを走ってみたが、ぼくの腕とペースでは、ドライ路面でこれまでのフロントエンジン・フェラーリと特に違った操縦感覚を感じることはなかった。印象的だったのは、ステアリングがすばらしくクイックで軽いこと。わけても直進からの微舵(びだ)応答の鋭さは、1.8tの車重も1.9m超の横幅も感じさせない。ただし、日本の箱庭的ワインディングロードだと、ボディーはいささか大きすぎる。やはりスポーツカーというよりもグランドツアラーである。

いかにもフロントエンジンであることを主張するかのように、前下がりで低く構えた3ドアボディーは、ダッシュボードのスイッチで車高を4cm上げられる。反応も早いので、試乗中はたびたびお世話になった。雪道に限らず“使いで”のある機能である。

隔壁で画然と左右席に分かれたリアシートは、特に大柄でなければ大人の実用に耐える。乗り心地もいい。三角形のサイドウィンドウがもたらす居住まいは独特で、前席とはまた違ったアナザーワールド感が味わえる。

価格は3200万円。FFにするか、スキー場のリゾートマンションにするか、というようなお値段だが、しかし、FFはスキー場まで家族で行けるフェラーリになった。この際、リゾマンと両方買っちゃいましょう。

(文=下野康史/写真=高橋信宏)


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リアシートの背もたれは折りたたみが可能で、通常450リッターの荷室を800リッターまで拡大できる。
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【テスト車のオプション装備】
FFスペシャルカラー(GRIGIO FF)=108万8000円/“スクーデリア・フェラーリ”フェンダーエンブレム=15万2000円/カラードブレーキキャリパー(GRIGIOシルバーストーン)=13万3000円/20インチダイヤモンドフィニッシュホイール=22万1000円/スポーツエキゾーストパイプ=6万7000円/ドアミラーのダークペイント仕上げ=6万7000円/セミア二リンレザーインテリア(CUOIO TOSCANO)=75万円/ドアパネルとアームレストのアルカンターラ仕上げ=11万2000円/フル電動シート=54万4000円/ダイヤモンドパターンのシート表皮=43万4000円/自動防眩ルームミラー&ドアミラー=14万7000円/フロントライティングシステム(AFS)=18万6000円/サスペンションリフトシステム=53万円/タイヤ空気圧&温度モニタリングシステム=12万5000円/フロントパーキングセンサー=14万円/デュアルビュー・フロントパーキングカメラ=29万4000円/HiFiプレミアムシステム=54万4000円/リアシートエンターテインメント=48万6000円)
【テスト車のオプション装備】
FFスペシャルカラー(GRIGIO FF)=108万8000円/“スクーデリア・フェラーリ”フェンダーエンブレム=15万2000円/カラードブレーキキャリパー(GRIGIOシルバーストーン)=13万3000円/20インチダイヤモンドフィニッシュホイール=22万1000円/スポーツエキゾーストパイプ=6万7000円/ドアミラーのダークペイント仕上げ=6万7000円/セミア二リンレザーインテリア(CUOIO TOSCANO)=75万円/ドアパネルとアームレストのアルカンターラ仕上げ=11万2000円/フル電動シート=54万4000円/ダイヤモンドパターンのシート表皮=43万4000円/自動防眩ルームミラー&ドアミラー=14万7000円/フロントライティングシステム(AFS)=18万6000円/サスペンションリフトシステム=53万円/タイヤ空気圧&温度モニタリングシステム=12万5000円/フロントパーキングセンサー=14万円/デュアルビュー・フロントパーキングカメラ=29万4000円/HiFiプレミアムシステム=54万4000円/リアシートエンターテインメント=48万6000円) 拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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