第382回:東京・丸の内をレースカーが疾走!?
「フォーミュラE」公道走行イベントの会場を取材した
2016.11.29
エディターから一言
2016年11月23日、東京駅近くの丸の内仲通りにて、エコロジーとモビリティーの融合を考えるイベント「エコロジー&モビリティフェアin丸の内」が開催された。このイベントのメインコンテンツとして、フォーミュラE参戦マシンによるデモンストレーションランが行われた。
石畳をEVフォーミュラが走る
ブランドショップやカフェなどが立ち並ぶ都心の街並み。平日はビジネスマンが行き交い、普段の休日ならば多くのファミリーやカップルでにぎわいを見せる東京・丸の内だが、この日は少し雰囲気が違う。美しい石畳の通りを閉鎖し、なんとフォーミュラEに参戦するレーシングカーを走らせてしまおうというのだ。
フォーミュラEとは、国際自動車連盟(FIA)が管轄している、世界初のEVフォーミュラマシンによるレースだ。2014年秋に初めて開催され、今シーズンで3期目を迎える。フォーミュラEのレースはサーキットを使用せず、公道を閉鎖した市街地の特設コースで開催されることも大きな特徴の一つ。走行音が小さく、排気ガスの出ないEVだからこそ実現したことだ。また、今シーズンからジャガーがパナソニックをパートナーに参戦するなど、自動車メーカーからの熱い注目を集めているレースといえる。
今回、デモンストレーションランを行ったのは、「ABTシェフラーFE02」。ABT・シェフラー・アウディ・スポーツチームが今シーズンを戦うマシンであり、ドライバーも、今シーズンのフォーミュラEでこのマシンを駆るルーカス・ディ・グラッシ選手。ルーカス選手はファーストシーズンから参戦しており、表彰台の回数は全選手の中で最多を誇る。昨シーズンはドライバーズポイントで総合2位を獲得しているすご腕だ。
日本で開催される日はやってくるのか
混乱を避けるためイベントの積極的な告知はしなかったというものの、13時と16時の2回行われたデモンストレーションランには、次世代フォーミュラマシンの姿を一目見ようと、多くの観客が詰め掛けた。EVなので通常のレーシングカーのような迫力の排気音とは無縁だが、モーターが発する力強い回転音と、それに伴うマシンの加速は、フォーミュラEの魅力を垣間見るに十分な内容だった。また、ルーカス選手も街道の声援に手を振って応えるなど、ファンとの交流を楽しんでいた。
走行を終えて、ルーカス選手は「デモランを通して、フォーミュラEがエキサイティングなレースであることを皆さんに感じていただけたと思う。またクリーンなEVのレースでもあり、東京のような都市で開催するのがふさわしいと思う。近い将来、ここに戻ってこられる日がくることを楽しみにしている」と語った。
日本は、ハイブリッドカーやEVが積極的に投入される、ユーザーのエコカーへの理解が高い国だ。フォーミュラEの運営サイドも日本開催への意欲を見せているが、残念ながら現時点では実現に至っていない。ただ、先にも述べたように、今シーズンからジャガーが参戦し、またアウディも来シーズンからワークス態勢に移行するなど、自動車メーカーの参戦への意欲は確実に高まっている。現在は参戦へのハードルを下げるために、シャシーなどマシンの多くの部分が共用化されているという現実があるが、シーズンごとにレギュレーションが改定され、今後はドライバーの腕や戦略だけでなく、チームごとのマシンの差も表れてくるはずだ。また、EVというエコなイメージからは想像できない激しいレース展開から、モータースポーツファンからの視線も一層熱くなっていくことだろう。ファンの声による後押しがあれば、日本での開催は、遠い夢ではないかもしれない。
(文と写真=大音安弘)

大音 安弘
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