ボルボV40クロスカントリー T5 AWD (4WD/6AT)
象徴的なボルボ 2013.12.27 「ボルボV40」を知る。見る。語る。 スタイル自慢の「ボルボV40」シリーズの中でも、とりわけ印象的な「V40クロスカントリー」。では、走りの質はどうなのか? 雪景色の北海道で試した。ワイルドなイケメン
編集部から「冬の北海道でボルボに試乗しませんか?」とのオファー。いつもならふたつ返事で引き受けるところだが、スノードライブにいまひとつ自信のない私は少し躊躇(ちゅうちょ)した。でも、「クルマは『V40クロスカントリー』です」と聞いて、すぐに不安は解消。北海道でのテストドライブが待ち遠しくなった。
「クロスカントリー」という名前からして、いかにも悪路や雪道に強そうなクルマであるが、同社の「XC60」や「XC90」のようなSUVとは異なり、「V40」をSUVスタイルに仕立て上げた“クロスオーバー”というのがこのクルマの位置づけ。そう書くと、V40クロスカントリーがなんだか頼りなく思えるかもしれないが、実際はその反対で、内容を知れば知るほどこのクルマの魅力が見えてくる。
まずはエクステリア。スタイリッシュなデザインで人気を集めることになったV40だが、このV40クロスカントリーにはワイルドさが加わっている。例えば、フロントバンパーは、クロスカントリー専用にハニカムメッシュグリルが与えられただけでなく、バンパー形状そのものが見直されていて、力強い印象を与えているし、「CROSS COUNTRY」の文字が刻まれたリアバンパーや専用のルーフレール、標準モデルより30mm高められた全高が、このクルマの存在感を高めている。なかなかの男前である。
それ以上に注目したいのは、V40クロスカントリーの中身だ。
余裕と魅惑の5気筒ターボ
クロスオーバーといっても、駆動方式はベースモデルと同じFFまたはFRのまま、ということが多いなかで、このV40クロスカントリーはきちんと4WD化されているのがうれしいところ。横置きエンジンのFFを、最新世代のハルデックスカップリングによってフルタイム4WDに仕立て上げているのだ。
エンジンは、標準のV40 T4が1.6リッター直列4気筒直噴ターボを搭載するのに対し、このV40クロスカントリーには最高出力213ps、最大トルク30.6kgmの2リッター直列5気筒ターボを採用する。トルコン式の6段オートマチックトランスミッションが組み合わされるのも、V40 T4とは異なるところだ。
スペックを眺めているだけでも楽しいが、実際に運転しても期待どおりのパフォーマンスを見せてくれた。1.6リッターでも十分な低速トルクを発生するだけに、この2リッターは余裕たっぷり。アクセルペダルを軽く踏むだけで、車両重量1580kgのV40クロスカントリーを軽々と発進させるし、一般道を流すような場面でも、アクセルペダルにのせた右足にじわりと力をこめるだけで、必要な加速が得られるのだ。雪道では大トルクが仇(あだ)になることがあるが、4WDのV40クロスカントリーでは、エンジンのトルクが適切に4輪に配分されるため、よほど乱暴にアクセルペダルを踏み込まないかぎり、5気筒ターボのトルクを持て余すことはない。
一方、ドライ路面の高速道路では、5気筒ならではの爽快さを楽しむことができる。追い越しの場面で勢いよく加速しようとすると、5気筒独特のサウンドと緻密なフィーリングがなんとも魅惑的。それを味わえるだけでも、このクルマを手に入れる価値はある!?
独自の個性は長所が勝る
ちなみに、今回の試乗では659kmを走り、うち燃費をチェックした488kmで、ドライブコンピューター、満タン法ともに10.1km/リッターの数値を記録した。平均速度38km/h、大部分が雪道でスタッドレスタイヤ装着という走行条件を思うと、期待以上の好燃費である。
ところで、“クロスオーバー化”は、V40クロスカントリーの走りにどう影響したのだろうか? V40に対して全高が少し高くなったV40クロスカントリーは、厳密にいうならV40に比べて横方向の揺れが気になることがあるし、それを抑えるためか、乗り心地も多少硬めにしつけられている。しかし、それはあくまで比較級の話であり、高速走行時の安定感は十分で、乗り心地も十分フラット。おかげで快適なドライブが楽しめた。
高いといっても全高は1470mmに過ぎず、宿泊先のパーキングで入庫を拒まれることがないのも、このクルマのうれしいところ。これなら、タワーパーキングなどで全高1550mmの制限を突きつけられる都会でも、困ることはない。ということで、クロスオーバー化で失ったものは見あたらないというのが結論だ。
一方、キャビンは、V40の上級グレードに位置づけられるV40クロスカントリーだけに上質で心地よく、長く付き合ううえでも見どころが多い。さらに、2013年12月からは従来オプション扱いだった「セーフティ・パッケージ」が標準化されて、ますます魅力的になったV40クロスカントリー。輸入Cセグメントにライバルは多いが、その内容と369万円という価格を考えると、ずぬけた存在ということができる。2013年はボルボ復権の年になったが、それを象徴するのが、このV40クロスカントリーではないだろうか。
(文=生方 聡/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
ボルボV40クロスカントリー T5 AWD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4370×1800×1470mm
ホイールベース:2645mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直5 DOHC 20バルブターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:213ps(157kW)/6000rpm
最大トルク:30.6kgm(300Nm)/2700-5000rpm
タイヤ:(前)225/50R17 98H/(後)225/50R17 98H(ミシュランX-ICE XI3)
燃費:12.4km/リッター(JC08モード)
価格:369万円/テスト車=419万円
オプション装備:車体色<クリスタルホワイトパール>(10万円)/ナビゲーション・パッケージ(20万円)/レザー・パッケージ(20万円)
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:33km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:659km
使用燃料:48.3リッター(燃費計測区間488.2kmに対し)
参考燃費:10.1km/リッター(満タン法)/10.1km/リッター(車載燃費計計測値)
→ボルボV40クロスカントリー T5 AWD オフィシャルサイト
拡大 |

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
第5回:「V40」の開発責任者に聞く 2014.1.6 “プレミアム・スポーツコンパクト”とうたわれる、ボルボの新型「V40」は、どのような思想で開発されたのか? シリーズ全体の主査を務める、ホーカン・エイブラハムソン氏に尋ねた。
-
第4回:実走・実感「V40クロスカントリー」 2014.1.6 日本市場でも人気の、新型「ボルボV40」。中でも異彩を放つ「V40クロスカントリー」には、このモデルならではの見どころがあるという。一般道から雪道まで試したモータージャーナリスト 生方 聡のリポート。
-
第1回:私が「V40」を推す理由 2013.12.24 2013年2月の国内販売開始から、その好調が伝えられる、ボルボの新型「V40」。では、人気の秘密はどこにあるのだろうか? 評論の場において同車を高く評価する、モータージャーナリストの桂 伸一さんに話を聞いた。
-
NEW
レクサスRZ350e“バージョンL”(FWD)【試乗記】
2026.2.16試乗記「レクサスRZ」のエントリーグレードがマイナーチェンジで「RZ300e」から「RZ350e」へと進化。パワーも一充電走行距離もググっとアップし、電気自動車としてのユーザビリティーが大幅に強化されている。300km余りのドライブで仕上がりをチェックした。 -
NEW
イタリアの跳ね馬はiPhoneになる!? フェラーリはなぜ初BEVのデザインを“社外の組織”に任せたか?
2026.2.16デイリーコラムフェラーリが初の電動モデル「ルーチェ」の内装を公開した。手がけたのは、これまで同社と縁のなかったクリエイティブカンパニー。この意外な選択の真意とは? 主要メンバーにコンタクトした西川 淳がリポートする。 -
NEW
第329回:没落貴族再建計画
2026.2.16カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。JAIA(日本自動車輸入組合)が主催する報道関係者向け試乗会に参加し、最新の「マセラティ・グレカーレ」に試乗した。大貴族号こと18年落ち「クアトロポルテ」のオーナーとして、気になるマセラティの今を報告する。 -
トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”(後編)
2026.2.15思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”」に試乗。ハイブリッドシステムを1.8リッターから2リッターに積み替え、シャシーも専用に鍛え上げたスポーティーモデルだ。後編ではハンドリングなどの印象を聞く。 -
トヨタbZ4X Z(FWD)【試乗記】
2026.2.14試乗記トヨタの電気自動車「bZ4X」が大きく進化した。デザインのブラッシュアップと装備の拡充に加えて、電池とモーターの刷新によって航続可能距離が大幅に伸長。それでいながら価格は下がっているのだから見逃せない。上位グレード「Z」のFWDモデルを試す。 -
核はやはり「技術による先進」 アウディのCEOがF1世界選手権に挑戦する意義を語る
2026.2.13デイリーコラムいよいよF1世界選手権に参戦するアウディ。そのローンチイベントで、アウディCEO兼アウディモータースポーツ会長のゲルノート・デルナー氏と、F1プロジェクトを統括するマッティア・ビノット氏を直撃。今、世界最高峰のレースに挑む理由と、内に秘めた野望を聞いた。






























