トヨタ・アルファード ガソリン車 2.5リッター G 7人乗り(FF/CVT)
現代ニッポンの高級車 2015.04.13 試乗記 2015年1月の登場以来、好調を維持しているトヨタの新型「アルファード」。充実した装備が自慢の「G」の試乗を通し、「大空間高級サルーン」と呼ばれる同モデルならではの世界に触れた。その人気はアジアでも?
「現在、以下の車種につきましては、ご注文をいただいてから工場出荷予定までに、3カ月を超える期間を要しております。通常より納期が遅れておりますことを、心からおわび申し上げます」
トヨタがこんな声明を出したのは2015年3月31日のこと。以下の車種とは、その2カ月ほど前の1月26日に発売した新型アルファードと「ヴェルファイア」である。月間販売目標は前者が3000台、後者が4000台。これほどのボリュームのクルマ、しかも300万円以上から始まる高級車の納車が、同年7月以降になるという。「心からおわび申し上げ」なければならない事態なのだから、現場はうれしい悲鳴であるに違いない。「異次元の金融緩和」によって高級品が飛ぶように売れているという説もある。筆者のまわりに株高の恩恵に浴した人はいないのでわからんのですが、世の中はそういうことになっているらしい。
そういえば、アルファードが新型に切り替わった直後、こんなうわさを聞いた。いま、アルファードを中古車としてタイだか香港だかに輸出すると100万円のもうけが出るというのだ。もしかしたら、業者の手によってバンバカ輸出されているのかもしれない……。
ともかくアジアで大ヒットしているのである、アルファード/ヴェルファイアは。心して乗ってみようではありませんか。
ヤンキー層に訴えかける
3代目アルファードは、2.5リッター直4+電気モーターのハイブリッドを頂点に、3.5リッターV6、2.5リッター直4の計3種類のパワートレインで構成される。今回試乗したのは、直4エンジンとCVTの組み合わせの中でも特にゴージャスな装備を備える「G」グレードである。車両価格は399万5018円。ナビとJBLのサウンドシステムのセット(56万1600円)、後席のエンターテインメントシステム(18万3600円)のほか、メタリックのボディー色、蓄冷エバポレーター、スマートエントリーなどのオプションを含む総額は489万1418円に達する。
では、3代目アルファードを見てみましょう。「お客さまの期待を超える、『強さ』『豪華さ』『エモーショナルさ』を追究した『堂々かつ重厚な威勢のよさ』で、独自のインパクトを表現したエクステリア」とプレスリリースにある。まさに開発陣の狙い通りと言ってよいのではないでしょうか。メッキ加飾の大型グリルに、豪華絢爛(けんらん)、安土桃山時代に思いをはせる多くの日本人がいらっしゃるに違いない。まるで甲冑(かっちゅう)である。あるいは、竜のウロコと呼ぶべきか。竜とはすなわち、中華皇帝の象徴である。
サイドビューはピックアップトラックをほうふつさせるウィンドウグラフィックを特徴とする。「抜けのよさを際立たせたキャビンと、重厚で抑揚のあるアンダーボディーにより、『威勢のよさ』と地をはうような『地べたスタンス』を表現しました」とプレス資料にある。
この資料を書いた人が、いわゆるヤンキー層を意識していることは明白であろう。
昭和歌謡のムードが漂う
インテリアは、私、乗り込むなり、驚愕(きょうがく)しました。高級カラオケスナックというものがあるとしたら、こういうものであるに違いない。シート表皮は緑がかかった明るい色調で、「フラクセン」と呼ばれる。ファブリック+合成皮革で、エンボス加工が施してある。「ベッチン」と呼びたくなる風合いに、モダン・ベントレーの得意のダイヤモンドステッチを思わせる模様が、なんとも高級スナックである。では、ここで一曲、というムードが漂う。1番東海林太郎「名月赤城山」。そう感じるのはひとり、私のみであろうか……。
7人乗りの2列目は「リラックスキャプテンシート」と呼ばれる。座ってみる。床屋のイスなんて目じゃないっす。新幹線のグリーン車、飛行機のファーストクラスもかくやのデラックスぶりだ。ま、実際にはグリーン車やファーストクラスほどにはよくありませんが、それはしようがないっす。
運転席のセンターコンソールにおさまる機器は、最新のカラオケシステムに似ている。KARAOKEは日本が世界に発信する文化である。アルファードがウケているのは「クールジャパン」を体現しているからにほかならない。
制限速度100km/hの国のクルマ
運転してみると、高速道路に上がらない限りは巨大空間を持つ「クラウン」である。静かで、フワフワのソフトな乗り心地で、誠に快適である。4気筒エンジンとCVTの組み合わせはトルキーで、車重2トン近い巨躯(きょく)を粛々と走らせる。それぢゃ、そろそろ一曲というムードが漂う。2番、「加山雄三メドレー」。 ♪ぼかあ、幸せだなぁ。
高速道路に上がって全開走行、というようなドイツ系のかたが行う所業は試すも愚かである。制限速度100km/hのジャパンは平和国家である。2.5リッター直4は回すと安っぽい音がする。風切り音が大きいのは、いかにも空気抵抗の大きそうな凸凹型甲冑模様のグリルがついているのだから当然である。実際にグリルは関係ないでしょうけど、それが象徴している、という意味に解していただければ幸いである。ミニバンという体形上、腰高なのもまた致し方がない。試乗日は横風びゅーびゅーで、制限速度以上はやめておいた方がよろしいですよ、とクルマが警告を発する。自戒としてももう一度書いておきましょう。100km/h以上での走行はいけないことです。狭いニッポン、そんなに急いでどこへ行く。
戦後70年。泰平の逸楽をむさぼってきた筆者は、平成の御代(みよ)もこの先も平和であってほしい、と願う者である。積極的平和主義、くそったれ。ということで、そろそろ一曲。サザンオールスターズの「ピースとハイライト」。♪愛することを躊躇(ためら)わないで。
(文=今尾直樹/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
トヨタ・アルファード ガソリン車 2.5リッター G 7人乗り
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4915×1850×1880mm
ホイールベース:3000mm
車重:2020kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:182ps(134kW)/6000rpm
最大トルク:24.0kgm(235Nm)/4100rpm
タイヤ:(前)225/60R17 99H/(後)225/60R17 99H(ヨコハマ・ブルーアースE51)
燃費:12.4km/リッター(JC08モード)
価格:399万5018円/テスト車=489万1418円
オプション装備:ボディーカラー<ラグジュアリーホワイトパールクリスタルシャインガラスフレーク>(3万2400円)/アイドリングストップ機構+蓄冷エバポレーター<フロント>(5万6160円)/スマートエントリー+プッシュスタートシステム+スマートキー2個+ウェルカムパワースライドドア&予約ロック機能+パワーバックドア<挟み込み防止機能付き>(5万4000円)/アクセサリーコンセント(8640円)/T-Connect SDナビゲーションシステム+JBLプレミアムサウンドシステム+ITSスポット対応DSRCユニット+ESPO対応+インテリジェントパーキングアシスト2<巻き込み警報機能+バックガイドモニター付き>+インテリジェントクリアランスソナー(56万1600円)/12.1型リアシートエンターテインメントシステム<VTR入力端子、HDMI入力端子付き>(18万3600円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:3496km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(5)/山岳路(2)
テスト距離:354.9km
使用燃料:35.2リッター
参考燃費:10.1km/リッター(満タン法)/10.8km/リッター(車載燃費計計測値)
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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