フォード・エクスプローラーXLTエコブースト(FF/6AT)
道具として研ぎ澄まされている 2015.11.04 試乗記 大幅改良により、新たに2.3リッターターボエンジンが搭載された「フォード・エクスプローラーXLTエコブースト」。0.3リッターの排気量アップがもたらした走りの変化を確かめるとともに、あらためてエクスプローラーというクルマが持つ魅力に触れた。コワモテは時代の潮流
なんだかんだ言ってSUVには強い顔が求められるようだ。4年前、ラダーフレームを捨てパワートレインを横置きするという大改革に合わせ、ボディーと一体化したフロントマスクを得たフォード・エクスプローラーがビッグマイナーチェンジを受け、存在感のあるグリルとヘッドランプを取り戻した。
それは5カ月ほど前に実施された、「三菱アウトランダー」のマイナーチェンジに似ている。あちらも当初はスマートなボディーフォルムに合う近未来的な顔が与えられていたものの、欧州市場での存在感を高めるべく、最近アグレッシブな表情に一新された。
こういう手直しの場合、フロントとそれ以外の整合性が気になるところだが、エクスプローラーの場合、現行型でモダンになったとはいえパッケージングは箱に近いし、新たに導入されたフロントマスクは先代のそれに似ているから、スッと入り込める。
もうひとつのトピックはエンジンだ。2012年に上陸して話題を振りまいた2リッター直列4気筒ターボのエコブーストが2.3リッターに拡大し、3.5リッターV型6気筒にもエコブーストが加わる。ただし後者は2016年導入とのことで、今回乗ったのは2.3リッターのXLTエコブーストだった。
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プラス0.3リッターの余裕
ボア87.5mm、ストローク94mmの2260㏄という排気量は、昨年発表された現行「マスタング」と共通。ただしチューニングは違い、最高出力261ps、最大トルク42.8kgmとなる。2リッター時代と比べると、前者は18psアップにとどまるが、後者は5.5kgmもの向上になっている。
2.3リッターという排気量を中途半端だと感じる人もいるだろう。しかしアメリカの単位であるキュービックインチでは140CIDときりのいい数字であり、昔はマスタングのほかコンパクトカーの「ピント」や小型ピックアップの「レンジャー」など、いくつかのフォード車に使われてきた“由緒ある数字”でもある。
動力性能については、以前乗った2リッターのエコブーストでも十分だと感じていたし、車両重量は20kg増に抑えられているので、2.3リッターとなった新型は余裕さえ感じる。フリーウェイ合流時の加速性能が重視される北米市場の声に応えたキャパシティーアップなのかもしれない。
ATは6段のままだが、100km/h巡航は1700~1800rpmぐらいでこなすし、これ以上のギア数が欲しいという気にはならない。今回の改良ではドアシールの遮音性を上げたそうで、その成果はロードノイズがほとんど室内に届かないことが立証していた。エンジン音も抑えられていて、4気筒かどうか即座に判別できないほど、いい意味でエンジンの存在が分からない。
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欧と米の“いいとこ取り”
乗り心地やハンドリングは今までと大きく変わらない。高速道路を流すようなシーンでは、アメリカ車らしい盤石の直進安定性とおうような乗り心地のおかげで、どこまでも走っていけそうな気持ちになる。それでいて山道に入っても、ロールは抑えられ、腰高感はなく、安心してペースを上げていける。4気筒のエクスプローラーは前輪駆動に限られるけれど、それがネガとなるシーンには舗装路上では遭遇しなかった。
欧州育ちの「フォーカス」を、そのまま大きくしてSUVに仕立てたような走り味だ。SUV作りの経験の長さのおかげもあるのだろうが、ワールドワイドで新車開発を進める「ワン・フォード」戦略のたまものともいえるだろう。とにかく快適性能と運動性能が高次元で両立していた。そして個人的にはもうひとつ、道具としてのエクスプローラーにも感心した。
いかにもアメリカンなふっかりした掛け心地の前席、身長170cmの僕なら楽に足が組める2列目、同じ体格の人間が苦もなく座れる3列目というシートは、アレンジのしやすさも特筆に値する。2列目はひとつのレバーを引くだけで背もたれの前倒しと全体の跳ね上げが完了し、3列目の折り畳みに使うストラップは赤、黒、ベージュと色分けされるという気の配りようだ。
「T型」に始まるフォードの思想が息づいている
ドアはサイドシルの部分まで開くので、衣服の裾が汚れない。運転席に着くと、左右のドアミラーの大きさが違うことに気づく。右側の方が高さがあるので、助手席側の後輪付近もしっかり確認できる。エアコンスイッチはブラインドタッチが可能だし、センターコンソールボックスは深い。
メーターは速度計の左右の表示を、ステアリングスイッチで多彩な内容に切り替えられる。これも使いやすい。多くの場合、タコメーターの表示は燃料計と同じぐらい小さいのだが、今回の改良で装備されたシフトパドルを指ではじくと、瞬時に大きめの円形に切り替わる。
「エコ」や「スポーツ」といったドライブモードの切り替えはないし、上級グレードには付く電動のリアゲートや3列目シート格納はXLTエコブーストには装備されないけれど、道具としての研ぎ澄まされた設計思想を前にすると、これでいいという気持ちになる。
エクスプローラーXLTエコブーストの唯一の欠点は、左ハンドルしか選べないことだろう。しかしそれを除けば、500万円以下という価格は同じ3列シートの「トヨタ・アルファード/ヴェルファイア」のハイブリッド車と同レベルで、クリーンディーゼルエンジンを積んだ「メルセデス・ベンツVクラス」より安い。気になる燃費も、今回の試乗ではJC08モードを上回る数字をマークした。
クルマに何を求めるかによって選択は異なるだろうが、「T型」によって自動車の民主化という革命を成し遂げたフォードならではの、生活に役立つ移動の道具を供給するという思想が、新型エクスプローラーにも連綿と受け継がれていたことは付け加えておきたい。
(文=森口将之/写真=峰 昌宏)
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テスト車のデータ
フォード・エクスプローラーXLTエコブースト
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5050×2000×1820mm
ホイールベース:2860mm
車重:2040kg
駆動方式:FF
エンジン:2.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:261ps(192kW)/5500rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/3000rpm
タイヤ:(前)245/60R18 104H/245/60R18 104H(ミシュラン・ラティチュード ツアーHP)
燃費:8.6km/リッター(JC08モード)
価格:489万円/テスト車=495万4800円
オプション装備:メーカーオプションなし ※以下、販売店装着オプション ETC車載器(1万2960円※)/フロアマット(5万1840円※)
※取り付け工賃は別。
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:2253km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:296.7km
使用燃料:31.5リッター
参考燃費:9.4km/リッター(満タン法)/9.6km/リッター(車載燃費計計測値)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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