マツダ・ロードスターRF RS(FR/6MT)
オトナのためのロードスター 2017.02.02 試乗記 電動式のリトラクタブルハードトップと、専用デザインのリアセクションを持つ「マツダ・ロードスターRF」のスポーティーグレード「RS」に試乗。ソフトトップモデルとは一味違う、走りの魅力をリポートする。抱きしめたくなるほどカッコイイ
「待っていても、リトラクタブルハードトップ(RHT)は出ませんよ」。現行ロードスター(ND)登場時のYチーフエンジニアはそう言ったが、代わりに出たハードルーフがRFである。
平常時はファストバッククーペ。オープン時も、ファストバックのクオーターパネルが残ったまま。RFとは、リトラクタブル・ファストバックの略だが、正確に言うと、ファストバック部分はリトラクタブル(格納)しない。アルミの天板とリアウィンドウが出入りするときに、垂直に持ち上がり、また戻ってくる。
FRP製のファストバックピースはボディー左右のフィンだけ。つまり、張りぼて。リアウィンドウはミドシップスポーツカーのようにシート背後にほぼ垂直に立っている。昔からミドエンジンフェラーリに見られたのと同じ“つくり”である。
果敢なダウンサイジングを果たしたNDロードスターのボディー全長、3915mmは、4代を重ねるロードスター史上、最も小さい。先代より約10cm短くなった。さすがにそうなると、上屋がぜんぶなくなる先代RHTの収納スペースは捻出できない。電動ハードルーフで、青天井が得られて、トランクルームを犠牲にせず、過度な重量増も招かない。そうした数々の要求に応えてみせたのがRFである。
筆者は、2代目「NB」の時代にひっそりとつくられたロードスタークーペを、スクープ写真にひと目ぼれして衝動買いした過去を持つが、いまのマツダがロードスタークーペを本気でつくると、ここまでやるか! と感慨深い。特にクローズド時のクーペスタイルは、個人の感想ですが、抱きしめたくなるほどカッコイイ。マツダがもっと大きな会社なら、ロードスターとは別のクルマとして出したかもしれない。協業の相手は結局、フィアットになったが、これを最初に見たら、アルファ・ロメオも黙っていなかったのではないか。フロントグリルに盾を付けて、21世紀の「ジュニアZ」。個人の夢想です。
足腰がたくましくなった
試乗したのはRS。スポーツと快適装備を兼ね備えたMTのシリーズ最上級モデルである。
1.5リッターのロードスターに対して、RFには北米仕様(MX-5ミアータ)と同じ直噴2リッター4気筒が搭載される。単に上屋の硬軟の違いにとどまらないのがRFの付加価値だ。
車重は1100kg。ソフトトップRSとの差はプラス60kg。ボディーもエンジンもダイエットしたNDロードスターが、RFで果たしてどう変わったか。
ひとことで言うと、かなりたくましくなった。走りだしてまず気づくのは、乗り心地が少し重々しくなったこと。RSは17インチホイールを履き、ビルシュタインのダンパーを備える。ソフトトップRSと比べると、腰から下がぐっと筋肉質になった印象だ。
エンジンもたくましい。7500rpmまで回る1.5リッターに対して、こちらは6800rpmで頭打ちになる。ライトウェイトスポーツカーとして、これはどうなの? という意見もあろうが、158psのパワーも20.4kgmのトルクも、車重増加を補って余りある。絶対的な動力性能もRFのほうがいいはずだ。
燃費も悪くない。約290kmを走って、14.5km/リッターを記録する。ただし燃料は無鉛プレミアムが指定される。
1.5リッターモデルとの比較で言うと、アイドリングストップから起きたときのブルンという揺れの大きさが、やや気になった。現行ロードスターの6段MTは、軽く正確なシフトフィールが大きな魅力だと思っていたが、このRFは変速時にちょっと引っ掛かる感じがあった。
実寸以上にコンパクトに感じる
ルーフの操作スイッチは、ダッシュパネル中央部にある。人力を要するロック機構はなく、作動はスイッチひとつの全自動。開閉いずれも十数秒で終わる。計器パネルの中に、上屋の作動状況をモニターする動画が出るが、そんなものを見ている間もなく変身できる。モーター音などのメカノイズも低い。
オープン時もリアクオーターパネルは残ったままだが、前を見ていれば視界に入らないから、開放感はフルオープンのソフトトップと変わらない。さらに、屋根を開けて笑顔になるのは、音である。クローズド時、高回転まで引っ張ると“轟然(ごうぜん)”という感じで、あまりデリカシーを感じさせなかったエンジン音が、俄然、快音に変わるのだ。
町なかから、高速道路や山道まで、開けたり閉めたりしながら走ってみたが、ボディーの剛性感に不満はない。2リッター化でノーズが重くなった感じもない。電動パワーステアリングの操舵力は爽やかに軽い。ステアリングもシフトも、運転操作の動線が短く、手元で操縦できる実感がある。そのため、コンパクトなボディーをいっそうコンパクトに感じさせる美点も相変わらずだ。
余裕のある大人のためのクルマ
1.5リッターにダウンサイジングしたNDロードスターのかろやかで爽やかな走りを評価していた立場からすると、RFは最初、やや大味に思えた。だが、2日間乗ってみると、ボディー/シャシーとエンジンのバランスがとれた、また別のロードスターとしてたしかな魅力があると感じた。特にこのRSは、週末にサーキットへ通ってタイムアタックを楽しむような人には最適だと思う。ひとことで言うと、豪快なNDロードスターである。
1.5リッターモデルも、いまや安いクルマではないが、RFはスタート価格でさらに75万円高い。一番安い「S」のMTでも、324万円。RSだと373万6800円。オプションのブレンボ製ブレーキ(フロント)や、BBS製ホイールを備える試乗車は411万円あまりに達する。
だが、重くなったとはいえ1100kg。これだけカッコいい電動可変ルーフの2リッタースポーツカーが、そんなに安く手に入ると思ったら大間違いである。実際、RFに食指を動かすのは、ある程度、経済的に余裕のある年配のクルマ好きだろう。
RFのルーフ開閉がいかにスピーディーとはいえ、ソフトトップにはかなわない。NDのソフトトップは傘を開け閉めするくらい簡単だ。慣れると、前を向いたまま左手だけを前うしろへ伸ばし、ワン、ツー、スリーの三拍子で開け閉めできる。けれども、あれ、五十肩にはけっこうキツイのである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
マツダ・ロードスターRF RS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915×1735×1245mm
ホイールベース:2310mm
車重:1100kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6MT
最高出力:158ps(116kW)/6000rpm
最大トルク:20.4kgm(200Nm)/4600rpm
タイヤ:(前)205/45R17 84W/(後)205/45R17 84W(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:373万6800円/テスト車=411万4800円
オプション装備: ボディーカラー<ソウルレッドプレミアムメタリック>(5万4000円)/ブレーキ<フロント:ブレンボ社製ベンチレーテッドディスク&ブレンボ社製対向4ピストンキャリパー[レッド塗装]/リア:キャリパー[レッド塗装]>+205/45R17 84Wタイヤ&17インチ×7J BBS社製鍛造アルミホイール<ブラックメタリック塗装>(32万4000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:2640km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:283.3km
使用燃料:19.6リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:14.5km/リッター(満タン法)/13.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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