ランドローバー・レンジローバー イヴォーク クーペ ダイナミック(4WD/9AT)
いいとこついてるね 2014.12.08 試乗記 デビュー以来着々と改良を重ねる、個性派SUV「レンジローバー イヴォーク」。最新“2015年モデル”の到達点を、3ドアの「クーペ ダイナミック」で確かめた。見た目で比べりゃクーペが主役
2015年モデルのレンジローバー イヴォークに乗った。試乗したのは3ドアのクーペ ダイナミックである。
イヴォークが日本に上陸したのは2012年の春。これまでの品ぞろえは5ドアと3ドアが半々だったが、2015年モデルから5ドアのラインナップが増え、3ドアはこのクーペ ダイナミックのみになった。9割近くの人が5ドアを選ぶ日本のニーズに合わせたものである。
そんなわけで、路上でイヴォークを目撃しても、クーペである確率は極めて低いが、あらためて見ると、やっぱりこのボディーはカッコイイ。試乗車は車体もホイールもブラック。これがあのランドローバー製品かと、目をこすりたくなるようなすごみを放つ。
ボディー全長と全幅は同じだが、全高はクーペが3cm低い。ロールーフによって、チョップトップ的なグリーンハウスと、前のめりのウエストラインがさらに強調される。
5ドアではダイナミックと新グレードのオートバイオグラフィーに標準装備される20インチホイールも、クーペフォルムとの組み合わせで最も映える。イヴォークデザインの神髄はクーペである。1700kg台のオーダーとはいえ、車重が5ドアより30kg軽いことも見逃せない。
すべてのシートに満足感
イヴォークのステアリングを握ったのは、西湖で開かれた「レガシィ」試乗会の行き帰りだった。リアシートには編集部のKさんが乗っている。3ドアボディーの剛性感は極めて高く、乗り心地もスポーティーに硬い。後席はさぞやと思ってKさんに聞くと、「意外にワルくないですよ」とのこと。
ヘッドルームの余裕は5ドアに及ばないが、膝まわりのスペースは同様に広い。乗り降りがタイヘンなことを除くと、リアシートにもちゃんと大人が乗れるクーペである。試乗車にはオプションのパノラミックサンルーフが付いていた。後席天井までたっぷり延びたグラスルーフだ。イヴォークの後席アメニティーは、これがあるかないかで月とスッポンである。
一方、前席を包むタイト感はイヴォークの特徴であり、魅力だ。全幅1.9mの四駆SUVで、これほどクルマとの一体感を抱かせるコックピットがほかにあるだろうか。
クーペはセンターピラーが後退しているので、前席に座ると右も左も後ろまで全面ガラス張りという感じだ。こうした意匠がもたらすデザイナーズハウス的な居住まいがクーペの真骨頂である。ハウジングがデッカすぎてそれ自体が死角を生んでいたドアミラーは、いつのまにか適正な大きさにダウンサイジングされている。
違いのわかる9段ギア
ノーズに横置きされるエンジンは、240psの直噴2リッター4気筒ターボ。2008年まで資本提携関係にあったフォードの“2リッターエコブースト”である。レンジローバーというファミリーネームに恥じない高級感を持つ一方、踏めばいつでもグワッとせりだすような力強さは、ダウンサイジングコンセプトの直噴過給ユニットにしばしば共通するキャラクターである。イヴォークというクルマによく合っているパワーユニットだ。
そのエンジンに組み合わされる変速機は、ZF製の9段AT。1年ほど前に行われた6段ATからのバージョンアップが、デビュー以来、イヴォークの最も大きな機構的変更である。
9段になって、変速はますますシームレスに、密(ひそ)やかに行われるようになった。100km/h時のエンジン回転数は9速トップで1600rpm。6段時代よりさらに200rpm下がり、より静かで経済的なクルージングに努める。100km/hキープでギアをひとつずつ落としてゆくと、5速で初めて3000rpmを超す。
ハイギアリング化の成果は燃費にはっきりと表れ、今回、約350kmを走って9.0km/リッターを記録する。国内デビュー直後の2012年春に試乗したイヴォーク クーペは7.5km/リッターだった。
類いまれなSUV
イヴォークの“走り”はランドローバー随一の体育会系である。とくに20インチホイールのクーペ ダイナミックは、路面をわしづかみにするようなスポーティーなスタビリティーが特徴だ。ハードコーナリング時でもサスペンションのたわみ感は少なく、ロールしないで曲がる感じ。クイックなステアリングも、そんなコーナリングキャラクターにフィットしている。
その一方、押さえるべきところは押さえてあるのがランドローバーで、ナンパに見えるこのクルマも水深50cmまでの渡河ができる。50cmといえば、ドアのサイドシルよりずっと上である。そこまで水が来ても、車内は浸水しない。前後のバンパーにあるセンサーで水深をモニターし、車内からは見えないクルマと水との関係をグラフィカルに見せる機能もある。
ゲリラ豪雨や巨大台風で、町なかでも哀れ浸水立ち往生するクルマが増えている。マイカーにも生活防水以上の耐水性が必要だと感じている人には、頼もしいシティー四駆かもしれない。
最新のイヴォーク クーペと1日付き合って、ほかに類車のない、ユニークなクルマだとあらためて思った。「レンジローバー」が「ポルシェ911」なら、イヴォークは「ボクスター」だろうか。レンジローバーのボクスター。いずれにしても、売れているのは、すごくいいところをついたからである。
チョイ乗りとはいえ、軽自動車からスーパーカーまで、およそありとあらゆる新型車に触れているwebCG編集部の独身貴族、Sさんが今一番欲しいクルマはイヴォーク クーペだそうだ。初耳だったので驚いたが、納得した。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=峰 昌宏)
テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー イヴォーク クーペ ダイナミック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4355×1900×1605mm
ホイールベース:2660mm
車重:1780kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:240ps(177kW)/5500rpm
最大トルク:34.7kgm(340Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)245/45R20 99V/(後)245/45R20 99V(ピレリ・スコーピオン ベルデ オールシーズン)
燃費:10.6km/リッター(JC08モード)
価格:626万円/テスト車=826万4000円
オプション装備:インテリアトリム・フィニッシャー(グロスブラック・ストラータ)(5万2000円)/アダプティブダイナミクス(16万5000円)/ブラックデザインパック(32万2000円)/ACC(11万8000円)/PRESTIGE/DYNAMICテクノロジーパック(42万1000円)/DYNAMIC PLUSパック(45万6000円)/ウェイド・センシング+ブラインド・スポットモニターおよびリバース・トラフィック・ディテクション(14万5000円)/アドバンスド・パークアシスト(17万2000円)/オートハイビーム・アシスト(2万9000円)/コールドクライメート・パック3(12万4000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2624km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:352.0km
使用燃料:39.1リッター
参考燃費:9.0km/リッター(満タン法)/9.9km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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